カモのいる池

2009年1月第3週

今週の野菜セット

左から

寒いですね。

連日、朝の気温が氷点下まで下がり、昼間も十度以上にはなりません。今のところ積雪はありませんが、低気圧が接近するたびに、雪になるんじゃないかと気をもむありさま。ひさびさの冷えこみです。

そんなわけですから、朝起きていちばんにやることが氷割り。庭先の瓶(カメ)に氷が張っていると、野鳥が水を飲めなくなるので、それを割ってまわるのです。暮れは手でも割ることができましたが、年が明けてバールを使うようになりました。それぐらい氷が厚いのです。

通勤途中に群がるカモたちも、氷の張った池の上で所在なげにしています。渡り鳥のサンクチュアリになっているその池も、昔は子供たちのスケート場だったそうですが、今年あたり、やろうと思えばそれもできそう・・・。もっとも危険覚悟ではありますけどね。

カモの餌はどうしているんだろう、と気がかりでしたが、近所の人たちが交代でパンくずや籾米をやっているそうです。それを楽しみにしているお年寄りもいるといいますから、カモも安心していられるんでしょう。禁猟区でもありますしね。

カモの餌やりの話から、人はほんのささいなことで幸福にも不幸にもなれるんだな、と思いました。

秋も深まったころ、カモが冬を越すためにやって来る。それにささやかな食糧を提供する。たったそれだけのことですが、夏が終わるころから、頭の中の小さな池にはもうカモが飛来しているはず。稲刈りの後、せっせと落ち穂拾いをして、冬に備えている人もいるぐらいですから、人生の一部にすらなっているようです。

そして春、道中の無事を祈りながらカモを送り出すのですが、カモために祈ったことがそのまま当の本人にもどってくるのか、みなさん、杖をついたり腰が曲がったりしていても無病息災。過酷な夏も難なく越して、十年一日のごとく鳥の飛来に立ち会ってきたのです。おじいさんもおばあさんも、カモの話をするときは終始笑顔をたたえていて、それを見ていると、一見無表情な氷の上の鳥たちもまた、おなじ笑顔を羽毛の中に抱えこんでいるんだろうな、と思えてきました。

人って、だれかを仕合わせにしないかぎり、自分を救えない生きものなんでしょう。近頃、災害が起こるたびに、積極的にボランテイアに参加する若者が増えていますが、この競争社会にあって、教育のみならず遊びの世界でも勝った負けたと点数を競いあってきたかれらが、なぜなんの得にもならない奉仕などしようとするのか。意識しようがすまいが、かれらが「そのこと」に気づいているからだと思います。

若者たちはだれのためでもない、自分のために他者を救済しようとする。それが証拠に、かれらの行動にたとえ薄謝でも給金が支払われるようになると、とたんにやる気が失せてしまうといいますから・・・。修道女たちが好んで過酷な現場、人が恐れたり忌み嫌うような場所を選ぶのと、どこか通じるものがあります。

情けは人のためならず、とはよくいったもので、情けは人のためならないらしいから、人に情けをかけるのはよそう、という的はずれな解釈もあるようですが、他者に与えないかぎり、自らもまた得られないという絶対法則は昔から変わらないんですね。投げた石は、そのまま自分に還ってくるんです。

卑近な例をひとつ。主婦というのは、毎日家族の食事から掃除、洗濯と仕事は山積みで、自分の時間がないとこぼしている人が多いのですが、なにかの都合で家族が出かけてしまい、数週間の余白が生まれたとします。さあ、自分の時間だらけになりました。最初のうちは映画やコンサート、ショッピングにと飛びまわりますが、そのうち時間をもてあますようになる。

部屋を散らかす者がいないのに、室内が薄汚くなってくるのは、毎日していた掃除をさぼっているからで、そのうち自分の肌まで荒れてくる・・・。それは食事の支度がおざなりになってくるからで、毎日、うんざりしながらでも家族の健康を考え、バランスのいい食事をしていたのが、外食やら手抜きやらでおろそかになっていたのです。

そうしてはじめて気がつくわけです。家族のためと思ってやっていたことが、じつは自分のためだったということに・・・。これ、わたしの体験談なんですけどね。以来、ご飯を食べるだけの人が、自分の健康を守ってくれる人になったというわけ。みなさんも自分のために、おいしいものをたくさん作ってあげてくださいね。

今週の野菜とレシピ

今週は好子さんの大根が入る予定でしたが、この寒さで生育が遅れているため、好子さんのお母さんが作った沢庵が入ります。田舎風の沢庵をご賞味ください。

青山さんの自然薯は、山で採集したムカゴを畑に蒔いたものですが、山の中とちがって畑の土はやわらかいので、かたい山土を押しのけながら生育した自然薯ほど粘りはありません。が、味は天然ものとおなじです。すりおろして出しを加え、ご飯にかけてどうぞ。お好みで卵を加えてもおいしいですよ。

青ものは小松菜春菊京菜山東菜が入りました。先週はサラダづくしだったので、今週はおひたしにしてみたいと思います。

まず春菊。さっと湯がいてよく水を切り、食べやすい大きさに包丁を入れてから、砂糖少々を加えたポン酢と、たっぷりのすり胡麻で和えます。さっぱりしているようですが、胡麻が入るのでけっこう濃厚な味わいになり、ご飯ともよく合います。

山東菜は湯がいて包丁を入れておいたものを、わが家では煮魚のつけ合わせによく使います。煮魚を皿に盛ってから、残った煮汁でこれをさっと煮て添えるのですが、生のまま煮ると水っぽい仕上がりになるので、湯がいてから水分をよく絞り取ったものを使ってください。

例年にない寒さのため、椎茸がなかなか大きくなれません。いつも来週には、といいながら期待を裏切ってきましたが、今週は冷えこみもゆるみそう。今度こそ入るはずです。

また冬といったらほうれん草で、小松菜の次に人気のある青ものですが、これも寒さのため大きくなれず、ちいさいうちから無理をして収穫してしまったために底をついた状態で、新たにビニールトンネルの中に種蒔きをしているところです。申しわけありませんが、今しばらくお待ちください。