桜の季節

2009年3月第4週

今週の野菜セット

左から

春の到来。今年は例年よりだいぶ早いみたいです。

草むしりをしようと畑に出たら、もうツクシが出ていました。えっ、まだ三月なのに?ツクシというのは、もう出てるかな、もうすこしかな、とこちらの期待を煽りながら、ぽつぽつと顔を出すというテクニックの持ち主でした。

それがもう、あっちでもこっちでも伸びているのですから、あらまあ、いつからそんな安売りするようになっちゃったの?といった感じ。慌ててカゴを取りにもどったしだいです。

この調子では、タケノコが出てくるのも例年より早くなりそうです。待ち遠しかった春の幸ではありますが、すこしはじらしてもらわないと、値打ちが半減してしまいそう・・・。待ち望んでいた季節にそんなことをいったら、罰があたるかもしれませんけどね。

桜の開花も早まりそうですが、このまま温暖化が進行してゆくと遠い将来、南から北上してくる桜前線が、逆に北から南下するようになってしまうんだそうです。

どうしてそんなことが起こるのかというと、桜の花には冬の寒さも必要なのだそうで、寒さにいじめられないと気温が高くなっても開花できない。そういうシステムなので、だんだん冬があたたかくなってくると、桜は葉ばかり茂らせるようになるというわけです。そういえば熱帯地方に桜はありませんものね。絶滅する地方も出てくるかもしれません。

いつか、歴史の教科書に「桜が国花であった時代」なんて記述されるようになったりして・・・。桜が国花であった時代、人々は経済活動の名のもとに、過剰にモノを作りすぎ、その一方でおびただしい動植物を絶滅させてきました。空気や土壌がここまで汚染されたのも、その時代です。その時代の人々はわれわれの倍ぐらい長命でしたが・・・などと、教師が子供たちに語らねばならないのだとしたら、桜は美の象徴から愚の象徴へと転落すること必定です。

日本人にこれだけ愛されている花が、愚かさや悔恨の象徴になるなんて、考えただけでもおそろしい。散り際のいさぎよさから、かつては武士道に持ち上げられ、軍国主義にも利用された過去を持ちながら、それでも桜そのものが貶められることがなかったのは、そんなことには関係なく、毎年みごとな花を咲かせ続けることができたからでしょう。でも、その花がなくなってしまったら、なんといわれようと抗弁のしようがありません。

桜に汚名を着せないためにも、桜を国花にしていられる幸運な時代の人々が負の遺産をすこしでも減らす努力をしなくては・・・。それは個

人がエコバッグやマイ箸を持ったぐらいでなんとかなるというようなものではなく、地域単位、国単位で動かないことにはどうにもならないんでしょうけどね。

東京では今週末あたり、桜が満開になりそう。先週末、靖国神社内の桜がほころびはじめたそうです。このあたりはまだまだですが、今は辛夷(こぶし)が花盛り。足元では水仙やムスカリ、クロッカスが咲きこぼれています。

毎年、あたりまえのように芽を出し、花をつける植物たちの営みも、じつは微妙なバランスのうえに成り立っている。そのシステムがどういうものか、うかがい知ることはできなくても、庭先に顔をのぞかせた花を見ると、その可憐さ、律儀さについ「ありがとう」が口をついて出るものです。

鳥の声もそう。春もたけなわになると、早朝からキジが鳴き、コジュケイのチョットコイ、チョットコイという声もにぎやかになってきます。かれらもまた、毎年あたりまえのように里に下りてきて、あたりまえのように歌っているようでいて、やはり綱渡りをしているにちがいありません。

そんな綱から足を踏み外し、落ちこぼれてしまったものが、人里に出て害獣呼ばわりされるイノシシやクマになるのかもしれません。綱は年々痩せてゆくばかり。そのうちに大型動物どころか、小鳥すら渡り果せることができないほど、か細い糸のようになってしまうかもしれません。

そんな世界には人も住めない。桜が国花であった時代が教科書に載る心配など、じつは不要で、桜がこの国から消えるような事態になれば、人も消えてしまっているでしょう。だから桜が汚名を被る心配もない。めでたし、めでたし(?)なのでした。

わたしたちがあたりまえと思っていることが、あたりまえに来て、あたりまえに去ってゆく。そんなあたりまえのことが、わたしたちの生をも支えているのだとしたら、わたしたちが誇るべきことは非凡なこと、ずば抜けたことではなく、平々凡々。あたりまえのことがあたりまえにできるという一点にかかってきそうです。世間の常識などには左右されない、自然界のあたりまえに従って生きるというのは、簡単そうでむずかしいのかもしれませんけど・・・。

今週の野菜とレシピ

今週は青山さんのカブが入ります。カブは厚めに皮を剥いて、スライスして塩をあて、レモンスライスと合わせます。これに醤油をかければ漬け物風、オリーブ油をたらせばサラダになります。皮のほうは細切りにして、葉っぱといっしょにスープや味噌汁にしてくださいね。

あぶら菜がこの時期、いちばんおいしく感じられるのは、身体がこういうものを求めているからでしょう。冬の間はどうしても、食生活が高カロリーなものに傾きがち。そこで春になって、デトックスが必要になるのです。フキノトウや野草同様、あぶら菜のほろ苦さが体内に蓄積した余分なものを排泄してくれます。おひたし、油炒め、おつゆの実にどうぞ。

小松菜はまだ小さめなので、たまにはこれをサラダにしてみるというのはどうでしょう。ちりめんじゃこをカリカリになるまで油炒めして、油もいっしょに小松菜にかけ、醤油と一味唐辛子少々で調味。サラダというより、半生のおひたしみたいな感じで、あつあつご飯によく合います。

椎茸が入る予定でしたが、先週のあたたかさで生育しすぎてしまいました。ついこの間まで、なかなか大きくなれなかったのが、ちょっと目を離すと育ちすぎる季節になったんですね。代わりにしめじが入ります。バターかオリーブ油で炒めて、塩、胡椒。わが家では醤油も少々たらしています。これもレモンを絞ると格段においしくなりますよ。

今年最後の牛蒡ですが、この時期になると煮物やきんぴらよりも、スナック感覚で食べたくなります。牛蒡は皮が取れないよう、布巾などでやさしく汚れを取り除き、7~8センチに切り、それをさらに縦に切って細長くします。マッチ棒ではちょっと細すぎ、割り箸では太すぎるというぐらい。そうして切りそろえたものを、なにもつけずに油で揚げます。すこし冷ましてから、もう一度高温でざっと揚げ、ぱらぱらと塩をふると牛蒡せんべい。子供のおやつはもちろん、ビールのつまみにも好評ですよ。