アシナガバチとスズメバチ

2009年9月第1週

今週の野菜セット

左から

先週は暑い日が続きましたが、それでも紅葉はもうはじまっています。銀木犀が香りはじめたといいますから、金木犀の開花も間近。今月上旬には、あの晩秋のすがすがしい香りが流れ出しそうです。

インフルエンザの広がりに加勢するかのように、季節が一ヶ月以上も前倒しになっています。冷夏とはいえ、夏の疲れは蓄積されているはず。ちょうどそれが出てくる時期でもあります。あまり神経質になる必要はないでしょうが、だからといって侮らず、体調管理と予防をこころがけてくださいね。

虫たちも、もう晩秋の動きをはじめています。畑では、もうカマキリのメスが小さなオスを食べていました。ということは、もう繁殖期を迎えているのです。夏の間、あれだけ盛んに羽音を立てていた秋の虫が、これからというときに静まってきましたから、カマキリの食糧も尽きてきたのでしょう。

来春、生まれてくる子供たちが時期を誤って凍死したりすることのないよう、祈るばかりです。カマキリにアシナガバチ、スズメバチといった肉食昆虫たちは、わたしたちの畑で農薬に代わる働きをしてくれているのです。かれらがいなくなったら、野菜セットの主役たちは穴だらけになってしまうでしょうからね。

先週、事務局内のアシナガバチの巣がスズメバチの襲撃を受けている話をしましたが、調べてみたらあれは黄色スズメバチではなく、姫スズメバチという種類でした。姫という名前にもかかわらず、大スズメバチに次ぐ大型で、アシナガの巣穴から幼虫を奪って巣に持ち帰り、それを咀嚼した体液を子供に与えているそうです。

大半が空になった巣は翌日落ちてしまい、わたしたちはそれを出入り口のついた箱に入れ、二重に防備してやりました。戸外の巣は全滅でしたが、内側にもうひとつ小さな巣があって、そちらのほうは無事で全室満員。それが証拠に子供部屋の入り口がすべて、白っぽい壁でふさがれています。わたしたちが存在を知らなかったぐらいですから、スズメバチも見落としたんでしょう。やりたい放題みたいなスズメバチですが、かれらもまた大スズメバチには幼虫を持って行かれてしまいます。その大スズメバチはというと、長い間人間の食用にされてきたわけで、今でも中国の雲南省では食されています。ウジや幼虫だけでなく、成虫まで揚げて食べるそうです。日本でも長野県伊那谷地方では、黒スズメバチが食用に養殖されているぐらい。また、黄色スズメバチの巣は漢方薬に利用されています。

かれらが人の接近に神経をとがらせるのも、無理のないことだったんです。黒い色を攻撃するのも、クマや東洋人の髪の色に由来しているといいますから、テロ対策みたいなものでしょう。刺される側はテロ攻撃の被害者になるのですが、向こうにしてみればこちらのほうがテロリスト。まあ、テロ問題というのは得てしてそういうもんなんでしょうけどね。

人を刺すという理由から、蜂の巣が無神経に撤去されているようですが、これこそ許しがたい自然破壊です。スズメバチがいなくなれば、庭先の柚子も柿も傷だらけ。天敵を失ったアブも大発生します。アブに刺されて人が死ぬことはありませんが、かれらの目的は吸血なので、刺される頻度は蜂とはくらべものにならないはず。そのうち蚊のように伝染病を媒介するようになるかもしれません。

都会の住宅街にもアシナガやスズメバチは繁殖しているようですが、かれらをあたたかい目で見てやってくださいね。さもなければ住宅街のいたるところにアブがいて、人を刺しまくるという悲惨な光景が出現することになるでしょう。アブは大きいのでかなり目障り。そのうえ刺されるとかなり痛く、痒みも長引きます。そうなったら子供は公園で遊ばせられないし、あなたの愛犬も外には繋いでおけなくなります。

虫と共存することができてはじめて、野菜がおいしく甘くなるように、人の生活もまた、自然界とうまく折り合いをつけないかぎり、殺伐としたものになってゆく・・・。人間もまた、自然界の産物のひとつだったということを、ここらで思い出してほしいものです。

今週の野菜とレシピ

ようやく枝豆が入りました。日中の気温は高くても、夜間が冷えこむようになったので、生育が遅れていました。また、雨不足も実入りがわるい一因になっているようです。

あんなに雨が降っていたのに雨不足?怪訝に思われる方もあるでしょうが、降り出すと長雨になりますが、降らないといったらほんとうに一滴も降らず、地面がからからになってしまうのです。降るにしても、晴れるにしても極端すぎて、ほどほどということがないんですね。

気候が人を真似ているのかもしれません。なにをするにも足るを知らず、ほどほどで止めておくことができない。スズメバチがどんなにアシナガの巣を襲っても、アシナガが激減するわけでなく、ちゃんと調和が保たれているのですが、人がそれとおなじことをやると絶滅まで追いこんでしまう・・・。そんなわけで雨が降りすぎるのも、降らなくて枝豆の実が太れないのも自業自得。甘んじるしかなさそうですね。

先日、アラレちゃんの好物のトビウオのフライを作ったとき、残っていたオクラにも小麦粉、溶き卵、パン粉で衣をつけて揚げてみました。これが大ヒットで、好物のはずのトビウオよりこちらのほうが売れたぐらです。ちなみにトビウオは三枚におろすのがちょっと面倒ですが、クセがなく、歯ごたえもあって、アジのフライなどよりずっと美味です。トビウオが出まわっているうちに、一度作ってみてください。

ゴーヤは、川崎市にお住まいのNさんから佃煮のレシピをいただきました。半割りにして、種とワタを取り除き、4~5ミリ厚さにスライス。それをボウルに入れ、熱湯をかけます。よく水気をきって小鍋に入れ、同量の醤油と味醂で煮ますが、はじめのうちは弱火で・・・。ゴーヤから水分が出てきたら中火にして、汁気がなくなるまで煮て、仕上がりに鰹節をからめてできあがり。黙って出されると、だれもゴーヤとは気づかないぐらい、苦みがなくまろやかな仕上がりになります。

新しょうがは茎を10センチぐらい残して葉を落とし、塩をふってから甘酢につけると、きれいなピンクに変色します。それをグラスなどに挿しておくと、家人が台所を通るたびにつまむらしく、いつの間にか消えてゆきます。そんな油断のならない食べものですが、食欲不振、体温上昇に効果があります。インフルエンザの流行期、体温が低いと感染率が高くなるので、身体をあたためておいてくださいね。