スーダン沖の海賊―ほんとうの海賊はだれ?

2009年7月第1週

今週の野菜セット

左から

先週は梅雨の小休止。晴れ間がのぞいて、気温も高くなりました。今週はまた梅雨空がもどってくるといいますが、どうなりますか。

暑くなるにせよ、梅雨寒にせよ、この時期は妙に身体がだるいもの。気温の変動がストレスになって、カルシウムの消費量が増えているみたいです。寝覚めがわるかったり、脚が攣りやすくなったりすると、カルシウムが不足している証拠。せいぜい補給に努めましょう。

とはいってもこの時期、青菜がありません。春先のように山菜も手に入らない。つとめて海藻や豆類を摂取するようにしたいものです。

先夜、寝入り際にガシャンという物音で眼がさめました。泥棒?いやいや、泥棒ならもっと用心深いはず。耳をすますと、カリリ、コリリと歯切れのいい音が聞こえてきます。イノシシだったのか、とほっとしましたが、いったいなにを食べているのか。家の裏手にあるのはミョウガとシソぐらいで、音を立てて食べられるようなものなどないはずなのです。

起き出して覗いてみたい誘惑にかられましたが、明かりをつけたらびっくりして逃げてしまうでしょう。そのまま眠りについて、翌朝、勝手口にまわってみると、キャットフードの空き缶が入ったコンテナがひっくりかえされ、あたり一面に広がっていました。空き缶には歯形がついています。これだったのかと思うと、なにやら急にもの悲しい気分になりました。

捨てる前によく洗ったつもりでも、匂いが残っていたんでしょう。それに反応して空き缶を囓るイノシシの姿を想像すると、そりゃ、もの悲しくもなろうというもの。ドッグフードでもばらまいてやりたくなる気持ちをぐっとこらえながら、ささやかなエールを送ったしだいです。

イノシシがペットフードの空き缶を囓らなければならないほど空腹なのは、山の中に食べるものが不足しているからで、イノシシの数が増えていることを考慮に入れても、豊かな照葉樹林を不毛のスギ・ヒノキだらけにしてしまった人の罪が軽減されるわけではありません。

それとおなじことが今、スーダン沖でも起こっています。自衛隊が出動したという、例の海賊騒ぎです。

海賊というと「怖い」とイメージと、逆に「カッコいい」という相反するイメージがありますが、スーダン沖に出没する海賊はそのどちらでもありません。だってあの人たち、みんな漁師だったんですから・・・。貴重な漁場を先進国の密漁で台無しにされ、生計を立てられなくなってしまった漁民がとった最後の手段だったというわけです。

1991年以降、ソマリア沖のインド洋ではヨーロッパやアラブ、また日本などから来た漁船が無許可で操業を繰り返し、かれらは国連やEUにそれを訴え続けてきましたが、国際社会はそれを無視していました。1991年といえば、80年以降大統領を務めてきたモハメド・シアド・バーレ政権が崩壊した年であり、それ以来、ソマリアでは国際的に承認される中央政府が消滅していたからです。政府は統治能力を失い、武装勢力が国土を分断してしている状況下、これ幸いと違法操業が続けられていたのです。

いったいどっちが海賊なのか。貧しい漁民たちは漁場を確保するために、自力で「全国海上安全ボランテイア」なるものを立ち上げて闘わざるを得ず、それが今問題になっている「海賊」の母体となったのでした。

かれらの海は二重に侵略されています。92年以降、ソマリア沖には多国籍企業によって、膨大な産業廃棄物、核廃棄物が捨てられているからです。ヨーロッパで廃棄物を処分するにはトンあたり1000ドルかかりますが、ソマリア沖に不法投棄すればトンあたり2~3ドルの運搬料だけで済む。大国と一部の大企業のエゴによって海が汚され、資源が失われているにもかかわらず、そちらの非合法は問題にはならず、海賊だけに非難が集中しているのです。

海賊の疑いがあるというだけで発砲を許可するという、とても安易なルールのもとに日本は自衛隊を送り出してしまいましたが、かれらは必然的に漁民に銃口を向けることになる。それこそ犯罪行為です。そして、わたしたちだってまちがいなく、スーダン沖で捕獲された魚の一匹や二匹は口にしているはず。

知らぬ間に犯罪に加担していることになります。

スーダンの漁民が海賊なら、イノシシは山賊。でも、どちらの賊も「文化国家」なるものによって生存を脅かされているという点で、被災者なんです。しかも、どちらも理解されにくいという困難を背負っている。テロリストを育てているのは、もしかしたらこういった上っ面だけの価値判断。現前している現象だけで善・悪を振り分ける姿勢だったのかもしれません。

今週の野菜とレシピ

トマト、茄子、きゅうり、ピーマン、ズッキーニ、インゲンと夏野菜がそろいました。

夏野菜の揚げびたし

夏野菜の揚げびたし

茄子ズッキーニにんじんいんげんを素揚げにして麺つゆに浸します。茄子は乱切り、ズッキーニは輪切り、にんじんはステイックにして素揚げ。いんげんはそのまま揚げてくださいね。麺つゆに輪切りにした鷹の爪、または一味唐辛子を加え、揚げた野菜を入れるだけ。冷めてもおいしい、というか冷めたほうがおいしいので、多めに作っておくと便利です。中途半端に残った分は、汁ごと素麺にかけると、なんとなくエスニック。油が入っているにもかかわらず、さっぱりしています。ピリ辛にすると、もっとおいしくなりますよ。

来週はとうもろこしを予定していますが、これは天候しだいです。とうもろこしが作れる好子さんの畑がうらやましい。というのは、山間部ではとうもろこしや枝豆など、食べごろになると夜中にイノシシが来て倒して行くので、だれも作らなくなってしまったのです。が、デントコーンという牛の飼料用とうもろこしは作られていて、こちらのほうは被害も深刻ではないところを見ると、イノシシのグルメ志向にも責任の一端はあるのかもしれませんね。