ヒヨドリ対ほうれん草・後日談

2010年2月第4週

今週の野菜セット

左から

先週末、ひさびさに太陽が顔を出して、春めいた陽気になりました。ただ、陽光は春色をしていても、風はまだまだ真冬の冷たさ。今週はどうなりますか。そろそろ気温も春めいてほしいものです。

先週、青山さんの畑に押し寄せたヒヨドリが話題になりましたが、その後日談です。

二・三日で青菜を食べつくしたヒヨドリは、現れたとき同様、忽然と姿を消してしまったそうですが、かれらが去った跡を見た青山さん、がっかりするどころか感動した様子でもどってきました。ほうれん草は全滅と諦めていたのが、食べられていたのは外葉だけ。中央部のやわらかいところは無傷だったというのです。

キャベツやブロッコリーもどうなることかと思いましたが、多少の傷はあっても希望の光が射してきました。ほうれん草も地温が上がれば復活するでしょう。ほっとすると同時に、青山さん、恥ずかしいような申しわけないような、いたたまれない気持ちになったそうです。

害獣・害鳥・害虫と「害」を頭につけられる生きものはたくさんいますが、環境を根こそぎ破壊するような生物は「おれの知るかぎり、人間だけ」だからで、頭のてっぺんから足の先まで「害」みたいな「おれたち」がわが物顔で地面をいじくりまわしている。それがもう、顔から火が出るほど恥ずかしかったというんですね。

わかります。おっしゃる通りです。罪深い人間は、害獣・害鳥・害虫の食べ残しを食べていればいいのかもしれない。好子さんはなにもいいませんが、はじめから倍量の種を畑に蒔いています。半分は虫のため、というのが彼女の農法で、こうしておけば野菜の全滅は避けられるから・・・。逆に農薬なんか散布するほうが、やられるときは徹底的にやられる、というのがわかっているんです。

不経済な農法と思われるかもしれませんが、高価な農薬を買うのと倍量の種を買うのでは、むしろ後者のほうが安上がりなんですね。自分の畑で作ったものは全部自分のもの、などと思わず、自然界の源泉徴収をすんなり受け入れる。できる野菜は不揃いですし、季節によっては種類も乏しくなりますが、それもしかたのないこと。無駄な抵抗は野菜にも負担をかけることになるからです。

人体も自然の一部ですから、いくら外観がきれいでも、野菜が周囲に対して不寛容であれば、人の体内でも滋養にはなれません。人体にやさしいものは、虫や鳥にもやさしいのがあたりまえ。やさしいけれど、守るべきところはちゃんと自衛しているのです。

これが農薬や化学肥料で自然から切り離されて生長すると、今回のようなヒヨドリの集団に対しても、ここまでは食べてもいい、でも、ここからはダメと自己主張することができないのです。だから農薬に対してどんどん耐性をつけてゆく虫にも対処できず、さらに毒性の強い薬品に頼るという悪循環を生み出すことにもなるんですね。

自然界から収奪するだけでなく、ちゃんとお返しも計算に入れておかないと、自分の首をしめることになる。これは農業だけの問題ではないと思います。人類全体がもっと寛容にならないと、百年もたたないうちに、海も陸地も生物が生息できないほど荒廃してしまいかねませんものね。

今週の野菜とレシピ

なかなか大きくなれない大根ですが、何度か雪が降ったので畑は十分に潤っています。あとはすこしずつ地温があがってくるのを期待するのみ。

にんじんもなかなか大きくなれませんが、大きくなるのを待っていたら春になってしまいそう。そんなわけでミニ・キャロットが入ります。

ぼっちゃんカボチャは青山さんの納屋に残っていたものですが、例年なら傷みが出るところ、この寒さのおかげで持ちこたえることができました。食味もそれほど落ちていません。冬至かぼちゃならぬ立春かぼちゃ。タジン鍋で蒸し焼きにしたら絶品でした。

春菊のチヂミ

チヂミといえばニラが一般的ですが、春菊を細かく切って、溶き卵と同量の出汁、小麦粉、鰹節でかき揚げを作る要領で和え、油を敷いたフライパンで焼くと、ニラで作るよりおいしいんです。できるだけ薄くフライパンに伸ばすのがコツ。そしてできれば桜エビを散らしてください。わたしはこれをポン酢で食べますが、芥子醤油でもトンカツソースでも、なんでもOKです。


しめじも玉葱といっしょにホイル焼きかバター炒めして、ポン酢かレモンで食べると美味。小松菜はおひたしかスープでどうぞ。