へそ曲がりのすすめ

2009年4月第1週

今週の野菜セット

左から

あたたかくなったかと思うと、寒のもどりで雪がちらついたり、天候がころころ変わります。さながら革新派と保守派のせめぎ合い。季節の変わり目は政治闘争に似て、わたしたち庶民にはちょっと迷惑なところがあります。

でも、この春は雨が多いので、花粉や黄砂の飛来がかなり抑えられているのではないでしょうか。そういうことを別にしても、この時期は畑に作物がありません。あってもちいさな苗ばかり。そんなところが強風に見舞われると、貴重な表土が持って行かれる。隣近所にはそれが侵入。どこにも隙間がなさそうなサッシの窓も役には立たず、家中の床がざらざらになるそうです。

今年はそういう心配がないかわり、畑に適度の湿り気があるため、雑草が発芽しやすく、生育も早いといいます。うかうかしていると野菜の苗より大きくなってしまうそうで、農家にとっては忙しい春。もっとも毎年、春というのは忙しいものですが、そこにまた仕事が増えるとすべての手順が遅れることになり、満足な作物が育たなくなってしまうんですね。

この時期には毎年、青山さんが田圃の土手のセリを採ってくれるのですが、そんなわけで今年は余裕がなさそうです。セリを心待ちにしている方もいらっしゃると思いますが、今回はごめんなさい。ご容赦ください。

このあたりも桜がちらほら。週末あたりはあちらこちら、桜の名所が花見で賑わいそうです。でも、花冷え、花曇りという言葉があるぐらいですから、お天気はあまり期待できないかもしれませんけどね。

桜は春を待って開花するので、あたたかさを好むと思われがちですが、じつは冬の寒さがなければ花がつけられず、開花後もあたたかすぎるとすぐに花が散ってしまう。花冷え、花曇りは花の寿命を延ばしてくれるというわけで、けっこう寒さに依存しているところがあったのでした。

これは意外だったというか、考えようによってはショッキングな出来事です。なぜなら常識がくつがえされ、わたしたちの物の見方にも一石が投じられたことですから・・・。すべての物事には二面性があると、頭ではわかっていても、どうしても表の面だけが見えてしまう。たとえば樹木を見ていても、見えている地上部だけが全体で、地中の存在が忘れられるといった具合に、根幹のほうを見落としてしまいがちになるのですね。

目に見える現象だけで判断していたら、世界を半分しか見ていないことになってしまう。いや、半分以下かもしれません。だって、ほんとうに大事なことは常に地中や水面下に隠れているのですから・・・。

先週、このまま温暖化が進行すれば、南から北上していた桜前線が北から南下するようになる、という報告について書きましたが、桜前線のコペルニクス的転換が、そのままこちらの身にふりかかってきたというわけです。

昨年末の金融危機。世界的な大不況も突然起こったわけではなく、数十年前から水面下では、破綻に向かうシナリオができていたといいます。資本主義が成熟期を迎え、下降に向かいはじめると、それまで資本の蓄積にまわされていた余剰金が金融にまわされるようになり、投資が加熱。それがバブルとなり、世界中にバブル経済を引き起こしたあげくに萎むと、今回のようなことになるわけで、かつてはイギリスもおなじ経過をたどって没落したといいますから、米国の断末魔に世界中がふりまわされるのは、まともな経済学者なら予見ができはずなのでした。

この国にはまともな経済学者がいないどころか、小泉時代に米国に倣えで規制緩和しまくって、そのツケを多くの労働者にまわしたインチキ経済学者が、今なおしゃあしゃあとマスコミに登場しているぐらいですからね。ボケてるんです。

また今のような時代、かつてのようなあからさまな言論統制はありませんが、目には見えない形で不都合な情報が隠蔽されています。なにがなんだかわからないうちに、所得の格差が大きくなってたり、若者が右傾化したり、裁判員制度のように、国の一存で個人の生活が変更を余儀なくされるといったことが現出します。

すべての事柄には二面性があるにもかかわらず、わたしたちが得られる情報は一方的なものばかり。意図的に無視されていることもあります。たとえばフランスのシェルブール港を出た日本向けのMOX燃料は、航行中、沿岸の国々から大ブーイングを受け、大きなニュースにもなっているというのに、肝心の日本人はそんなことには無関心。というか、知りません。それが闇にまぎれて入港しても、わたしたちがそれを知ることはないのです。

プルサーマル計画は事実上、破綻しているというのに、この国のどこかにプルトニウムが蓄積されてゆくのは恐ろしいことです。口あたりのいい言葉、耳障りにならないニュースばかりが流れる世界は、否応なくその闇を深めることになる。そして、秘密がかならず露呈するように、闇もまたかならず噴出するときが来るからです。

春に咲く桜を見たら、冬の寒さを思い出す。「善」といわれるものを見たらその内側に潜む「悪」を探し、世間が「悪」を糾弾すれば、見えない「善」に思いを巡らせる。それぐらいの感性を持たないと、わたしたちの未来はわたしたちの望む姿から遠のくばかりかもしれません。へそ曲がりといわれるかもしれませんけど、へそ曲がりにならないことにはこの先、どうなるかわかりませんものね。

今週の野菜とレシピ

先週に引きつづき、かぶラデイッシュが入ります。ラデイッシュは塩をつけて丸かじり、というのが一般的ですが、味噌マヨで食べてみてください。あたたかくなるにつれ、ラデイッシュは辛みが出てきますが、この辛みをマイルドにしてくれるのが味噌マヨ。同量の味噌とマヨネーズを合わせるだけのソースですが、かぶも生のままこれで食べると美味。ラデイッシュの辛みは消えますが、かぶの甘みは増大します。

ネギの白いところを5センチ前後に切って湯がき、味噌マヨで和えてもおいしいですよ。青い部分は薬味にお使いください。

ミックスサラダ菜。これは端境期の苦肉の策で、好子さんのハウスの中に山東菜、京菜、ルッコラなどがあるのですが、単独で出荷できる量ではない。というのでそれを合わせて、サラダ用に一袋にしたしだいです。フレンチドレッシングに醤油を加えたソースで、和風サラダにしてみてください。

ニラが好評です。ニラ玉、チヂミ、おひたし、炒めものなどなど、利用範囲の広い野菜ですが、ニラのなくなる季節に備えてニラ醤油を作っておくという手もあります。ニラはなるべく細かくきざんで広口瓶に入れ、醤油をひたひたになるぐらいまで入れ、胡麻油を加えるだけ。これを冷蔵庫に入れておくと夏バテ防止に重宝します。焼き肉のたれやドレッシング代わりに使いますが、冷や奴にこれをかけるという人、納豆に入れるという人、さまざまです。

じゃが芋は今がいちばんおいしい時期ですが、常温では発芽しやすくなっています。すぐにお使いにならない場合は、冷蔵庫の野菜ボックスに入れてください。北海道産のじゃが芋はこれが最終。新じゃがの登場まで、しばらく姿を消すことになります。

来週は四国の野口さんから、新玉葱、ひと足早い春キャベツが届けられます。

好子さんのキャベツは5月中旬、青山さんのブロッコリーもそのころには出てくる予定です。