冬の鳥たち

2009年11月第2週

今週の野菜セット

左から

例年よりすこし遅れた初霜でしたが、その翌日は真冬並みに畑一面、真っ白に・・・。寒い朝になりました。

日中はぽかぽか陽気でも、夕刻ちかくなると風が急に冷たくなります。それに加えて日暮れが早く、あっという間に暗くなってしまいますから、家路に向かう足取りもだんだん速くなってきます。

虫の音も途絶え、それに代わって聞こえてくるのは、落ち葉が風に吹かれてかさこそと舞うかすかな音。侘びしくなってきましたが、夜更けにフクロウの声が聞こえてくると、かすかなぬくもりが頭をもたげます。このおだやかな声も、もうじき闇をつんざく叫び声に変わるはず。子育てを終えたメスが夫も子供も遠ざけて、独立宣言をするのです。

冬の夜を自由に飛びまわり、ネズミなどを捕食したあと、年明けにはまた元の鞘にもどるんですね。そのころには恋歌が聞こえてきます。ホーホッホッホッホという、こちらもつられて笑ってしまいそうな声。これはオスが古女房に求婚しているところなんだそうです。

トンビのピーヨは巣立って一年以上も経つのに、相変わらずピーヒョロロロではなく、ピーヨピーヨと啼きながら上空を舞っています。あんなにぎやかな声を立てて獲物が捕れるんだろうか、と老婆心がうずくのですが、健在なところを見るとちゃんと自活できてるみたい。

あのピーヨピーヨが聞こえてくると、自然と頬がゆるみます。早朝の冷えこみもいっしょにゆるむような気がするから不思議です。でも、あんまりわが家に近づきすぎると、カラスたちに追われるんです。追われているときのピーヨピーヨは切実ですから、悲壮感とともに寒さがもどってくる感じ。

そんな感じであたたかくなったり寒くなったりしているせいか、風邪をひいてしまいました。くしゃみを連発するたびに、まわりからイヤな顔をされていますが、インフルエンザではなさそうなのでご心配なく。鼻風邪ですから、足湯をすればひと晩でよくなると思います。

秋は渡りの季節なので、いろんな旅人がわが家の庭木で休んだり、食事をしたりして行きます。今はオナガ、ヒタキの類が多いようで、真冬になるとヒヨドリやムクドリが増えてきます。

また、コンコンコンコンコンとドアをノックするような音が、秋の深まりとともに頻繁に聞こえるようになります。これはコゲラが樹の幹を啄いている音。キツツキの仲間ですが、スズメほどの大きさしかありません。そんな小鳥が激しく頭を振りながら、幹や枝を突いているのです。わたしたちがあれをやったら目を回すどころか、脳に障害が残りそう・・・。

そして小虫をゲットすると、すばやく飛び立って、またべつの樹に移ります。おそろしく敏捷でタフなヤツ。いつも感心しながら見ているのですが、虫にとっては脅威でしょうね。堅牢な部屋のドアが重機で破壊されるようなものなのですから・・・。しかも逃げ場はない。まさに死に神にドアをノックされるようなもので、隣の部屋がやられているのを隣人たちはどんな思いで聞いてるんでしょう?

死に神のノックは冬の間中続きます。無事に春を迎えて成虫になれる確率はすくなそう。でも、それが自然の摂理というもので、コゲラのような鳥がいなかったら、森林は維持できなくなりますものね。そう思うと、あのコンコンコンも大工さんが釘を打つ音に聞こえてくるから不思議です。

今週の野菜とレシピ

里芋と大根の田舎風煮物

今週は里芋大根が入りましたから、それに蒟蒻を加えて田舎風の煮物というのはどうでしょう。蒟蒻をから煎りしたところへ油を落とし、鶏肉、あるいはイカを炒め、乱切りにした大根も加えて軽く炒めます。出しをひたひたに入れ、塩もみしてぬめりを取った里芋も入れて、みりんと醤油で調味。落とし蓋をして煮込みます。出しではなく、水を入れる場合にはオイスターソースを入れるとコクが出ます。お好みで唐辛子をふってどうぞ。

春菊の胡麻酢和え

春菊はさっと湯がいて胡麻酢和えにすると美味。おひたしにする場合も酢を少量たらしたほうがおいしくなります。

ほうれん草と牡蠣のグラタン

ほうれん草は湯がくというより、熱湯をかけてしんなりさせてから皿に敷いて塩、胡椒をふります。そこへ牡蠣を生のまま並べ、生クリームと粉チーズをかけてオーブンに入れるだけ。手抜きみたいですが、ごちゃごちゃと手をかけたグラタンよりおいしく仕上がります。

葱味噌

葱を小口切りにして味噌をからめただけの葱味噌も意外においしく、身体があたたまります。そこに削り節を混ぜるとさらに美味。サラダ菜の上にご飯を取り、葱味噌をのせて包んでみてください。風邪をひいたときは足湯をして、この葱味噌をお湯で割って飲むと夜中にいっぱい汗をかき、翌朝には治ってしまいます。

ついでに足湯をするときのコツも話しておかなくちゃ・・・。用意するのは湯を張った盥と、熱湯の入ったやかん。すこしずつやかんの湯を足しながら、椅子に腰掛けてゆっくり足をあたためます。二十分も経つと足が茹で蛸のように赤くなっているはず。でも、それで終わりにすると、時間が経てば冷めてしまいます。あまり気持ちはよくないのですが、かならず最後に一分間、冷水に足を浸けること。そうするとひと晩中ぽかぽかが続きます。そして葱味噌を飲んだらすぐに布団に入るのですが、枕元にタオルと着替えを用意しておくのもお忘れなく。葱味噌が苦手なら、野口さんのレモンと蜂蜜のお湯割りもいいですよ。