梅雨どきの芳香・悪臭

2010年6月第3週

今週の野菜セット

今週は野菜セットの写真を用意できませんでした

いよいよ梅雨入り?

この時期になると、山の中でも住宅街でも、ときには駅の構内なんかでも、どこからともなく栗の花が匂ってきたりするものです。

これは匂いといっていいのか、臭いといったほうがいいのか、微妙なところでして、プールの消毒剤のにおい、という人もいれば、いや、あれは漂白剤。あるいはもっと生々しいものに譬える人もいたりして、おなじ花でもバラなどとはほど遠い香りですよね。

ところが高温多湿のこの時期には、逆にそれがすがすがしく感じられることがあります。おなじく評判のよろしくないドクダミが、梅雨どきには一転して爽快な香りになるのと似ているかもしれません。消毒剤や漂白剤みたいな臭いがするということは、実際にそんな作用があるのかもしれず、じめじめした空気の中、うようよと繁殖する細菌やカビを牽制している感があります。

だから爽快。昔の人はこの時期になると、ドクダミを大量にトイレに投入したそうです。便槽に蛆を湧かせないためです。現代のわたしたちは小さな束をたくさん作って、冷蔵庫や箪笥、下駄箱の防臭剤兼カビ防止剤として利用。可憐な白い花を室内に飾っておくだけで、空気清浄機がわりになりそうです。

栗の花は自然界の妙といいますか、なんでこんなものがイガイガに包まれたおいしい栗になるの?首をかしげるような形状で、しかもドクダミのそれのような可憐さもうつくしさもない。稲穂がだらりと下がったような姿で、花びらだか花粉だか、つぶつぶしたものを根元にいっぱい落とします。だから枝を折って、それを観賞用にしようなどという人もいないのですが、これは屋外専用の空気清浄機といったところでしょうか。

それとは対照的に「悪臭」を放っているのがジャスミンで、なぜか裏山のいたるところにこれがあるのです。たぶん、だれかが鉢植えのジャスミンをゴミといっしょに山の中に捨て、それが繁殖したんでしょう。だから目につくと引っこ抜いているのですが、中には大木にからみついて手が出せないほど大株になってしまったものもあり、それがまた、あちこちに子孫を飛ばしているみたいです。要注意外来種に登録されるほど全国区ではないみたいだけど、局地的には十分危険な侵入者。

それもこの時期に開花するのですが、ジャスミン・テイーはあんなにおいしいのに、山の中に充満するジャスミンの香りというのは悪臭以外のなにものでもないんですね。整髪料か化粧品が大量に放棄されているかのような、過剰に甘ったるい、気分がわるくなるような香りで、わたしと犬は駆け足で遠ざかってから深呼吸。そんなときに栗の花が匂ったりすると、救われたような気分になるものです。

悪臭が芳香になる一方で、芳香が悪臭に成り下がる。わたしたちの臭覚があいまいなのか、梅雨という特殊な季節がそうさせるのかわかりませんけど、芳香も悪臭も紙一重。ま、物事のよしあしなんて、みんなそんなものなのかもしれませんけどね。

一方、臭いも香りもないかわり、ささやかなおやつを提供してくれるのが木苺・ベリー類です。真っ赤に熟したもの、朱にちかいオレンジ色、淡いオレンジ色と種類もさまざまで、いちばんおいしいのが淡いオレンジ色。さわやかな甘みで喉の渇きを癒してくれます。

でもね、これもいいのはこの時期だけで、それ以外の春夏秋冬、そこら中で通行人の行く手を塞ぐ邪魔者なんです。ただ生い茂るだけならともかく、鋭いトゲがあるからで、これが冬になって葉がなくなるとトゲがむき出しになり、セーターなど着ていた日にゃあどうしようもない。うちのような山間部では、畑だろうが花壇だろうが、ところかまわず侵入してくるので油断も隙もないのですが、トゲがあるので素手では取れない。困りものなんです。

にもかかわらず、たわわに赤やオレンジの実がついていると、よっしゃ、よっしゃと田中角栄みたいな口調になって、それを食べまくる。犬もけっこう食べてます。われながら浅ましいなあ、身勝手だなあと思いつつ、でも、おいしいものはおいしい。邪魔なものは邪魔。しょうがないんじゃないの?と自分には甘かったりするんです。

困りものといえば栗の木もそう。わたしが住んでいるところは栗生(くりゅう)という字なんですが、その名のとおり、勝手に栗がどんどん生えてきて、気を許すといつの間にか庭木よりも大きくなっていたりするんです。これも実のほうはいいけれど、畑仕事をしているときにイガがお尻に刺さったり、落ち葉堆肥を作っていると、指先にいくつもトゲが刺さったり、けっこう邪魔になっている・・・。

ま、それもこれも贅沢な悩みなのかもしれません。文句をいっていたら罰があたりそうですけどね。

今週の野菜とレシピ

今週は青山さんのブロッコリーカリフラワーが入ります。映画に譬えるなら、豪華キャスト、二大スター競演といったところで、どちらも無農薬とは思えない美形です。それは青山さんが奮発して、材質のいい防虫ネットを買ったからで、こんなんだったらもっと早く買っとくんだった、と本人が後悔するぐらい。ヨトウムシもアオムシもいないので、こちらも安心して箱詰めできるし、自信をもってお届けできるのがなによりうれしい。端境期は肩身が狭く、申しわけありませんという感じでしたが、今週はひさびさにルンルン気分で仕事ができそうです。

どちらも塩茹でしてから、ブロッコリーは芥子醤油和えか胡麻よごし。カリフラワーは甘酢漬けがピクルスで・・・。カリフラワーは茹でるとき、酢少々と小麦粉ひとつまみを加えると、つやつやの色白美人に仕上がります。

オカヒジキも今週は2袋、200グラムずつ入りました。湯がいておひたしにするか、炒めもので・・・。

オカヒジキの炒め物

豚バラ肉50グラムを1センチ前後に切って炒め、塩と一味唐辛子、オイスターソース少々で濃いめに調味。そこへオカヒジキ1袋を加えていため、熱湯でもどして包丁を入れておいた春雨も加えて炒めます、味を見て、足りない分は醤油で補います。レタスのときに使ったレシピですが、レタスとはまたひと味ちがうおいしさです。


小松菜春菊も今回が最終便。これからはいよいよ夏野菜が主流になります。好子さんのきゅうりが4月の寒さでやられたため、青山さんの露地きゅうりの生育を待っているところです。