冬の嵐

2010年12月第2週

今週の野菜セット

左から

師走に台風?先週の金曜日、雷を伴う暴風雨が去ったと思ったら、生あたたかい南風。気温は二十度を超え、クリスマスソングの流れる街中を半袖姿の若者が歩いていました。あらまあ、とおばさんたちは振り返りますが、おかしいのは若いお兄ちゃんたちのほうではなく、気象ですよね。

朝の散歩に行きそびれたので、早めに帰宅して犬と山に入りましたが、山道を降りてくると、青空だったのが鉛色の分厚い雲に覆われ、風も強くなってきました。雷も鳴りはじめて、遠くの空では不気味な漏斗状の雲が地上に向かっているのが見えます。竜巻です。

小走りになって帰宅しましたが、帰り着くころには人も犬もぐっしょり濡れて、衣類の中は汗だく。着替えをしながらカレンダーに目をやって、今は何月?十二月でいいんだよねえ、と確認しながら首をひねってしまいました。

こんな滅茶苦茶なお天気でも、日没は確実に日を追うごとに早くなって行きます。まだ明るいと油断していると、すとんと日が落ちて真っ暗になってしまいます。夕食の準備にかかってから、懐中電灯を手に、薬味用の葱を取りに畑へ降りて行くこともしばしば・・・。

暗くなった畑では、思わぬ出会いがあるもので、小さいところでは野ネズミ、野ウサギ。大きいところではイノシシと鉢合わせになることもあって、スリル満点。懐中電灯に照らされたとたん、みんな飛ぶように逃げてしまうのですが、それでもはっとしたり、どきどきしたり・・・。タダでこんなに楽しませてもらっていいんだろうか、と思いながら葱を取ったりしています。

ただ、懐中電灯の光というのは薄ぼんやりしていて、調べてみるとほとんどのものが0,5ワット。強力なものでも1ワット止まりで、しかも照らす範囲がそんなに広くない。もどかしいものがあるのですが、サーチライトみたいなのに照らされたら、動物たちの寿命が縮まってしまうかもしれません。ここは気配だけで満足すべきなのかもしれませんね。

それでも、先日はそんな強力なライトがほしかった。というのは、うちの犬がうり坊を追い回していたからです。うっすらと縞模様を残しているとはいえ、イノシシは犬をひとまわりぐらい大きくした感じ。そんなのが畑の中を駆け回ったものだから、翌朝見に行ったら、ソラマメの芽がかなり倒れていましたけど、林の中に逃げこんだうり坊を追って、その夜、うちの娘はなかなか帰って来ませんでした。

こういうアクシデントがあると、いくらタダでも、もっとよく見せてほしいと思うのが人情。それにしてもあのうり坊は、うちの畑でなにをしていたんでしょう。それともうひとつ、あれぐらいの大きさになると、もう親とは行動を共にしなくなるんでしょうか。イノシシはフアミリー単位で動くといいますから、もしかしたら孤児だったのかもしれません。狩猟シーズンになると、そんなうり坊が増えるといいます。イノシシが増えすぎるのも困るけど、山の中をいたいけなうり坊たちが彷徨っているというのも、気の滅入る話ですよね。

イノシシ用のワナもいたるところにあるようで、安心して山歩きもできにくくなりました。が、ワナが仕掛けられるのは、自動車道路に面した藪の中と相場が決まっていて、そうでなければ捕らえたイノシシを運ぶことができません。となると、気楽に歩きまわれるのは山奥か森林公園内に限られ、この冬もまた新しいルートを開発することになりそうです。

それはそれで面白いのですが、こんな山奥に・・・と思うようなところにも人が入った痕跡があり、いろんなゴミが落ちている。人間ってほんと、イヤな生きものだなあ、と思うのはそんなとき。そういうところに分け入って、密生している植物をはじめ、そこの住人たちからイヤな顔をされないためには、そういうものを拾い上げる必要があるみたいです。

大量のゴミはもちろん、微細なものでも、そうした異物ものがなくなると、とたんにまわりの「気」がよくなって、空気がすっと立ち上がったようになるんです。山の中がきれいになれば、毒キノコが減って食べられるキノコが増える。動物たちも住みやすくなって、イノシシも人里に出て来なくなる・・・かどうかはわかりませんけど、すくなくとも横暴な人間の仲間入りだけはしたくない。山の中で事故に遭わないためにも、ゴミ袋をいくつも抱えて歩きまわっているしだいです。

今週の野菜とレシピ

青山さんの自然薯が入りました。これを掘り出すのは牛蒡よりむすかしいので、量はひかえめです。が、粘りが強いので、出しでのばして増量してください。生卵も加えるとコクのあるとろろになります。

自然薯はヒゲ根をガスコンロで燃やしてから、きれいに泥を落としてください。敢えて皮を剥く必要はありません。すり鉢のまわりのギザギザしたところでおろすのが理想的ですが、おろし金でも力を入れず、円を描くようにおろすとなめらかに仕上がります。

とろろご飯はおいしいのですが、咀嚼がいいかげんになる分、消化がわるく、胃の弱い人には負担になります。お腹にやさしく、お年寄りにも食べやすく、離乳食にもなるのがとろろ蒸し。自然薯を摺りおろし、生卵と塩少々を加えたものを茶碗の半分より少なめに入れ、強火で蒸します。濃いめの出しで作った餡をたっぷりかけて、あれば柚子の皮を一片添えてください。餡は酒と塩少々、醤油で薄めに味をつけ、葛か片栗粉でとろみをつけます。それをスプーンでかき混ぜながら、ふうふういいながらいただきます。身体があたたまるので、風邪気味の方にもおすすめです。

からし菜は先週より量をふやしてもらいました。せっかく漬けるのですから、ある程度量がないとさびしいですからね。熱湯をさっとまわしかけてから、小口切りにして塩漬けしてください。鼻につんと抜ける辛みが売りですが、削り節を添えるとマイルドになります。

ター菜椎茸は相性がいいので、いっしょに炒めものというのはどうでしょう。塩、胡椒、オイスターソースで味をつけ、水溶き片栗粉でとろみをつけます。干し貝柱を加えると本格中華になりますが、貝柱をもどすのに時間がかかるので、うちでは缶詰を利用しています。缶詰は干し貝柱をもどしたものなので、常備しておくと便利ですよ。

大根を薄く輪切りにして炒め、透き通ってきたところに缶詰の貝柱を汁ごと加え、酒と水も少々加えて煮ます。大根がやわらかくなったところで、醤油で味をつけ、器に盛ってから細く切った生姜を添えます。短時間でできる割りには、味がよくしみて、しかも食べやすい。暮れの忙しいときにおすすめの煮物です。

来週は青山さんのニンジンとブロッコリーが入ります。ひさびさに色の濃い野菜が加わって、彩りもよくなりそう・・・。残暑の影響で冬野菜の準備が遅れてしまいましたが、これでみんな揃ったという感じで、ほっとしています。玉葱の不作だけは冬の間中、ついてまわりそうですけどね。