夏祭り

2009年7月第5週

今週の野菜セット

左から

先週の皆既日食は、いくらかでも見えればラッキー。そんな空模様でしたが、みなさんのところではどうでしたか?

こちらはさっぱり。重く垂れこめた雲のせいで、暗くなったのもわかりませんでした。ただ、十一時をまわったころから、あたりからすこしずつ小鳥たちのさえずりが消えはじめ、異様な静けさに包まれたのが印象的でした。

カラスのカアで沈黙が破られるまでの十数分間、天上で進行しているドラマ

に思いを馳せるしかなかったのですが、逆に日食が観察できていたらそっちのほうに夢中になって、すべての音が消えたことには気がつかなかったかもしれません。これはこれで貴重な経験だったんでしょうね。

数日前から、台所の片隅でキリギリスが鳴いています。昼間はしんとしているから、どこにいるのかわかりませんが、夜になるとそれが鳴きだす。まだ夏にもなっていないというのに、早々と秋が訪れでもしたようです。

その昔、二宮尊徳は農家を訪れたとき、茶菓子代わりに出された茄子の漬け物を口にして、顔色が変わったといいます。夏のはじめだというのに、秋茄子の味がしたからです。夏の茄子はすぐに大きくなるから味が淡泊なのですが、秋茄子は時間がかかるので味が濃くなるんですね。

かの有名な天保の大飢饉をいち早く察知した尊徳は、櫻川(現在の二宮市、真岡市の隣町です)の農家に、稗や粟といった雑穀を作らせたという記録が残っています。全国からおびただしい餓死者が出たにもかかわらず、おかげでこのあたりの死者はゼロ。尊徳が救済に走りまわった小田原藩も、死者を出さずに済んだのでした。

後になって、遠く中米のコクゼイナ火山の噴火による日照不足が、天保の飢饉のひき起こしていたことがわかっています。ちなみにそれよりすこし前の天明の飢饉は、冷夏だったところに浅間山が噴火したため。この地球に火山というものがなかったら、地中のミネラルが放出されないので、農業どころか草も木も生えることができなかったといいますが、その火山が人の命も奪うわけです。まさに創造と破壊を繰り返す神のような存在で、わたしたちを生かすも殺すも火の山のご機嫌しだい。世界中でそれが聖地として崇められているのにも、ちゃんと根拠があったわけです。

ま、今のところ、世界のどこからも火山が噴火したという話は入ってきません。が、この夏はなんとなく冷夏になりそう・・・。わたしたちもこの際、注意深く好子さんの茄子を味わったほうがいいのかもしれません。もっとも現代の尊徳なら、春先のタケノコの出来具合で吉凶を占っていたかもしれませんけどね。

殺人的な暑さではありませんが、湿度が高いため、わたしたちは十二分に夏を満喫しています。でも、植物たちはどうなのでしょう。長雨の影響で、雑草の生い茂りかたがすさまじいところを見ると、かならずしも太陽光が必要というのではなさそうですが、夏野菜は果菜が多いので、花が咲き、実をつけるにはやはり熱と光が必要不可欠。本体ばかりが大きくなって、そちらのほうに養分もエネルギーも取られてしまうので、実つきがわるくなるのです。

田圃の稲も一見、すくすく育っているようですが、あまり背丈を伸ばしてしまうと穂が育ちにくくなってしまいます。また、後半天気がよくなって、穂先に実が入っても重みに耐えきれず、倒れてしまう・・・。そこで秋の長雨にでも遭遇したら、倒れた穂が水に浸かっていっせいに発芽しはじめるのです。そうなると、米はスカスカ。栄養価も半減してしまうんですね。

今、どこの町でも夏祭りが行われています。夏祭りの起源は豊饒祈願。つまり梅雨明け後、晴天続きでからからになった大地に雨を降らせてくれるよう、神さまの機嫌を取るのが目的でした。だから、お祭りはよく夕立に見舞われるでしょ?律儀な神さまは、たとえ多雨の年でもちゃんと雨を降らせてくれるみたいです。

お祭りが終わったら、一転して晴天が広がってくれるんじゃないか。そんな期待を抱きながら、山車の行き交う熱気の中をうろいていましたが、果たしてどうなりますか。今週当たり、ぱあーっと晴れてくれるといいですね。

今週の野菜とレシピ

先週お目見えしたばかりのモロヘイアは、一週間の小休止。雨と低温の中、無理をして収穫したのが響いたようです。天気しだいですが、来週には復活してくれるでしょう。

今週もぼっちゃんカボチャが入りますが、これは常温で保存できますから、あわてて食べる必要はありません。水で煮て、醤油をすこしたらしただけでもおいしく食べられるので、なにかもう一品というときに重宝します。

長葱青じそは薬味用。

トマトとシソのサラダ

麺類だけでなく、スライスしたトマトにさらし玉葱と青じそをたっぷりのせて、酢:1、醤油:1、油:3に塩、胡椒をプラスしたドレッシングをかけるとさっぱりとして美味。

トマトとシソのサラダ

豚肉とシソのロール揚げ

豚肉の薄切りの上に青じそを置き、それをくるくる巻いて小麦粉、溶き卵、パン粉の順に衣をつけて揚げるという手もあります。これは種をとった梅干し1個をペースト状にして、醤油と蜂蜜でのばしたソースでどうぞ。

豚肉とシソのロール揚げ

空芯菜のオイスターソース炒め

空芯菜は東南アジアから来た野菜。アフリカ原産のモロヘイアにくらべ、多雨には強いようです。強火でさっと炒めて、塩と一味唐辛子、オイスターソース少々で調味してください。ただし、これは暑い日に食べたほうがおいしく感じられます。

空芯菜のオイスターソース炒め

レシピの内容に干しエビを添えています。

来週はきゅうりが復活しそうです。生育が遅れているオクラやゴーヤも、そろそろ出てきてほしいですね。