秋雨前線

2010年10月第1週

今週の野菜セット

左から

旱魃から一転して、今度は雨ばかり続きます。あれだけ心待ちにされた雨も、三日続けば飽きられる・・・。身勝手は百も承知でいわせてもらうと、雨では稲刈りができないのでなかなか新米が出てこない。早々と稲刈りを済ませた田圃と、機を逸した田圃とがパッチワークの模様みたいに連なって、遅れたところは稲穂の重みで今にも倒れそうな感じです。

遅れれば遅れるほどコンバインが動かしにくくなるそうですから、今週中にはどこの田圃もきれいさっぱり、かたづいてほしいものです。

晴れた日にはトンボが群れ飛び、それが帽子にも身体にもまつわりつきます。あくびでもしようものなら、口の中にも入ってきそう・・・。犬の背中や尻尾にも止まるので、落ち着いて散歩ができなくなります。

毎年、アキアカネは群れていますが、今年は出てくるのが遅かったかわりに数が増えているようで、上ばかり見ながら歩いていると、水中にでもいるような気分。青空をバックに、アキアカネはさしずめ小エビといったところで、それを追ってパクパクやっている犬はアジかサンマ?気配だけのイノシシは、岩穴に潜むウツボといったところでしょうか。

海から上がって浜辺に立つと、金木犀が匂いたちます。例年より花はすくなく、小ぶりとはいえ香りは濃厚。夏の苦労が大きかった分、香りも強くなるのでしょうか。半月遅れの彼岸花も、十五夜には間に合わなかった萩も今が満開で、遅れた分だけ色鮮やかに見えるところを見ると、種蒔きの遅れた冬野菜も思ったより逞しく育ってくれるかもしれません。そして遅れた分だけ、滋味も豊かになってくれるといいんですが・・・。

秋・冬の野菜はどうなるんだろう、という心配はひとまず回避されたみたいです。気温の低下と雨のおかげで、虫もすくなくなりましたから、後は日射しに期待するのみ。ひさびさに照る照る坊主でもつくりましょうか。

照る照る坊主といえば、ハワイにあるマウナケア山頂は世界中の天体観測所が集中するところですが、日本の観測所ではこれが名物になっているそうです。まず、外国から来たスタッフは、いたるところにワンタンみたいなのがぶら下がっているのに驚き、その謂われを聞いて二度びっくりするのだとか。

どんな高性能の天体望遠鏡でも、地上付近に雲があったのでは観測はできませんからね。それで科学者たちが選んだのが神頼み。エリートたちがテイッシュを丸め、せっせと照る照る坊主を作っているところを想像すると、おかしくもあり、文化というものの底力にも恐れ入るわけです。いざというときには迷信が科学を制覇するのですから。

この照る照る坊主作戦がどれだけ効を奏しているのか、他国の科学者たちの中にも真似る動きがあるのかどうか、報告がないのでわかりませんが、天文台から世界中に照る照る坊主が発信され、世界中の子供たちがこれを作るようになれば・・・と、エリートではないただの人の夢は広がります。が、あらためて自分の足元を見ると、今の子供たちってそんなもの作ってないんじゃない?科学の最先端でもいざというときには出てくるものが、次世代に伝わっていない。廃れつつあるというのは由々しきことではないでしょうか。文化の伝承を怠ってはいけませぬ。ことあるごとに作らねばなりませぬのでは・・・。

「ママ、なに作ってるの?」「照る照る坊主よ」「へえ、それなに?」なんて感じでね。

先週、山の中に捨てられていた子猫のことを書きましたが、無事、生きていたみたいです。雨の翌日、姿が見えなくなたので、死んでしまったかと思っていたのですが、散歩中、いつも会うおじさんが拾ってくれていたのでした。

このおじさん、仕事をリタイアしてから毎日三時間ぐらい、犬二匹を連れて歩きまわっています。だからどのコースを選んでも、かならず出会うことになるんですね。おじさんも子猫のことは気にかかっていたけれど、家には何匹も猫がいるのでわたし同様、見て見ぬふりをしていたそうです。が、雨上がり、山道のわきに横たわっている子猫を発見。そうっと体にさわってみると冷たくなっていたそうです。

あまりに不憫だったので、犬二匹を連れて帰宅してから、バイクに乗り換えて子猫の亡骸を引き取りに来て、抱き上げたとたんにニャア。まだ生きていたんです。こうなったらしかたがない、なにかの縁だと思って連れ帰り、体をあたため、子猫用のミルクとミルク瓶を買ってきたそうです。そんなわけで、今は保父さん。夜中の授乳がきつくてねえ、とぼやいているおじさんに、ありがとうございます。深々と頭が下がりました。

山の中に生きものを捨てるのだけはやめてもらいたい。ゴミを捨てる人が自分の運もいっしょに捨ててしまうのは勝手だけど、子猫といっしょに命まで捨ててしまってはね。それを黙って見ているというのもイヤなものです。だれも見ていないからなにをしてもいいんじゃなくて、だれも見ていないときこそ自分を律して慎むべき。それが人の人生を左右すると思うんですけど、こういう因果関係、なかなかわかってもらえないみたいですね。

今週の野菜とレシピ

小松菜京菜ルッコラと、ようやく秋らしい青ものが揃いました。京菜は生のままざくざく切って、かりかりに油炒めしたちりめんじゃこ、あるいは削り節と胡麻油少々をかけ、醤油をまわしかけるとご飯のおかずにもなるサラダ。

ルッコラのパスタ

ルッコラも生食用。ニンニクと唐辛子をオリーブ油で炒め、軽く塩味をつけたところにパスタを加え、火を止めてからルッコラを加えると胡麻の香りが食欲をそそります。辛いのが苦手な方は、茹でたパスタにバターをからめ、ルッコラを加えるとマイルドに仕上がります。これに醤油をすこし垂らしてもおいしいですよ。


しその実は水に浸けてアク抜きしてから醤油に漬けます。小口切りにした葱としその実のかき揚げも香りがよくて美味。かき揚げにする場合、アク抜きの必要はありません。天つゆをたっぷりからませてご飯にのせてどうぞ。

涼しくなると茄子の生育に時間がかかるため、味が濃厚になってきます。こうなると焼き茄子がおいしくなってきます。焼き茄子といえば生姜醤油が定番ですが、オリーブ油をたらし、塩をぱらぱらとふって食べてみてください。茄子の甘さにびっくりすると思いますよ。

来週は舞茸が入ります。馬田さんの椎茸も今月下旬には出てきそう・・・。野菜セットにキノコが入るようになると、山の紅葉がはじまります。風邪をひかないよう、あたたかくしておやすみください。