ぼうじぼう

2009年10月第2週

今週の野菜セット

左から

恵みの雨が降りました。おかげで畑が生気を取りもどしたようです。

その雨もタイミングよく週末には止んで、雲間からまん丸いお月さま。このあたりでは十五夜になると、子供たちが藁で編んだ棒で地面を叩きながらやって来る「ぼうじぼう」という伝統的な行事があります。

ぼうじぼうとは藁鉄砲のこと。ヤツガシラの茎を稲藁でくるんで棒状にしてあるのですが、とても精巧にできていて、これはお年寄りの仕事です。豊作祈願、もしくは感謝の意味合いがあったようです。

それを知ってか知らずか、子供たちは口々に、「大麦あたれ小麦あたれ三角畑の蕎麦あたれ」と叫んでいるのですが、実際に耳にすると早口でなにをいっているのかよくわからない。地域内、すべての門口に立つので、どの家も千円札を紙にくるんでおきます。商店などでは子供たちの食事や飲みものも用意しています。

昔は十五夜のお供えをもらって歩いたそうですが、それがお菓子になり、今はお金になっているんですね。和製ハロウィンといった感じですが、小学生にはお年玉に匹敵するお小遣いが配られることになります。本場のハロウィンでも今ごろ、スウィーツがコインに代わっているのかもしれません。

洋の東西を問わず、農耕に携わっている地域ではおなじような行事が根づくようですが、ハロウィンとちがってこちらのぼうじぼ集団は十三夜にもやって来ます。月夜に張り切る子供たち。目的はどうあれ、遠くから子供たちの声が聞こえてくると、それだけで心が弾むから不思議なもんです。

でも、ぼうじぼうを作れるお年寄りがいなくなってしまったら、この行事も廃れてしまうのかもしれません。現に、それが残っている部落もすくなくなってきています。デパートなどにハロウィングッズが並ぶようになった一方、こうした行事が消えてゆくのは寂しいかぎり。というか、本末転倒だと思うんですけどね。

十月に入ると農作業も一段落。まわりの景色も変わってきます。夏の間、はびこっていた草花が消え、夏野菜が一掃されると、庭も畑も急に広々としてくるからです。引っ越しのとき、家財道具が運び出された部屋を見て、わたしの部屋ってこんなに広かったんだ、と再認識するような感じでしょうか。

広々とした庭や畑は気持ちのいいものですが、一抹の寂しさも漂います。その寂しさを補うように、庭先に花の球根を埋めるのもこの時期です。春いちばんに顔を出す水仙やムスカリに思いを馳せながら、冬支度がはじまります。

一方、畑では慈雨を得た冬野菜がいっせいに発芽。小さな芽が列をなしはじめました。農家のようにきれいな直線ではありませんが、生育するにつれ、そういう違和感がなくなって、農家も素人もなくなります。そうなったらこっちのもんですからね。

問題はこちらに向かって進行中の台風18号。上陸しなければいいんですけど・・・。

今週の野菜とレシピ

今週は青山さんがお留守。山が好きな男なので、畑のような開放的なところでも、平地に長くいるとストレスが溜まるみたいです。そんなわけで年に数回、岩手県の安比高原に出かけてしまうのですが、今回はキノコ採りという大義名分があるので大いばり。去年、時期を逃してしまったので、今年はなんとしても野菜セットにキノコを入れる、と張り切っています。そんなわけで、ほんとうはそろそろニンジンやゴボもがほしいところですが、もう一週ご辛抱くださいね。

大根も先週の間引きが大きくなるのに、もうすこし時間がかかります。そこで今週はラデイッシュが入りました。二十日大根とはよくいったもので、種を蒔いてからちょうど三週間で食べごろになります。これはそのまま、塩かマヨネーズをつけてどうぞ。

やわらかい春菊はサラダでどうぞ。春菊とりんごのサラダ、ふかし芋をサイコロに切っても春菊とよく合います。いずれもフレンチドレッシングに醤油を少々をプラスして和えてください。残った茎はお吸い物の青みにするか、さっと湯がいてから油炒めして塩・胡椒。これは肉料理のつけ合わせにおすすめです。葉も茎もさわやかな香りがいっぱいです。

茄子もそろそろ今週あたりが最終便。夏から秋にかけて、長い間おつきあいいただきました。もう飽きたという向きもあるでしょうが、別れを惜しんでいるファンも多いはず。お別れは毎年、濃厚な麻婆茄子がわが家では定番になっています。長葱のみじん切り、ニンニク、生姜、挽肉を炒めて醤油とオイスターソース、豆板醤で調味。素揚げにした茄子を加えて、あつあつをご飯にのせて・・・。お湯でもどした春雨をそこに加えてもおいしいですよ。

小松菜は味噌汁、または胡麻和えで・・・。さつま芋はステイックにしてじっくりと揚げ、次に高温でさっと二度揚げすると表面カリカリ、中ホクホクのスナックになります。さっと塩をふるだけ。ベタベタした大学芋より手間もかからず、素材の甘みがよくわかります。

玉葱も今回で終わりになります。北海道の橋本さんのものが届くまで、しばらくお待ちください。