遠くを見る力

2011年9月第1週

今週の野菜セット

左から

雨が降って、また涼しくなりました。この夏は気温の変動がはげしく、ようやく身体が暑さに慣れたと思ったら気温が下がり、秋風のような肌寒さに適応しはじめた途端、また暑くなるといった調子。

今年は残暑が長引くという予想もありますが、アラレちゃんの家ではもう銀木犀が咲きはじめ、庭中に香りが立ちこめているそうです。銀木犀は金木犀より開花が早いとはいえ、九月下旬から十月上旬にかけてがふつう。残暑といっても、朝夕の気温は確実にもう秋で、肌寒いくらいです。

これだけ気温の変動がはげしいと、身体にはかなりストレスがかかっているでしょう。ストレスが多くなると、カルシウム消費量も増えますからね。夜中に脚が攣るようなことがあったら要注意。急遽、それを補給しなければなりません。今は青菜のない季節なので、毎日のようにモロヘイアを食べ、ひじきの炒めものなどを作っていますが、もっと大事なことがあります。

畑にもカルシウムを補給しなくてはならないのです。野菜たちもおなじようにストレスを抱え、カルシウム不足に陥っているからです。貝化石や卵の殻を細かく砕いたものなどを、葉面からも吸収できるよう全体にふりかけます。人間も植物も基本的にはなにも変わらない、おなじ生命体。だから、汗疹ができるような蒸し暑いときには酒や酢といった発酵食品を散布してやるんです。もちろん何百倍にも薄めてですけどね。

身体に異変を感じたら、自分のことはそっちのけで畑に飛んで行くのが農家です。わたしは自分のことにかまけながら、ああ、そういえば植物たちも・・・と思いあたるのですから、かれらの域にはまだまだ遠く及びません。

ただでさえストレスの多いこの時期に、それを倍増するような苛立ちが続いています。一ヶ月も前に送ったサンプルの放射線測定結果がまだ届かないのです。検査が混み合っているのはわかるのですが、そんなときに検査官が夏休みを取ったりしているのです。しかも土・日はしっかり休んでいる。不眠不休で働けとはいいませんけど、非常時にはそれなりの仕事のしかたがあるんじゃないか。イライラが募ります。

益子町にも測定機が入るらしく、九月に入ると持ち込みができるようになるのですが、こちらのほうは簡易測定。検査対象も野菜のみで、検査結果は口頭で告げられるそうですから、家庭菜園の不安解消あたりが目的みたいです。まあ、こちらのほうも利用してみて結果をお知らせしますが、ほんとうは土壌や堆肥のほうを検査したいんですけどね。

また隣町の茂木に、チェルノブイリ事故のとき、ガイガーカウンターをみんなで持とうという運動をした人がいて、その人は東電の事故を受けて、個人で四百万円もする測定機を購入したそうです。近所の陶芸家が庭先の土を調べてもらったところ、セシウムは検出されなかった。でも、相手は素人です。

そこに頼んでみたら、と勧められたのですが、個人の悲しさで検査結果も証明されません。たかが紙切れ一枚なのですが、やはりここで公表するにはその紙切れ一枚が必要というわけで、高いお金を払っているにもかかわらず、いつまで経ってもそれが届かない。イライラもするわけです。

そんな苛立ちを忘れるために、友人に借りてきた本を読んでいたら、アラスカインデイアンのこんな言葉に出会いました。

「自分自身のことでも、自分の世代のことでもなく、来るべき世代の、わたしたちの孫や、まだ生まれてもいない大地からやって来る新しい生命に思いを馳せる」

この言葉の前で立ちすくんでしまいました。アメリカインデイアンはおなじことを「七代先のことを考えて物事を決める」と表現しています。かれらの文明にくらべて、わたしたちのそれのなんと貧しく、あさましいこと。自分自身のため、自分たちの世代のことしか考えないばかりか、そのツケを子孫のそのまたずっと先の、遠い未来の生命体にまで残そうとしているのです。

十万年後まで管理し続けなければならない原発の廃棄物。人類の歴史がたかだか数万年なのに、そんな途方もない未来にまで禍根を残そうというのですから、これはもう凶器ですらない。狂気の沙汰で、反原発をヒステリックだのセンチメンタルだのとのたまう人たち。かれらの超弩級の近視眼のほうこそ、なんとかならないものかと思います。

代換エネルギーとして候補に挙がっている風力や太陽光発電も、金儲けをたくらむ産業界の思惑が見えみえで、環境破壊を進めこそすれ、実力のほどは疑問符つき。原発に火力発電所と揚水ダムがつきものだったように、これらの発電にも電源が必要だと聞けば、クリーンエネルギーというイメージに騙されてはいけないのがわかります。

本気でこの国を変えたいと思ったら、国会議員をすべてクビにして、省庁からなにからすべてネイテイブ・ジャパニーズであるアイヌの手に渡すしかない

んじゃないか。そりゃあ、弊害は山ほど出るでしょう。しかし、持続可能な文明をほんとうに望むのであれば、目先の経済効率などでなく、もっと遠くまで見渡せる眼力が要求されるのではないでしょうか。

叩き潰すには大きくなりすぎた「経済」というバケモノに、わたしたちはこのまま呑まれてしまうのでしょうか。呑まれるぐらいならいい。やがてそれに押し潰される世代のことを思うと、なんともやりきれない気分になってくるのです。「ごめん」じゃ済みませんからね、こんなこと・・・。

今週の野菜とレシピ

葉生姜の葉先を落としてきれいに洗い、塩をあててから甘酢に漬けると、きれいなピンクに変色します。これをコップなどに挿してテーブルに置いておくと、いつの間にか消滅してしまいます。色がきれいだからでしょうか、意外と子供に人気があるんですよ。

また、子供には肉詰めピーマンよりも、茄子のはさみ揚げのほうが受けがいいみたいです。茄子のヘタを落として縦半分に切り、真ん中に切れ目を入れて小麦粉をまぶしておきます。とくに切れ目の中はていねいに粉をつけ、そこにハンバーグ種をはさんで揚げるか、多めの油で焼き、醤油をかけていただきます。大人にもこっちのほうが評判がよさそう。

焼き茄子はポピュラーでも、焼きピーマンというのはあまり聞きません。が、一度バーベキューで試みてから、わが家では定番になっています。網の上にピーマンを並べて直火で焼くだけ。茄子のように皮を剥く必要もないので、そのまま醤油をたらして食べられますが、鰹節ときざみミョウガをのせると絶品。クセになる味です。

ずっとおなじような夏野菜が続いていましたが、来週あたりから里芋や生落花生といった秋野菜が登場してきます。食欲の秋に向けて、体調を整えておいてくださいね。