極寒の植物たち

2011年1月第2週

今週の野菜セット

左から

正月も十日を過ぎると、かなり日が延びてきた感じがします。日照時間はそれほど変わらないのでしょうが、薄暮の時間帯が長くなって、年末までの釣瓶落とし状態、日が暮れてきたなと思ったら、瞬く間に暗くなってしまう、あの追い立てられるような感じがなくなりました。

そうすると心にもゆとりが出てきます。正月早々、野菜の発送がはじまった割にはのんびりした気分でいられるのも、そういう背景があるからでしょうか。天の人に及ぼす影響って、大きかったんですねえ。ま、人が天に及ぼす影響も大きいんでしょうけど・・・。

正月休みでみんながのんびり暮らしているもんで、太陽も足取りをゆるめ、山の向こうに入ってからもあくびなどしているもんだから、いつまでも明るいのかなあ、などとバカなことを考えながら日暮れどきを楽しんでいます。

でも、朝の寒さには閉口しますね。夕方も寒いことは寒いけど、山の中には昼間、あたためられた空気が上がってくる。風も木々に遮られるので、平地で買い物などして帰ってくると、ほんわか、あたたかく感じられるのです。

そんなあたたかい空気も夜中のうちになくなってしまうので、朝の冷えこみは格別。どこもかしこも凍りついて、畑のように土のやわらかいところでは、表土が二十センチちかくも霜に持ち上げられています。固い地面では、ばりばりと音を立てて霜が靴底に付着する。空気は痛く感じられますから、鼻と口を交互に使って呼吸しないと、胸の内まで痛くなってくるんです。

当然、野菜もコチコチに凍っています。収穫された野菜が凍ると、解凍したとき、べとべとになってしまいますが、生きている野菜はタフで、日が高くなり、気温が上がってくると元通り、青々とした姿になります。根っこが地面と繋がっているって、すごいことなんですね。それどころか、冷凍と解凍を繰り返しているうちに、野菜はどんどん甘みを増して、滋味も豊かになってくる。

ちょっとおおげさかもしれませんが、そんな野菜の姿に「愛」を感じることもしばしば・・・。花のうつくしさを競うでもなく、生き残りに固執するでもなく、人の口に入ることを受け入れているだけでもすごいことなのに、さらに磨きをかけておいしくなろう、栄養を蓄えようとするのですからね。

雑草と十把ひとからげにされている草だってそうですよ。刈られても、引き抜かれても出てくる雑草は、繁茂し繁殖することだけが目的みたいに見えますが、じつは土壌のバランスを整えるという使命を担っています。のみならず、野菜の根っこでは届かない地中から、わざわざかれらのためにミネラルを運び揚げることまでやっている。それを除草剤で処理したのでは、作物を二重に傷つけていることになるのですが、省力化という魅力にはかなわないのでしょうか、ほとんどの農家がこれに頼っているようです。

なかなか認めてはもらえないのですが、人助けもしているんです。庭に出てくる雑草は、土壌によってちがいますが、住む人によっても変わります。住人が変わると、草も微妙に変化する。それはなぜかというと、そこにいる人に不足しているミネラル分を察知して、かれらがそれを補おうとしているから・・・。植物がそれを察知するのか、地中のバクテリアの判断で植物が呼び寄せられるのか、そこらへんはよくわからないのですけどね。

ともあれ、かれらはあたかも人に仕えているかのように振る舞うのです。だから健康のため、遠方から薬草など取り寄せるより、庭先の雑草をお茶にしたほうがよかったりするのです。人の側からすれば、これは無償の愛以外のなにものでもありません。

日々、新しい酸素を製造しながら建材として、食糧として、生活用品として大量消費されている植物は、人にとって第二の大地みたいなもの。それに対する感謝がなければ、人類はただの寄生虫か駄々っ子になってしまいます。まずは母なる大地と植物たちに感謝。新しい一年もそこからはじまります。

今週の野菜とレシピ

鯛とベーコンの鍋with白菜

野菜セットには白菜が入りました。わが家の正月中の鍋といったら、鯛とベーコンの鍋。鯛はおせちに使う尾頭付きの塩焼き。年が明けると半額になっているので、それを利用します。ベーコンはなんだかミスマッチみたいですが、これが入ると入らないでは大ちがい。騙されたと思って入れてみてください。

まず、土鍋の底に食べやすい大きさのベーコンスライスを敷き、ざくざく切った白菜を詰めこむように並べます。白菜がやっと隠れる程度に水を入れ、その上に尾頭付きの鯛をのせたら火にかけます。煮たってきたらアクを掬い、蓋をして弱火で15~20分。鯛とベーコンからいい出しが出ています。塩分も加味されていますが、薄いので途中、塩か醤油を足してください。

またお子さまがいる場合、鯛の骨は凶器になりかねませんので、最初に鯛は皿に引き上げてお母さんが取り分けてください。出しがらみたいなものですから、猫に上げてもいいんですけどね。残ったスープは餅を入れてもうどんを入れても美味で、おじやも絶品です。


ニンジンは種蒔きが遅れたせいで、この期に及んでも小ぶりです。ラデイッシュといっしょに生で囓じってもいいですね。葉っぱのほうはハンバーグに混ぜたり、スープの薬味にご利用ください。