雪の効用

2010年2月第2週

今週の野菜セット

左から

厳しい寒さが続いていますが、立春を境に陽光は輝きを増したよう・・・。六十ワットの電球が、いきなり百ワットになったかのような明るさで、着実に季節は移っているようです。

それに加えて、ガレージに積んであった薪が残りすくなくなってきて、奥のほうまで日が射すようになりました。日も長くなりましたしね。気温はあいかわらずでも、目に入る光景に春の気配が感じられると、こころなしかあたたかくなったような気がするから不思議です。でも、心待ちにしているものって、手が届きそうになってからが長いんですよね。

先週、この欄で雪が話題になったとたん、それが現実になってしまいました。このあたりはそれほどでもなかったのですが、真岡市の積雪が三センチだとすると、益子町が六センチ。そこからさらにわが家のある山間に入ると、それが十センチ以上になるんです。というわけで、ひさびさの雪かきとなりました。

雪かきをしていると、雪というのが均一に降るものではないというのがよくわかります。当然、雨もそうなんでしょうが、雨だとすぐに流れてしまうからわかりませんよね。しかも、雪の深いところと浅いところが気まぐれに点在するのではなく、場所が決まっているのです。わが家でいうと、道路や車止めのある西側は積雪が少なく、畑のある南東斜面では倍ちかくなるんですね。毎回そうなので、まるで雪雲がこちらの都合を配慮してくれているかのよう・・・。

もうひとつ、雪の朝の楽しみは動物たちの足跡で、ふだんは目立たなく、見逃されてしまうものまできれいに残っていることです。雪の中に野ウサギの足跡があると、白菜のてっぺんを囓っているのはこいつだったのか、とわかるんですね。肉球の痕跡にも大中小があって、大はうちの犬で、小が猫。その中間のサイズはなんだろうと考えながら雪かきをしていると、雪を除くときの臭いでタヌキと判明。まるで推理ゲームのような面白さです。

チューリップのようなかわいい足跡はイノシシのもの。あの巨体を、このハイヒールのつま先みたいな蹄が支えているのです。ハイヒールで全力疾走ができるんだから、思えばすごいことですよねえ。これも足跡のある雪をめくると、イノシシの体臭が立ち昇ってきますから、雪はにおいを閉じこめる装置でもあったんですね。

道路の雪はすぐに解けて、畑の雪もほとんど消えてしまいましたが、山の中はまだ真っ白。毎朝、凍った雪をガリガリと踏みしめながら、犬といっしょに歩きまわっています。当然、山の中にも雪の深いところと浅いところがあるわけで、とくに谷風が吹くあたり、わたしが「寒だまり」と呼んでいるところでは雪も深く、とくに日当たりがわるいわけでもないのに、一度降ると春までそれが残ります。

「寒だまり」も「日だまり」も、それを作り出すのは地形です。降雪量を決定するのも天空ではなく、おそらくこちら側。天の意志ではなく、大地の形状が雨や風、雪の降りかたまで左右しているのだとすると、地上に住む者は「運を天にまかせる」なんて暢気なことはいってられなくなりそうです。天上は天上で、だれかが「運は地にまかせてある」と知らん顔を決めこんでいるのかもしれませんものね。

ともあれ、この雪のおかげでひさびさに大地が潤いました。もうすこし気温が上がれば、野菜も元気に育ってくれると思います。

今週の野菜とレシピ

この冬最後の白菜が入ります。畑に置いておくと、寒さでどんどん外葉がとろけ、そのうち使えるところがなくなってしまうぞ、と青山さんが脅かすので、食べられるうちに食べてしまおうということになりました。

すぐに使わないときは、新聞紙にくるんで暖房のない場所に立てておくと長持ちします。野菜は畑にいるときとおなじ姿勢でいたほうが元気なので、保存するときは白菜も葉ものも横にせず、立てておいたほうがいいですよ。

里芋も同様の理由で入りました。本来なら春まで保存しておけるのですが、寒さで傷みが出ているようです。これも全部ダメになってしまう前に使ってしまおうということになりましたが、たまには目先を変えて里芋のクリームシチューというのはどうでしょう。

里芋のクリームシチュー

用意するの
鶏もも肉:1枚
玉葱:大きめのもの1個
生クリーム:200cc

まず、鶏もも肉を丸ごと鍋に入れ、ひたひたよりすこし多めの水で煮ます。そのとき塩もひとつまみ入れてくださいね。鶏肉を煮ている間に里芋の皮を剥き、食べやすい大きさに切っておきます。玉葱はみじん切り。

鶏肉が煮えたら一度取り出して、残ったスープで里芋を煮ます。鶏肉の荒熱が取れたところで大きめのひと口大に切り、鍋にもどしてください。これを煮ている間にソースを作ります。たっぷりのバター、もしくはオリーブ油で玉葱を炒め、透き通ってきたら小麦粉を大匙3~4杯、ムラのないようにからめます。そこへお玉で一杯ずつスープを入れながらのばし、塩、胡椒、オイスターソース少々で調味。最後に生クリームを入れて、里芋と鶏肉も入れてとろ火で数分、味をなじませたら完成。とろりとした里芋がおいしいですよ。でも、舌を焼かないようにご用心。ラデイッシュか京菜のサラダを添えてどうぞ。


ひさびさの椎茸白菜でクリームスープというのもおいしそうです。今週は気温がぬるみそう・・・。ほうれん草も早く出荷できる大きさになってくれるといいですね。