自然と人のせめぎ合い

2010年2月第3週

今週の野菜セット

左から

あいかわらず厳しい寒さが続いています。積雪はそれほどではありませんが、これを書いている十三日現在も白いものが舞い、空気は凍てつくよう・・・。今年は立春を過ぎてからのほうが寒いですね。

山の中に積もった雪は消える間がないので、食糧が枯渇しているのでしょうか。ヒヨドリが里に下りてくるのが例年より早いようで、わが家では畑に撒いたミカンの皮がすぐになくなってしまいます。柑橘類の皮はネギの赤錆病、ソラマメのアブラムシなどを防除してくれるのですが、この調子だと春まで残りそうもありません。

でも、そんなのは被害のうちに入らないみたい。青山さんの畑にも先週はじめ、ヒヨドリが数羽、物色に来ていたそうです。畑にヒヨドリが来るのはめずらしく、いつもは家のまわりに出没するのですが、それを横目に見ながら、ツグミはうまいけど、ヒヨドリの肉はたいしたことないからなあ、と思ったそうです。そんな邪なことを考えたのがいけなかったのか、週の後半になるとそれが百羽以上にもなったんですね。

数羽で訪れていたのは偵察隊。青山さんが畑にいるときは林に隠れていて、ちょっとでも離れると大挙して押し寄せ、ほんの数日でほうれん草が姿を消してしまったといいます。のみならず、今度は三月に出荷を予定していたキャベツを集中攻撃。ブロッコリーもこの調子だと消滅しかねない勢いだとか・・・。ただでさえ野菜が不足しがちな春先に、キャベツやブロッコリーといった主力商品が消えてしまのですから、これは青山さんひとりの悲劇では済まされません。なんとかならないのか、といったら、なんともなりません。虫なら一匹ずつ取り除くこともできるけど、あいつらには翼という武器がある。もう笑うしかありません、と泣き顔でした。

急遽、野良猫軍団を組織するわけにも行きませんしねえ。この調子だと、難を逃れられるのはネギやらっきょう、ニンニクといった薬味類だけになってしまいそう・・・。

ヒヨドリはデザートがほしくなると、ビニールハウスに穴を開け、イチゴ狩りまでやってのけます。数年前、好子さんのハウスが破られ、レタスがやられたこともありますが、露地の被害はそれとはくらべものになりません。そういえば小松菜が全滅の憂き目を見たこともありました。が、今のところ好子さんの畑は大丈夫。目をつけられていないようです。

それでも、青山さんや好子さんのところはイノシシが出ない分、ラッキーなのかもしれません。益子では山間ばかりか、町中の家庭菜園まで被害が広がっているみたいですからね。野生動物による食害は、全国的に増える傾向にありますから、ここらで抜本的な対策を取っておかないと、事態は深刻なことになりかねません。

野生動物といってもさまざまで、クマやイノシシ、シカといった大型から、サルや野鳥といった小型まで、それに加えて野生化したペットとというのも最近増えているみたいですが、これらすべての食害が人災といって過言ではありません。開発で住処を追われ、人工的な植林で食料を奪われた連中が人里に出てくるパターンがほとんどなのですから・・・。

益子で近年、イノシシが増えているのも、いたるところにゴルフ場ができたのと、十数年前に隣町の茂木にツイン・リンクというオートレース場ができたりしたのが原因で、広大な山林にいたイノシシが行き場をなくしてしまったから。ここまで流れてきたのはいいけれど、山の中だけでは十分な食糧が確保できず、農地に出没するようになったというのが実情です。それに対して行政がやることといったら、十一月から二月までの狩猟解禁をイノシシにかぎって年中無休にしたことぐらい。

増えすぎた野生動物をなんとかする前に、増えすぎて赤字経営に陥っているゴルフ場や、益子の山林の大部分を占めているスギやヒノキの針葉樹林をなんとかしたほうがいいんじゃないか。しかもスギ林のほとんどは手入れもされず放置され、豊かな山林を不毛の地にしているのです。これらを照葉樹林に替えるのはそれほどむずかしいことではありません。雑木林をスギ林にするとき、国から出る補助金を逆に利用すればすむことなんですから。

そうしたら山の保水力も増して風水害の被害も減少するし、野生動物の食糧も確保できるようになる。一挙両得だと思うのですが、そういう対策も取らないで、ハンターに金を出したり、農家にはイノシシ防除の補助金など出していたのでは、ただでさえ財源の少ない地方自治体がますます困窮することになるんじゃないか。農家や八百屋がそんなことまで心配しなくちゃならないぐらい、事態は深刻になりつつあります。

野生動物にしてみれば、人間に奪われた食糧を取り返しているだけなんでしょうけど・・・。山の中が豊かになれば、農家も病害虫の心配だけしていればいいんですけどね。

今週の野菜とレシピ

上記のようなわけで、青山さんのほうれん草が消滅しました。ようやく雪が降って地面が潤い、これから背丈を伸ばそうとしていた矢先のことです。申しわけありませんが、ほうれん草は諦めて、被害が拡大しないことを祈るのみです。

やわらかい大根はサラダに向いていますが、今週も寒そうなので京菜といっしょにしゃぶしゃぶにしてみませんか。大根はピーラーでリボン状に薄く削いで使います。これを鍋の中でひらひらさせて、ポン酢か胡麻だれでいただきます。新鮮な食感が受けますよ。

じゃが芋メイクイーンに変わりました。男爵よりも皮が剥きやすく、煮くずれもしません。しかも甘みがありますから、煮物に最適。肉じゃがはメイクイーンでなくっちゃ、という人もいますが、この肉じゃが、牛肉派と豚肉派に分かれます。ま、牛肉派のほうが主流なんでしょうが、豚のスペアリブの両面をこんがり焼いて煮こみ、肉が十分にやわらかくなったところへじゃが芋を入れて作る肉じゃがもコクがあっておいしいものです。牛肉派の方も、たまには目先を変えてみてはどうでしょう。

ラデイッシュは塩かマヨネーズをつけて、春菊はサラダかおひたしでどうぞ。

来週はひさびさにニンジンが入ります。ニンジンは地中にあるので、ヒヨドリの被害を免れることができたそうです。