春の兆し

2009年3月第1週

今週の野菜セット

左から

先週は雨模様。今週も月曜日を除いて、雨模様になりそうです。花粉症の人には過ごしやすいかもしれません。でも、農作業は遅れ気味で、野菜セットにも影響が出てきそうです。

端境期。春が近づいてくるのはうれしいけれど、冬野菜が次々と姿を消してゆくわりには気温が低く、春野菜の生育が間に合わない。いちばん頭の痛い季節でもあったのです。もちろん、それを見越して策をめぐらせてはあるのですが、なかなか思いどおりにはならないのが、天候に左右されやすい農業のつらいところ。花粉症の人には申しわけないのですが、はやく雨が止んでほしいものです。

でも、ほんのすこしでも晴れ間が広がると、畑の上空は小鳥たちの声でにぎわいます。これまでヒヨドリのギイギイと、スズメのチュンチュンぐらいだったのが、早春にはヒバリが参入してきます。これがまたにぎやかでして、休みなしにさえずりながら飛びまわっているのです。

ピーチクピー、ピーチクピー。これが合唱になるとチュクチュクピーになって、空気の震動につられて畑全体が脈打つような感じになります。ヒバリは身体が小さいうえ、かなり上空を飛びまわるので姿が見えにくい。見えたところで、ちいさな点が高速で舞っているのですから、知らない人が見たら虫ぐらいにしか見えないでしょう。

なにもないところで大地が震えているのですから、畑のどこかでなにものかが春の到来に狂喜。積もり積もった寒気の結晶が、土中ではじけているように錯覚するかもしれません。そのチュクチュクピーを聞いていると、こちらの気分まで高揚してきます。わたしたちの身体の中でも、なにかがはじけているんでしょうね。

このあたりでは、ヒバリがいちばんに春を告げる鳥で、ウグイスが鳴くのはもっと後。ウグイスは春の鳥のようにいわれますが、実際には夏鳥で、炎天下、ホトトギスのトッキョキョカキョクに混じって、ホーホケキョが一日中響きわたっているんですよ。

春の前ぶれは地面にもあらわれます。畑の中はもちろん、庭先から山の中までいたるところ、土の山が突如出現するのです。これはモグラが活発に動きはじめているからで、いってみればトンネル工事の産業廃棄物。この時期になると、日に日に土饅頭の数が増してゆきますから、わが家の地下にはいったいどれぐらい、モグラのファミリーが住みついているんだろう。唖然となるぐらいです。

しかし、生態系というのはうまくしたもので、モグラの動きが活発化すると、上空を舞うトンビの数が増えてきます。トンビの眼というのはよくできていて、上空を舞いながら地上を監視。ズームアップは全自動で、土饅頭の先端がすこしでも動いたり崩れたりすると、急降下して土木作業員を捕まえることができるという優れものです。

急降下してきたトンビって、ものすごく大きいんですよ。ド迫力で、ものすごくカッコいい。そのトンビのどの個体が、昨秋巣立ったピーヨなのかわかりませんけど、どれを見ても「ピーヨ」と声をかけたくなるのは、山鳩がみんなピーちゃんに見え、カラスがどれもキョロちゃんになってしまうのとおなじ現象なんでしょうね。

ピーちゃんもキョロちゃんも、怪我をして飛べなくなっているのを路上でゲット。成鳥になってから放したのですが、どちらからもなんの音沙汰もありませんから、便りのないのはよい便り。元気でいると思うことにしているんですが、カラスも山鳩も、みんな自分の子供みたいに思えてしまうという副作用があり、なかなかこの症状から抜け出すことができません。

話は変わりますが、毎晩、うちの裏手に出てくるイノシシがいて、それがまだ子供なんです。大きさは大型犬ぐらい。うり坊の横縞は消えていますが、毛色がまだ淡く、成獣のようにごわごわしていない。これもうちの子になっちゃうと、心配事やらトラブルが増えそうなので、知らん顔をしていますが、これがかわいいんです。困ったもんですねえ。

今週の野菜とレシピ

ひさびさに野沢さんのニラが入りました。とてもやわらかい、甘いニラです。3センチ前後に切ってからさっと湯がき、鰹節と醤油で和え、胡麻油少々をたらしたナムル風のおひたしがおすすめです。

牛蒡はピーラーを使って、薄いリボン状にすると食べやすくなります。しゃぶしゃぶにこのひらひら牛蒡を入れると、火の通りが早く、胡麻だれともポン酢ともよく合って美味。ころもをつけててんぷらにすると、かりっと仕上がるので、塩をふってスナック感覚で楽しむこともできます。

ピーラーを使っても、どうしても芯の部分が残ってしまいます。これは細かくきざんで、ハンバーグに加えると意外なおいしさ。挽肉と玉葱のふつうのハンバーグに牛蒡が入るだけで、香りがよくなります。和風ハンバーグ。わが家ではフライパンの上で、醤油とオイスターソースをからめ、一味唐辛子をふっていただきます。水もすこし加えるとからめやすくなりますよ。冷めてもおいしいので、お弁当のおかずに最適。

また椎茸が失速しているようなので、大貫さんのしめじを使わせていただきました。しめじはすぐに使わない場合、パックのまま冷蔵庫には入れず、ほぐしてザルに入れ、丸一日ぐらい風にあてると香りがぐーんとよくなります。それを保存袋に入れて冷凍庫へ・・・。キノコというのはどういうわけか、風にあてると香りが増し、冷凍すると味が濃くなる性質があるようです。

来週はエリンギを予定しています。青山さんの後輩が新潟県で栽培しています。これは初登場。わたしたちも楽しみにしています。