ヒヨドリの食害

2009年2月第2週

今週の野菜セット

左から

先週、今年はスズメもヒヨドリも餌が足りているのか、庭先のパンや果物の売れ行きがわるい、と書いたところ、好子さんから反論がありました。畑は例年になくヒヨドリが多く、食害がひどいというのです。

ヒヨドリもムクドリも、今年は平地に集中しているらしく、もしかしたら山間部のスズメまでそっちのほうに移動しているのかもしれません。露地の青菜類は見る影もないありさまで、今週予定していたター菜も、芯を残してきれいに食べつくされてしまいました。半月前なら、なんとかなったかもしれないんだけどね、と好子さん。

ター菜は寒さに強いので、春先まで放置しておいても傷むことがありません。そんなわけで、青菜が乏しくなったときのために残しておくつもりだったのですが、先を越されてしまいました。今はほうれん草と小松菜がやられているとか。ネットを張っても、かならず一羽ぐらい頭のいいのがいて、出入り口を作ってしまうといいますから、お手上げなんだそうです。とくにほうれん草はまだ小さいので、生育する前に消滅しかねません。

山間部はイノシシに譲り、野鳥は平地に移ったのかもしれませんが、この食料争奪戦、春まで続きそうです。

春になれば虫が出てきて、夏には虫害が最高潮に達します。が、虫というのは不思議な生きもので、出来のわるいものしか口にしないことになっているのです。つまり自然界の掃除屋みたいなもので、肥料バランスのわるいもの、化学物質が混入したもの、つまり動物が口にするのにふさわしくない、不健康な植物に集中する傾向があります。

土中に化学肥料がすこしでも残っていたり、窒素分が多すぎたりするとアブラムシの洗礼を受ける、というのがその一例。化学肥料は植物を大きくするのに効果的ですが、それが栄養になっているわけではありません。たとえばラーメンみたいに化学調味料の入ったものを食べると、後になって妙に喉がかわくでしょ?あれって、体内に入った化学物質を薄め、早く排泄してしまおうという自浄作用なんです。おなじことが植物の体内でも起こるわけで、やたらと土中の水を吸い上げるから短期間で大きくなる。でも、所詮は水ぶくれ。栄養もなければ、体力も抵抗力もありません。

そういう植物はストレスにも弱く、虫がつかなければみずから病気になって消滅するか、自分はダメだったけど、次の世代はうまいものを食い、のびのび育ってほしいといわんばかりに、さっさと花をつけ、種を残して枯れてゆく・・・。化学の力でまともな生命体など育つわけがないのです。

世間のイメージとは逆に、無農薬野菜ほど強いものはありません。健康体ですから、病害虫に強いだけでなく、気温の変動、多雨や旱魃にも耐えられるようになる。しかし、動物の食害だけはどうすることもできないんですね。虫とちがって、かれらはおいしいもの、バランスのとれたもの、食べても害のないものに集中するのですから・・・。ここが頭の痛いところです。

有機栽培というのは手がかかる上、鳥獣対策まで金がかかるとなると、ますます担い手がなくなってしまいそうですが、朗報がないわけではありません。このところ化学肥料が値上がりし、ものによっては倍ちかくなっているので、有機肥料に転換する農家が増えているというのです。これはバイオ燃料用に使われる化学肥料が急増したためですが、災い転じて福をなす。この動きが定着してくれるといいのですが・・・。。

そもそも化学肥料というのは、製造段階から環境破壊を引き起こすという厄介な代物でした。悪名高い水俣病の元凶も「日本窒素」という化学肥料工場です。当時は食糧の増産が国策となっており、「日本窒素」は民間の会社ではありましたが、国のお墨付き。会社のマークが日の丸だったことも、ただの肥料屋ではなかったことを証明しています。

だからあれだけ水銀を垂れ流し、人と海を殺しても、だらだらと病気の認定を遅らせながら操業が続けられたのだと思います。国は農業のため、一時的に漁業を捨て、一部の人も捨てたのですが、それだけの犠牲を払って作られた化学肥料が、今度は国土を疲弊させ、国民の健康にも及ぶようになったというわけで、保険制度の土台が揺るぎはじめて、はじめて事の深刻さに気づくというお粗末な政策なのでした。

余談になりますが、オウム真理教の教祖だった麻原彰晃、本名・松本智津夫も水俣病の犠牲者のひとりなんですよ。彼の出身地は八代。水俣の対岸なのですが、少数ながら認定患者を出しています。認定されなかった松本ちづおのような人も多かったとみえ、当時は盲学校が満杯状態だったといいます。症状の比較的軽い人は失明するか、極度に視力が落ちたんですね。

蛇蝎のごとき嫌われ者も、化学肥料が生み出した副産物だったのかもしれません。国家によって切り捨てられた弱者のひとりだったわけですが、それを理由に国家転覆のテロに走ったという自己弁護というか、見苦しいいいわけはしていません。国家のテロと個人のテロでは、どちらが重罪なのかわかりませんが、恥も外聞もない正当化をしないという点で、元教祖のほうが案外モラリストだったのかもしれませんね。

今週の野菜とレシピ

冒頭でお話したように、ター菜が出荷できなくなりました。里芋も寒さで傷みが出ているらしく、出荷不能。何度も霜にあたると、芋の中が赤くなり、火を通してもゴリゴリした食感になってしまうのです。申しわけありませんが、廃棄処分になってしまいました。

青ものは小松菜春菊あぶら菜の3種。小松菜はヒヨドリにやられる前にせっせと食べてしまいましょうね。

かぶはスライスして塩でもみ、レモンスライスといっしょにオリーブ油少々をたらしてどうぞ。かぶの皮は繊維が気にならないよう、サイコロに切って、玉葱、じゃが芋といっしょにスープにすると無駄になりません。仕上がりに葉っぱのほうもきざんで浮かせてくださいね。

らっきょうはそのまま味噌をつけて食べますが、小口切りにして薬味にもできます。麻婆豆腐など、葱のかわりにこれを使うと、香りがよくておいしいですよ。

牛蒡はていねいに洗ってひげ根を取り、3~4センチに切って煮ておきます。皮は剥かないでくださいね。牛蒡というのは皮を取ってしまったら、ほとんどなにも残らない、ただの繊維になってしまうのです。やわらかく煮ふくめた牛蒡の汁気を切り、小麦粉、溶き卵、パン粉の順に衣をつけ、フライにします。ソースは梅干しの果肉を叩き、果肉と同量の蜂蜜と醤油少々を加えて混ぜたもの。子供からお年寄りまで、人気のあるカツレツです。