新入社員のこと
2009年12月第1週

左から
- ゴボウ
- 日本ほうれん草
- ルッコラ
- シイタケ
- 小松菜
- 京にんじん
- アブラナ
- ダイコン
早いものでもう師走。毎年、暮れになるとおなじようなことをいってますが、ほんと、あっという間の一年でしたね。
そして不思議なことに、今月に入ったとたん、みんな気ぜわしくなってしまいます。いったいなにが起こっているというんでしょう。暦が変わるというのはそんなにたいへんなことだったんだ、と再認識する時期でもあります。
ここはひとつ、肩の力を抜いて行きましょうね。あれも、これもと山積みになっていることも、ひとつずつかたづけて行けばなんとかなるのですから。
肩の力を抜いたついでに、この事務局の新入社員のことでもお話ししましょうか。先月、ぴちぴちギャルが入社してきたのです。それも面接を受けるでもなく、履歴書はもちろんのこと、紹介状もなしに・・・。
子猫なんですけどね。慈善食堂に出入りしている野良猫の子供なんですが、コジュケイとわたしたちが呼んでいるメス猫がなかなか捕まらない。触ることができれば避妊手術を受けさせることもできるのですが、それができないので次々に子供を産むのですが、これが面倒見のわるい母親で、子供を次々に死なせてしまうのです。
コジュケイというのは小型の鶏・チャボよりもさらに小さい鳥で、野山に生息しています。メス猫の大きさといい、色合いといいそっくりだったので、そんなあだ名がついたのですが、「子授鶏」というぐらいですから、鶏以上にヒナの面倒をよく見るのです。山の中でも、ときどきヒナを引き連れた親鳥を見かけますが、一列縦隊のヒナたちが親鳥の歩いたところを正確になぞるものですから、まるで数珠玉でも引きずっているようで、思わず笑ってしまいます。
それなのに、コジュケイと名づけられた猫のほうは、しょっちゅう子猫をほったらかしてうろつきまわり、それを見かねた周囲の猫が面倒を見ていたりするのです。前にお話したダイちゃんなども、オスであるにもかかわらず、よく子守をしていたようです。コジュケイではなく、カッコウと名づけるべきだったかもしれません。
いくら周囲が面倒を見てくれても、母親がそれじゃあ、子猫の大半は大きくなれません。しかし、それも自然の摂理と割り切ることにして、わたしたちは介入しないことにしたのですが、そのうちの一匹がここに住みついて命拾いをしたのが半年前。すぐにまたコジュケイのお腹が膨らみだして、ふたたびぺったんこになったのですが、そのうちの二匹がなんとか生き長らえることができたようで、それがある日突然、リクルートしてきたというわけです。母親といっしょにいたのでは、お先真っ暗と子供ながらに判断したんでしょうか。
それにしてもびっくりでした。野良猫の子供というのは、ふつうは人になつかないものです。とくに親猫が人間を警戒していると、一生なつかないこともあるぐらいで、アラレちゃんのところにいる野良猫ファミリーも、親猫はすっかり家族の一員になっているのに、元子猫たちは未だに指一本触れることができないそうです。
ところが今回の二匹は、はじめから人を怖がる気配を見せないのです。ここで生き延びると決心したせいか、初日から喉をごろごろ鳴らすというサービス精神で、野菜の箱詰めがはじまると、二匹してそれを見守ります。邪魔になるときもあるのですが、アラレちゃんがいうには、ただの居候じゃ申しわけないと思ってるんじゃない?仕事をおぼえて、大きくなったら働こうと思っているのかもしれない・・・。
ほんとにそうだったらいいんですけどね。野菜の箱詰めがはじまると、それまで寝ていたのがむっくり起きあがって、作業台の上に来ますから、もしかしたら半年後にはあの子たちに仕事を任せて、わたしたちは左うちわ。なかなか行けない旅行にも出かけられるかもしれない、なんて話し合っているのですが、なにせ猫ですからね、重いものは運べない。世の中、そううまくはできていないみたいです。
あ、それから面倒見のわるい母親のもとを離れ、人間との共存を選んだお兄ちゃんですが、これが弟と妹の面倒をよく見てくれるんです。模様から判断して、父親がちがうんですけどね。ひと晩中、子猫たちの相手をして疲れているのか、朝、わたしたちが出勤すると、いつも死んだように眠っています。チビたちの研修中も、このときとばかり眠っていて、こちらのほうは従業員ではなく、保父さんとして身を立てようとしているみたい。
このお兄ちゃんのやさしさと寛容さは感動もので、ご飯もチビたちに譲って、自分は後から残りものを食べるといった具合。でも、ダイちゃんがいっしょのときは、自分が先に食べるんですよ。この一帯の猫たちには、弱者優先の精神が行き渡っていて、全員で「子育て支援」をしているようです。人間の世界もこうだといいんですけどね。
今週の野菜とレシピ
今週はニンジンとゴボウが入りました。色のきれいな京ニンジン。この独特の香りが苦手という向きもあるようですが、西洋ニンジンの生育が遅れているため、年内はこちらで我慢してください。
ぎざぎざの葉っぱがあぶら菜です。これは塩ひとつまみを入れてさっと湯がき、擦り胡麻+醤油+マヨネーズで調味。おひたしというか、サラダというか濃厚な味わいが売り。
ルッコラは生のまま、オリーブ油といっしょにあつあつのパスタに入れ、塩、胡椒してみてください。さっぱりしているので、脂っこい料理のつけ合わせにもなります。
ニンジンとゴボウのひらひら揚げ
ニンジン、ゴボウのどちらも皮を傷つけないようにやさしく洗い、ピーラーで剥いてゆきます。このリボンのようになったものに、天ぷらの衣をつけて揚げてください。ぱらぱらと塩をふって、どうぞ。かりっとした食感で、ニンジンやゴボウが苦手という子供にも人気があります。
大根ステーキ
ぶり大根、ふろふき大根、おでんと大根の料理法はさまざまですが、少人数の家庭では煮物をもてあますことがあります。かといって、少量ではおいしい煮物はできませんしね。そこで大根ステーキというのはどうでしょう。大根は厚めに皮を剥いて、1センチぐらいの厚みで輪切り。面取りはしてもしなくてもけっこうです。フライパンに油を敷いて大根を並べ、こんがり焼き色がついたところで裏返し、酒少々と水カップ1杯を入れ、煮たってきたら弱火にして蓋をします。大根に箸がすっと通るようになったら、醤油とオイスターソース少々で調味。お好みで唐辛子をふってください。
煮物にくらべたら塩分はかなり控えめですが、コクがあるのでおいしく、なにより大根の甘みがよくわかります。あつあつを食べるのがいちばんですが、冷めた大根をサイコロに切って、鰹節をからめても美味。これはお弁当のおかずになります。煮物に飽きたという方も作ってみてくださいね。