自然はそんなにヤワじゃない

2009年10月第4週

今週の野菜セット

左から

山々の紅葉がはじまりました。

裏山でも、ウルシの赤がひときわ目立ちます。昼間でも薄暗い林の中に、ぽっと灯火がついたよう。枝からぶら下がる明かりもあって、これはカラスウリ。手が届くのは持ち帰り、廊下などに下げておきます。カラスウリ一個でおよそ10ワット。三個も下げれば、ほの暗い廊下がほんとうに明るくなったような気がするから不思議です。

これって、省エネになるかもしれない。そこで台所には赤唐辛子の束を下げ、玄関にはショッキングピンクに紅葉した箒草を置いてみました。もっとも電球を取り替えなければなんの意味もないんですけど、それはまだやってない。ムード派の省エネというわけで、これじゃショッピングバッグとマイ箸を持っただけで安心している人たちのこと、笑えませんよね。

だいたい、きれいだといっては庭先を外来種の花でいっぱいにし、おいしいからといって外来種の野菜を作っては食べているわたしたちに、環境保護を口にする資格などないのかもしれません。

自分の家を建てるために林を切り開くのはしかたがないけど、他人がそれをやると環境破壊になる。農業だって自然破壊なのに、それは許され、そこに工業団地やゴミ処理場ができるとなると反対の嵐が起こる。冷暖房完備の家に住み、食べたいものを食べたいだけ食べておきながら、環境保護ってそりゃないだろう、って自然界からブーイングが起こりそうです。

でもね、自然ってそう簡単に破壊されるものではないんです。庭先にも畑にも、雑草と総称される植物がいっぱい生えてくるでしょう。それが自然の復元力。雑草と呼ばれる者たちは、その最前線に立っているんです。その草をむしっている時点で、わたしたちは自然破壊をしていることになるのですが、それが抜いても抜いても次から次と生えてくる。こちらが根負けするぐらいです。

わが家の庭先にも、いつの間にか篠竹が侵入。山の中ですから、そういうものまで出てくるんですね。それが花壇のあちこちに顔を出すものだから、家人が根こそぎ取り除いてほしいという。でも、そう簡単に取り除けるものではないし、これがあなたの好きな自然というものの本来の姿なんだから、邪魔になるところだけ、今まで通り鋏で切っていればいい。母にはそういってます。

近所にいくつかある休耕田も、一年目は草だらけになりますが、二年目にはススキが根を下ろし、それによってセイダカアワダチソウまで駆逐され、やがて一面のススキ野に変身します。そこにコジュケイなど、野鳥が巣を作り、かれらの落とした糞から樹木が育ちはじめます。低木のハギや中高木のヤマナラシ、カバ類であたりがうっそうとしてきますが、十年もするとそれが枯れ、倒木が肥料となってナラ、クヌギの類が育ちはじめるのです。

放っておいても雑木林ができあがる。わが家の庭木でも元気がいいのは、そういう山の木で、わたしが植えた果樹や花樹の後から生えてきたにもかかわらず、それらを圧倒する大きさになっています。そのナラやクヌギも、人手が入らなければ三十年もすると枯れ、最終林へと移行してゆきます。つまりブナが登場し、あたりを制するようになる。そうなったら千年でも二千年でも、その林は生き続けるのです。

山のあちこちに植林されたスギやヒノキも、このまま放置されれば枯れ落ちて肥料となる運命で、やがてそこが雑木林になり、半世紀も経たないうちにブナ林に姿を変えてしまうことになる。自然とはそういうもので、わたしたちにやりたい放題させているように見えますが、本来の姿にもどる機会をいつも窺っていて、ちょっとでも隙があると、したたかに入りこんでくる。頼もしいかぎりです。

しかし森林が回復しても、一度姿を消した動物はもどって来ることができません。シカやイノシシがこれだけ増えても、絶滅した日本オオカミが復活することがないように、クマもまた、このまま数を減らし続けていくとおなじ運命を辿ることになりそうです。王者のいない森。それは攪乱された生態系にほかならず、草食獣の爆発的な増加と滅亡を招き、増えるのはネズミのような小動物のみ、という結果をもたらします。

大型動物が生きられなくなった世界では、人もまた存続できなくなるでしょう。それよりなにより怖いのは、動植物がひとつ姿を消すごとに、新たな生命が生まれてくることで、それが病原菌だったりするんですね。宇宙の総和は一定なので、そうやってバランスを取っているのです。だから熱帯雨林のどこかにいた生物が死滅するたびに、新しい病気が増えることになる。その病原菌を薬で殺せば、それがまた進化する。

それが自然というものの姿です。人間ごときが上から目線で、保護だの共生だのといえた代物ではないのですね。わたしたちはひたすら謙虚になることによってしか、自然界から見放されずにいることができるのかもしれません。

今週の野菜とレシピ

今週予定していた赤キャベツ。結球が遅れているので、来週まで待つことになりました。待望の大根も、まだ小さすぎたようです。

そんなわけで、今週は里芋が入ります。今回はたっぷり1キロ入っていますから、煮っ転がしにも十分。もし残るようでしたら、ネギといっしょに味噌汁にしてはどうでしょう。

このネギは努力の結晶みたいなもので、夏の終わりごろ、いつ行っても青山さんはネギ畑の中に座りこんでいました。なにをやっているのかと思ったら、虫を捕っているのでした。ヨトウムシが筒状のネギの中に入りこんでいたのです。それを根気よく、一匹ずつ取り除く。気の遠くなるような作業ですが、およそ半月がかりでそれをやってのけ、現状まで回復させることができました。そんなネギですから、捨ててしまったら罰があたりそう・・・。枯れた部分や皮も取り置いて、スープを取るときに使っています。

春菊はおひたしか胡麻酢和え。これも残ったら、椎茸といっしょにお吸い物にしてみてください。椎茸と春菊の香りがいいですよ。春菊は火を止める寸前に入れてくださいね。

ルッコラはサラダ向きですが、肉料理のつけあわせにしたり、チーズといっしょに盛り合わせ、ワインの友にするという手もあります。和風にしたければ、油揚げをオーブンでかりかりに焼き、短冊に切った上にルッコラをのせ、醤油で食べる。胡麻の香りがするので、醤油とよく合います。

マヨネーズに細かく刻んだパセリを混ぜ、石づきを取った椎茸のくぼみにそれを入れ、オーブンで焼くと美味。オードブルに最適です。が、あつあつすぎると灼熱のマヨネーズで舌を焼く危険性があるので、ほどよく冷ましてからお召しあがりください。