今年もマムシが出てきたよ

2009年4月第5週

今週の野菜セット

左から

初夏の陽気とはうって変わって、先週は肌寒い日が続きました。週末には冷たい雨。おかげで水不足は解消されそうですが、田植えは例年より遅くなるかもしれません。

田圃にはしかし、もう水が張られています。いたるところが湖沼に変身。お天気のいい日には、水面に山々の新緑が映り、そこに山桜など混じっていた日にゃあ、それはもう絶景です。至福のときでもありまして、実際に山の木々を目にするより、水面で倒立している姿のほうがはるかにきれいで、白日夢のような光景が広がっています。

田圃に水が入ると、待ってましたとばかりにカエルのラブコールもはじまります。先週は寒さのせいか、合唱もひかえめでしたが、今週は昼間からにぎやかに鳴き交わしています。夜ともなれば、家の中まで聞こえてくるぐらい。田舎の夜って、けっこう騒々しいものなんだねえ、と都会から遊びに来る友人たちが感心するぐらいです。

カエルがにぎやかになってくると、ヘビも活動を開始しますが、その第一号に遭遇しました。朝の山歩きからもどって来て、わが家の敷地に入ったところで、危うく踏みそうになりました。尻尾ぐらいは踏んでしまったかもしれません。よく見るとマムシだったのでギョッとしましたが、これが真夏なら、すぐに鎌首を持ち上げてこちらをにらみつけるところでしょうが、上目使いでこちらを見ながらのろのろと移動しただけ。まだ寝起きだったんですね。

それに顔見知りでもありました。ミョウガ畑周辺を住処にしているマムシです。道ばたに出てきたのは、日光浴のため。朝日でコンクリートがぬくぬくして気持ちがよかったんでしょう。

十年ぐらい前、十センチにも満たなかったのが、ずいぶん大きくなっていました。ミョウガ畑の草をむしっていたとき、草を抜いた拍子に跳ね飛ばしてしまったのがそれで、小さな鎌首を持ち上げてプンプン怒っていたのです。笑ってしまいそうになりましたが、よく見たら背中の模様がマムシだった。平身低頭、謝ったという経緯があります。

五十センチぐらいになっていましたから、マムシにしては大ぶりです。全身をまじまじ見るのはひさしぶりのことですから、立派になったなあ、と感慨もひとしおでした。畑の周辺にはこのマムシのほか、わかっているだけで青大将の若いのが一匹、それにヤマカガシがいます。青大将は暢気な質なのか、毎夏一度や二度は目にしているので、成長の過程がよくわかるのですが、ヤマカガシなど、しばらく見ないうちに大蛇と化していましたからね。

青大将は人目にふれても、キャーといわれるぐらいで問題はないのでしょうが、マムシやヤマカガシのように猛毒を持つヘビは、人に出会えば殺されかねない。だから慎重に行動するようになっているんでしょう。都会には軒先からぶらんと垂れ下がって「バア」などと挨拶してくれるヘビもいるそうですが、田舎のヘビはみんなシャイ。顔なじみになっても、なかなか「バア」なんてお茶目なことはしてくれません。

挨拶こそありませんが、このヤマカガシはわたしのボデイガードみたいな存在で、わたし自身の前には滅多と姿を見せませんが、わが家にあやしい人物が出入りしはじめると、その前に立ちはだかるみたいなんです。ひと癖ありそうな車屋さんも、農家の見習いという人も、お宅にヤマカガシがいますね、といった人はかならず疎遠になってゆく・・・。ヤマカガシに出会ったか出会わないかで、大まかな人物評ができるんですから、便利というか、ありがたいことだと思っています。

さて、立派になったマムシのマムちゃん。そんなものがいて、ミョウガの収穫なんかできるんですか、といわれそうですが、それがなんの問題もないのです。

収穫がはじまるころにはミョウガの葉が密生していますから、根元になにがが潜んでいるのかわからない。だから声をかけて入ります。自分の畑であると同時に、他人の家でもあるわけですから、挨拶はきちんとしなくっちゃ・・・。たまに忘れることもあって、マムちゃんの尻尾らしきものがすうっと消えることがありますが、むこうのほうでも、自分の住処であると同時に他人の畑であることを、ちゃんと認識しているようなのです。

マムシ=毒蛇=危険という短絡的な図式が成り立つのは、無知という素地があるからで、さらにそんな図式に則ってマムシを見つけたら殺す、などというのは無恥以外のなにものでもない。愚かなことだと思いませんか。

人間=アホ=危険という図式は、たぶん多くの生きものが思い描いていることでしょうが、スズメバチなんか、その筆頭に上げられるかもしれません。スズメバチの巣を撤去する専門業者までいるぐらいですからね。でも、山の中からスズメバチがいなくなると、アブが大量発生する。スズメバチが人を刺すのはアクシデントですが、アブは確信犯。吸血が目的なんです。痛いは、うっとうしいは、いつまでも痒いはというのがアブですから、アブの群れとスズメバチの群れがあったら、わたしは迷うことなくスズメバチのほうに入って行くでしょう。

わが家のいちじくや柑橘類を虫害から守ってくれているのもスズメバチ。野菜はアシナガバチが守ってくれていますしね。マムちゃんもきっとなんらかの

方法でミョウガを守っているんでしょう。みんな、ひと夏の短い恋みたいな関係だけど、忘れずに翌年も出てきてくれる。それが人類の気まぐれな恋とはちがうところなんですよ。

今週の野菜とレシピ

今週はタケノコが入りますが、先週お送りした方には天然ワカメが入ります。今年はタケノコの出がわるいようで、例年の半分ぐらいしか採れないそうです。

タケノコが入った方は、添付のヌカ、鷹の爪といっしょに湯がいてください。竹串がすっと通るぐらいになったら火から下ろし、そのまま冷まします。冷めたらきれいな水に移してください。

ワカメは水でもどすと倍増しますから、それを計算の上、ご使用くださいね。

人気があるのが、春雨とワカメの酢の物。緑豆春雨30グラムを熱湯でもどし、適当に包丁を入れておきます。もどしたワカメも同様に・・・。卵も薄焼きにして、細切りにしておきます。卵2個分ぐらいはほしいですね。酢:1、醤油:3の割合でドレッシングを作り、ラー油少々を加えます。そこにワカメを入れて、十分に味をなじませてから春雨を入れ、最後にたっぷりの錦糸卵を加えます。卵が入るので酸味がマイルドになるせいか、酢の物が苦手という人にも受けています。

山うどはほとんど捨てるところがありません。てんぷらもきんぴらも皮は剥かずに調理してくださいね。

しめじもてんぷらにしてみましょうか。これは天つゆに浸すより、塩とレモンで食べてみてください。バターやオリーブ油で炒める場合も、レモン汁を少量たらすとグーンと味と香りがよくなりますよ。

今期、最後のレモンです。レモンは丸のままだと日持ちしますが、半分になるとラップにくるんでもすぐに傷んでしまいます。使いきれなかった分は、果汁にして小瓶で保存。ついでに皮もおろして冷凍しておくと、ドレッシングに少量加えたり、魚料理の風味づけに利用できます。

今週、青菜はアートグリーンだけになってしまいましたが、天候がよければ来週あたり、好子さんの春キャベツが出てくるかもしれません。大根も来週には大きくなっていると思います。