寒空のホームレス談義

2009年1月第4週

今週の野菜セット

左から

先週は気温がぬるんで、春のような陽気になりましたが、週末から北風とともに寒さがもどってきました。

北に見えるは日光連山。雪を頂いた峰々が、このあたりではどこからでも望めます。正面に見えるのが男体山で、その勇姿がくっきり見える日は比較的あたたかく、もやがかかっていると風が強くなるそうです。通称・男体颪。ときに風花をともなって、身を切るように冷たい風が吹きつけます。

こういうときは山間より平地、おなじ平地でも人工物の多いところのほうが冷たさ、寒さが身にしみるもの。毎年、この時期になると都会の片隅に身を寄せるホームレスのことが話題に上りますが、こんな寒い年にはどうしているんだろう、と気になってしまいます。

いつも不思議に思うのは、ホームレスが都市部に集中し、田舎には見あたらないことで、冷暖房の装置なしでは暑さも寒さも過酷なところに、なぜもっとも無防備な人たちが集まっているのか。残飯の量が圧倒的に都市部のほうが多いから、あるいは都市部のほうが仕事にありつきやすいから、もしかしたら冷暖房のおこぼれみたいな盲点も、あちこちに転がっているからなんでしょうか。

もし、わたしたちがホームレスになったら、というシミュレーションをすることがあるのですが、だって、こんなに容赦なく弱者が切り捨てられる時代です。だれがいつ何時そういう境遇になっても不思議はないのですから、そういう話題は盛り上がり、妙に真剣味を帯びてきたりするのです。

プランその一。鍋釜を携帯し、田畑の残滓を集めて調理。夜は暖房の効いているビニールハウスを点々とする。米は農家からクズ米を分けてもらい、肉が食いたくなれば仕掛けを使って野鳥や野ウサギが捕まえられるし、雑魚を釣ることもできる。いやいや、そんなことをしなくても養鶏場から出る廃鶏をゲットするという手がある。恥を忍ぶことさえできたら、農村ほど快適な場所はない、という説。

プランその二は、恥を忍ぶに耐えない人向き。こちらは山の中に潜入します。

山の中は天然の冷暖房完備。人の住めそうな穴やくぼみに、秋のうちに落ち葉を集め、敷き詰めておけば真冬の冷えこみにも対処できる。わき水もあるし、山野草も豊富。夏の虫対策も、枯れ草を燃やすだけで効果があるのは実証済み。問題は冬の食糧です。

そこでプランその三は上記の折衷案。昼間、山の中で十分に休息をとり、夜間、里に繰り出して田畑のものを失敬してまわる・・・。おいおい、それじゃイノシシみたいじゃないか。イノシシのどこがわるい、人間もイノシシもおなじ哺乳類ではないか。乱世を生き抜くのに人間もイノシシもあるもんか・・・。

ひとしきり盛り上がって、ふと冷静になってみると、みんな自分の住んでいる環境から一歩も出ていない。無一物になったとき、見知らぬところで生活することはできないのかもしれません。情報あってこそのサバイバルですからね。都市部がけっして住みやすい環境ではないにもかかわらず、そこに人が集中してしまうのもしかたのないことだったんだ、というところに落ち着いたのでした。

都市部というのは生活の基盤を失ったときにかぎらず、災害に遭遇したときも圧倒的に不利。田舎者から見れば、人も動物も住みにくそうなところなのに、なにをするにも便利という利点があります。天候をはじめ、すべての条件が揃っていれば、これほど住みやすいところはないようにできています。

しかし、ひとつなにかが崩れ出したら、便利である分、連鎖反応も起こりやすく、なしくずし的にあれもこれもダメになり、にっちもさっちも行かなくなる。それは地方都市も同様で、このまま農村部までどんどん「便利」になっていったら、どこもかしこも不慮の事態に持ちこたえることができなくなってしまいそう・・・。

都市部では、なんて暢気なことをいってるけれど、そういう危機はわたしたちの足元にも迫っているわけで、緩衝地帯がどんどん狭められてきています。緩衝地帯とは自然環境にほかなりません。いくら身近に山があるからといって、その大半に杉や檜が植林されていたのでは、なんの意味もありません。災害を押しとどめるどころか、被害を増大することにもなりかねないのです。

ホームレス談義で盛り上がっていたメンバーが、実際にそういう立場になったとき、やっぱりホームレスやるんだったら都会だよね、なんてぞろぞろと移動しないともかぎらない。そんな姿を想像するのは悲しいことです。ホームレスになることもさることながら、野山を捨てなくてはならないというつらさ。そんなことには絶対なってほしくない、ということで、今週もお仕事がんばってます。

今週の野菜とレシピ

好子さんの大根がようやく大根らしくなってきました。小粒の二十日大根・ラデイッシュも入ります。ラデイッシュはそのまま塩かマヨネーズで丸かじり。輪切りにして、ルッコラといっしょにドレッシングで食べるという手もありま

す。

椎茸もやっと出てきました。牡蠣フライがおいしい時期ですが、わが家ではかならず椎茸もいっしょに衣をつけてフライにします。牡蠣同様、塩とレモン汁で食べるのですが、椎茸のほうが売れ行きがよく、先になくなってしまいます。牡蠣はいらないから、椎茸をもっと・・・という贅沢な注文が出るぐらい。みなさんも作ってみてください。

風邪をひいたら葱味噌。みじん切りの葱と味噌、おろし生姜に熱湯を注いで飲むと、身体がぽかぽかしてきて汗ばみます。たいていの風邪はそれで治ってしまいますが、風邪をひいてなくても身体はあたためておきたいもの。きざみ葱を味噌で和え、ご飯にのせるお手軽版から、みじん切りの葱と生姜を胡麻油で炒め、唐辛子と味噌で和えた常備菜まで、いろんな葱味噌で風邪を予防。寒さを乗り切ってくださいね。