太陽と金星

2009年5月第3週

今週の野菜セット

左から

五月も中旬になろうというのに、五月晴れの輝きはどこへやら。梅雨寒のような低温が続いています。

タケノコの不作を見ればわかるように、気温の高い日があっても地温の上がりがわるいようです。なぜかというと先月中旬、金星が遠日点側に入ったため、日照の有無とは関係なく地温が上がらなくなっているのです。真夏なみに暑くなっても、地中は冷たいまま。フキの伸びがわるいのも、絹さやの発育が遅れているのも、地球内のことではなく、太陽を中心とする木星と金星という天体の位置関係に由来しているというのですから、どれだけ文明や科学が発達しようと関係なさそう。わたしたちは相も変わらず手をこまねいて、おろおろと歩き回るしかないのですね。

六月には、太陽が北回帰線にくる直前、金星が遠日点に入ってしまうため、とくに作物一般の生育がわるく、病害も発生しやすくなるといいます。入梅時期とも重なるため、農家は苦労しそうです。

そんな状況は七月に入っても続きます。それじゃあ、今年の米はやっぱり不作?いえ、八月中旬には金星が近日点側に移動してしてくるため、一気に地温が上がりやすくなり、状況が一変します。夏野菜の生育がよくなって、稲も急に伸びがよくなるそうです。そのため、窒素肥料が多い田圃では稲が倒れる危険性も・・・。

こういう情報は、農家にとって非常に便利。気象庁などでは絶対に得られない情報です。でもね、便利ではあるのだけど、こういうのを見ていると、逆に無力感にとらわれることがあるんだそうです。だって、天体の動きひとつで、米が取れたり取れなかったりするのですから・・・。農家の経験だとか、読みだとか、技術といったものがみんな剥がれ落ちて、ただのド素人になってしまうというんですね。

でも、二十年や三十年米作りをしただけで、その道のプロだとか名人だとかいわれている人よりも、何十年作っていても毎年が初体験。永遠のド素人ぐらいに思っている農家のほうが、きっと大物。益子GEFはそんなド素人集団でありたいものだと思いました。

そんなド素人がいうのもなんですが、昔から天気は気まぐれ。規則正しく春夏秋冬、季節が巡っているわけでもありません。それでも食うに困らず、なんとかなっているのはお天道さまのおかげ。地球がちゃんと回ってくれているおかげです。

また、どんな変動にさらされてもそれなりに対応できるよう、わたしたちも動植物もプログラミングされています。そこではお節介な人工的介入など不要。それどころか逆に障害になっているぐらいです。品種改良を重ねられた種ほど弱く、融通が利きにくい。ゆっくりと時間をかけた品種改良ですらそうなのですから、エイヤッでDNA操作までされてしまった作物はどうなるのか。

お天道さまや大地に対する感謝も畏怖も忘れたような、経済効率優先品種は栄養物どころか、大地にとっても人体にとっても汚染物質でしかありません。輸入作物にそういうものが混じっていることは、もう常識になっていますが、国内で作られている玉葱の大半が遺伝子組み換えされた品種で、流通している玉葱のほとんどがそれ、なんてことはみんな知らない。こんな仕事をしているわたしでさえ、つい最近まで知らなかったぐらいです。

知らぬ間にクローン牛の乳製品や肉が流通していて、表示義務がないから、ここでも消費者は選ぶことも避けることもできません。食の安全が叫ばれながら、その足元から安全性が攫われてゆく・・・。「食育」に積極的なのがマックだとか大手のパン屋だとか、「害食産業」と呼びたくなるような企業だったりするのですから、お先真っ暗でしょ。

それでもド素人は希望を捨てません。ちっぽけな日本列島の一部が汚染されたぐらいで、地球がどうこうすることはないからです。地球の自浄作用が働けば、悪しき種も駆逐される。というか、そんなものが自然界にのさばることなど、認められるわけがないのです。

わたしたちの身体も分子レベルでは日々、生まれ変わっています。三~四ヶ月もすれば、わたしを構成していたものはなにも残っていないのです。かけらもない。だから、久しぶりに会った人から「お変わりないですねえ」なんていわれても、あなたの知ってるわたしはなにひとつ残っていないのです。

ただ、不満もあります。これだけ毎日毎日、身体中の分子が入れ替わっているのだったら、もうちっときれいな皮膚にするとか、重力に逆らって肉をつけるとか、気を利かしてくれてもいいんじゃないか。ただ馬鹿正直なだけじゃあ、ありがたみも実感できないのですが、自然は不正に手を染めない。やっぱ馬鹿正直なだけみたいです。

今週の野菜とレシピ

今週は主役が好子さんから青山さんに変わって、ブロッコリーフキが入りました。フキは茎と葉に分けて、まず茎のほうを湯がいてください。さっと湯がいてから水にとり、残りの湯で葉っぱのほうを湯がきます。ただし、虫食いや汚れのひどい葉っぱは捨ててくださいね。

茎のほうは皮を剥き、適当な大きさに包丁を入れてから煮てください。濃いめの出しで、高野豆腐といっしょに煮るとおいしいですよ。葉っぱのほうは細かく包丁を入れてから絞っておきます。同量の酒と醤油を煮立て、そこに葉っぱを入れて汁気がなくなるまで煮たら、鰹節をたっぷり入れてください。この葉っぱの佃煮は、ほろ苦さの中に甘さがあって、香りもよくて、クセになる味です。

ブロッコリーは小房に分けて塩茹でしますが、コツは茹ですぎないこと。ぐらぐらっと煮立ってきたら、ひと呼吸おいてザルに取り、歯ごたえが残るようにしてください。あとはご自由に・・・。マヨネーズをつけてもよし、芥子醤油で和えてもよし、グラタンもよし。ニンニクのみじん切りをオリーブ油で炒め、湯がいたブロッコリーをからめ、醤油で調味しても美味でしたよ。

玉葱が今週から地物になりました。天気が良く、気温が上がった日にはスライスオニオンに鰹節をのせ、酢醤油で食べるとおいしそう。初鰹やポークソテーにも、このオニオンスライスはよく合います。これをのせるだけで、素材のイメージが一変するんです。フレンチドレッシング+醤油味でもおいしいですよ。

楽しみにしていた絹さやですが、生育があまりよくありません。足りないところはスナップエンドウで補わせていただきますので、よろしくお願いします。いずれにせよ、スジを取ってから湯がくか炒めるか。あるいは卵とじでお召しあがりください。