丑年のイノシシ

2009年1月第1週

今週の野菜セット

左から

あけましておめでとうございます。

お正月はいかがお過ごしでしたか。あっという間の正月休み。一年がこれだけ短いのですから、一週間足らずの休暇など、すぐに終わって当然かもしれませんが、おかげさまで三が日はのんびりできました。

昨年の疲れが癒えたところで、再スタート。今年もよろしくお願いします。

今年は丑年。

でも、話題は昨年に引き続きイノシシでして、それというのも正月早々、うちのまわりではイノシシの話でもちきりなのです。

まず、罠にかかったイノシシの話。見てきた人の話では、胴体がドラム缶を二本合わせたぐらいの巨体で、とても五メートル以内には近づけなかったとか。そのイノシシどうしたんですか、と聞けば、結局だれも手が出せず、猟友会に頼んで射殺してもらったんだそうです。たぶん立派なオスのイノシシだったんでしょう。

隣人は暮れに犬の散歩中、自動車道路でまさかの遭遇。イノシシは田圃の中にいたそうですが、夕闇で姿がはっきりしない分、恐怖感が増大されたのか、道の真ん中で身動きがとれなくなってしまったといいます。

山間だけでなく、町中にも出没しているらしく、百合を根絶やしにされた家、門の中に入りこみ、出口が見つからなくなったのか、パニック状態に陥ったイノシシが暴れまわって庭を滅茶苦茶にしていったとか、人が集まればそんな話ばかりなんですね。

正月三が日はハンターも山に入らないので、ゆっくり散策することができましたが、イノシシの痕跡が以前にくらべて増えていて、臭いが残っているところもあったぐらいです。もうすこしのところでニアミスでした。

それにしてもなぜ、こんなにイノシシが急増しているのか。諸説あって、ひとつは十数年前、隣町にサーキッドができ、山林が開発されたため、行き場を失ったイノシシたちが移動してきたという説。もうひとつは、イノシシが豚と交配してしまったため、益子にいるイノシシのほとんどがイノブタで、純粋なイノシシならそれほど増えないところ、豚の血が入っているため繁殖能力が増大。年に一度、二~三頭の子供が生まれていたのが、数回になり、一度に生まれる子供の数も増えているという説です。

もしそうだとしたら、これは人災。イノシシが勝手に養豚場などに入りこむわけがありませんから、郷土料理の店などが飼育しやすいように交配させたものが逃げ出したか、店を畳むとき放してしまったか。そういう無責任な営利行為が生態系を狂わせたんじゃないでしょうか。それに加えて森林開発。害獣はイノシシではなく、人間のほうだったのかもしれません。

もちろん、温暖化による平均気温の上昇がイノシシを生存しやすくしていることも見逃せません。サツマイモを作っている高橋さんのところでも、被害がひどくなりはじめたのはこの五・六年。以前は年が明けてもたっぷりサツマイモがありましたが、年々納品量が減ってきて、今では電柵と呼ばれる高圧電流を流した柵なしに、サツマイモは収穫できなくなっています。

米もそう。うちのまわりの田圃でも、二・三年前から電柵が張りめぐらされるようになり、そういう負担のできないところは田圃を放置。雑草が生い茂るようになりました。困りましたよねえ。食糧戦争さながらです。

でも、狩猟シーズンは一日も早く終わってほしい。一部の人間の営利活動の犠牲になるのは、いつも第一次産業と野生生物。この悪しきパターンがなくならないかぎり、人類の未来も明るくはないんじゃないか。そんなことを考えさせられた正月でした。

でも、今年は丑年。よきことはカタツムリの歩みで進む、というガンジーの言葉どおり、ゆっくりと方向転換してゆけたらいいな、と思いました。

今週の野菜とレシピ

正月のごちそう続きの後で七草粥。これはフル回転した胃を休め、青もの不足を補うという古来の知恵でした。寒さで萎縮しがちな身体に、良質のミネラルを補給するという狙いもあります。

セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ、これらを全部そろえるとなるとたいへんですが、スズナはかぶの葉、スズシロは大根葉、それに地面に張りついたように生えているハコベ、ハハコグサ(ゴギョウ)、ぺんぺん草(ナズナ)を加えるとなんとかなります。

都会にお住まいの方もなんとかなるよう、今週の野菜セットには青ものがたっぷり入りました。小松菜京菜山東菜ルッコラちぢみほうれん草・・・。ルッコラはともかく、かぶの葉をメインにすこしずつ加えてみてはどうでしょう。

ちぢみほうれん草。見かけはあまりよくありませんが、肉厚で甘みが強いのが特徴です。胡麻和えやお浸しでどうぞ。

かぶとじゃが芋はスープがおすすめ。サイコロでも薄切りでも、お好みのカットで同量を水から煮ます。かぶの甘みがあるので、出しは不要。塩と胡椒で味をととのえ、カップに移してから生クリームを少量たらしますが、生クリームはなくてもOK。離乳食にもなるぐらい、やさしい味のスープです。

評判のいい椎茸は、暮れに大量出荷されたため、正月をはさんで休息中。低温のため生育もゆっくりですが、早ければ来週あたり顔を出すかもしれません。

来週は大根も入る予定です。