台風一過

2009年10月第3週

今週の野菜セット

左から

台風18号、みなさんのところはいかがでしたか?

こちらにも心配して電話を下さる方があり、お見舞いの言葉をいただきましたが、各地の被害にくらべると申しわけないぐらい、何事もなく過ごすことができました。伊勢湾台風の再来と聞いていたので、台風が来る前は大わらわだったんですけどね。

夕立程度の風と雨。夕立とちがっていたのは、雨のほうが先に降り、風が後から吹いた点ですが、どちらも雷雨よりも時間が長かった。その程度です。わが家の北側の斜面では古木が倒れましたが、ふつうに倒れたらわが家を直撃するはずが、うまい具合に横倒しになってくれました。神のご加護?というぐらい、ふつうでは考えられない倒れかたです。心配されたビニールハウスも無事。ありがたいことだと思います。

それにしても台風一過の空のうつくしかったこと。あれだけ澄みきった青空は、田舎に住んでいても滅多と拝めるものではありません。嵐というのは自然界の大掃除だと、あらためて思ったしだいです。

冒頭に、みなさんのところは、などと書きましたが、じつはあまり心配はしていなかったのです。益子GEFの会員のみなさんは、台風だけでなく地震、大雪、竜巻などに見舞われても、間一髪のところで被害を免れていらっしゃるからで、それを「野菜のおかげ」とおっしゃってくださる方もいますが、そうではなく、やはり本人の力というか、心のありようだと思うからです。

だからなにがあっても心配しない。農家も同様で、台風18号が長野県を直撃したにもかかわらず、佐相さんのところはりんごもぶどうも無事でした。先週から今週にかけて、りんごと巨峰を送ってもらっているので、ほんとうは気が気ではなかったんですけどね。長野県のりんご農家の惨状が報じられていましたが、明暗を分けるのは地理的な問題だけではないような気がします。

土地柄よりも人柄が大事。というわけで、こちらも無用な心配はしませんので、みなさんのほうも今後はどうかご心配なく。心安らかに大掃除を迎え、見送ってくださいね。

思えば、わたしたちも日々の掃除で、目には見えない生きものをたくさん殺しているにちがいありません。お風呂に入って石鹸を使えば、身体中のバクテリアを殺すことになるんですし・・・。わたしたちは目には見えないものに対しては無関心。それが有害であろうとなかろうと、おそろしく冷淡です。

怪我をした犬猫を見れば保護したくなる人も、道ばたに脚をもがれた虫が転がっているのは気にならない。そういう感覚が自然の保護、絶滅危惧種の保存などにも持ちこまれているみたいです。たとえば佐渡に放鳥されたトキが希少種のカエルを捕食するといった、逆に生態系を攪乱するような結果を生み出したりするんですね。野生のトキが姿を消して半世紀も経つと、生態系は様変わりしていますから、かつてトキが生息していたからといって、それを持ちこむことは許されなくなっているのです。それを敢えてやろうとするなら、人口を減らさなくてはなりません。

人がいなくなれば自然は勝手に再生します。チェルノブイリの原発事故で広大な無人地帯ができたところが、今、野生の王国と化しているそうです。高濃度の放射能が残留していても、人間にくらべたらたいした害ではないということでしょうか。おなじく朝鮮半島の38度線。その無人の軍事境界線の周辺も、今や野生動物の宝庫ですから、悪評高い将軍様もその伝でゆくと、自然保護にもっとも熱心な指導者ということになりそうです。

そもそも、最近よく耳にする自然との共生とはどういうことなのか。里山の保護?里山というのはもともと人の手で、人に役立つように作られた林ですから、自然ではありません。田圃といっしょで、あれは文化なんです。放置され、自然にもどりかけている里山をふたたび人の手に取りもどそうというのですから、正確には文化の伝承というべきでしょう。

人が自然というとき、イメージとしてあるのは、その人が子供のときに見知った風景で、本来の自然とはかけ離れています。里山を自然と勘違いするのもそのためです。では、自然と共生するとはどういうことなのか。それは疑似自然を創出することなどでなく、自然がどう変化しようと、それを受け入れてゆくということではないでしょうか。

温暖化もゲリラ豪雨も頻発する災害も、すべて自然の営みです。それに抗ったところでどうなるものではない。今回の台風が上陸する前夜、アラレちゃんがニュースを見てしみじみといいました。いくら科学が発達した、ハイテクだといったって、河川が増水するといったら、人力で土嚢を積むしかないんだよね。昔とちっとも変わっていない。どこが進歩したんだか・・・。

そう、自然の前では人間なんて無力なんです。だからなにもかも、受け入れて共生するしかない。風景が変わってゆくのも今にはじまったことじゃなく、千年も前から「昔はよかった」といいながら、人は生きてきたんです。自然を再生しようなどというのは、自然など科学力でいかようにも変えられる、といった発想とおなじぐらい傲慢な勘違い。ほんとうに自然を再生しようと思ったら、わたしたちが消えるしかないのですからね。

自然界の大掃除は天災だけではありません。病気の形をとることもあります。どんなおぞましいものであれ、それと共生するという心構えがあれば、わたしたちは生き延びられる。犠牲は払わなければならないかわり、全滅は避けられる。それが自然との共生という言葉のほんとうの意味なのではないでしょうか。

今週の野菜とレシピ

今週は青山さんの牛蒡ニンジンが入ります。きんぴらにもかき揚げにも、はたまたサラダにするにも、この両者は名コンビです。ニンジンの葉も香草代わりにご利用くださいね。

馬田さんの椎茸も出てきました。馬田さんの住まいは、絹織物で有名な結城です。そのシルクプロテインを菌床に使い、マイナスイオンを発生させながら栽培しているので、椎茸の肌理が細かく、香りも原木栽培に負けないのです。今が旬の牡蠣をフライにするとき、半割にした椎茸にも衣をつけて揚げてみませんか。すだちを絞って、塩をふりながら食べると絶品。うちでは主役の牡蠣よりもこちらのほうが人気があるぐらいです。

地物のじゃが芋はこれが最後。旭川の横畠さんのものが入荷するまで、しばらくお待ちください。

白菜の間引き煮びたし

白菜の間引きは煮びたしがおすすめ。ざくざく包丁を入れた白菜を、濃いめにとった出しで煮ます。すぐにやわらかくなりますから、火を通しすぎないのがコツ。また、醤油よりも、酒と塩だけで調味したほうが白菜の甘みが生きます。残った煮汁でうどんを煮てもおいしいですよ。

白菜の間引き煮びたし

白菜の間引き煮びたし。