苦海浄土

2011年6月第1週

今週の野菜セット

左から

夏日があるかと思えば、肌寒い日が続き、そうこうするうちに梅雨入りしてしまいました。梅雨入りが早いからといって、梅雨明けも早いかというとそうでもなさそう・・・。今年の梅雨は長引きそうです。

おまけに台風2号が南の海を北上中。週が明けるころには、関東地方に近づきそうです。このあたりはしかたがないと思うけど、できれば茨城県あたりで海上に抜けてほしいもの。震災に見舞われたところでは地盤が緩くなっているでしょうから、山間部では土砂災害が心配されます。命からがら津波を逃れてきた人たちが、今度は避難所で鉄砲水に遭ったんじゃ、神も仏もありませんものね。

また梅雨に入ると、津波の後かたづけも滞りそう・・・。汚泥の腐敗も一段と進みそうで、ハエや蚊の大量発生も懸念されます。気温が高くなるにつれて、伝染性の病気の心配も出てきますしね。「復興」という言葉が絵空事としか思えないほど、時間とともに混迷が深まってゆく・・・。そんな被災地も多いと聞きます。そういうところには税金を免除するように、台風もゲリラ豪雨と呼ばれる夕立も、みんな迂回して行ってくれるといいんですけどね。

こう雨が続くと、せっかくの週末も家から出られず、読書でもするほかありません。小雨ぐらいなら、農家に負けじと草刈りぐらいはするんですけどね。今回はかなりの雨量になりそうです。

そこで本棚をひっくり返して、石牟礼道子の「苦海浄土」を見つけてきました。去年、池澤夏樹編纂の世界文学全集にこれが入ったとき、やったあ、と叫びながらひとりで乾杯したものです。酒が飲めない悲しさで、ノンアルコールビールだったんですけど・・・。以来、この本を探していたのです。

世界文学全集に入る日本の作家といえば、三島由紀夫か川端康成、谷崎潤一郎あたりだったはずなのに、わたしの大好きな池澤氏は、やはりわたしが大好きだった石牟礼道子を選んだのです。それだけ感動したんだったら、全集を買えばよさそうなものなのに、ケチくさく、本棚のどこかに埋もれた古い本を探していたんですね。

出てきた本はカバーが日に灼けて変色していましたけど、文字を追いはじめると中身はぴっかぴか。しまいには泣けてきて、文字が見えなくなってしまいました。五十年前、八代海に蓄積された有機水銀が、福島第一原発から垂れ流される汚染水とダブったからです。水俣がカタカナになって、世界的に有名になってしまったように、福島もフクシマになってしまった。「苦海浄土」は過去の出来事ではなかったのです。どちらも国策がからんでいました。当時、食糧を増産するために化学肥料を生産していたのが「日本窒素」という会社。民営であるにもかかわらず、お国をバックにしているところは東電とおなじです。化学肥料で農地を殺し、廃液で海を殺した罪は深く、そのうえ被害の因果関係はなかなか認めようとはしなかった。ここでも活躍しているのは御用学者、御用医者の面々。

そのうち福島訴訟などというのも出てくるんでしょうけど、それが解決するまでにはまた長い年月がかかるんだろうな、と思うと気が重くなってきます。

「苦海浄土」は今なお進行中なのでした。

石牟礼道子さんがこれを「展望」という月刊誌に連載していたころ、お会いしたことがあります。水俣の映画を上映しながら支援する組織が各地にあって、そんな関係で水俣にも行ったことがあるのですが、そこでちょっとしたハプニングがあったのです。

水俣に行ったからといって、かならずしも石牟礼さんにお目にかかれるわけではないのですが、たまたまその日、石牟礼さんは宮崎で講演をすることになっていて、彼女を送って行くことになっていたメンバーがなにかの都合で欠けてしまった。そこでわたしたちが友人の車で送り届けることになったのです。

車の中でなにを話したのか、今となってはよく憶えていないのですが、ひとつだけ印象に残っていることがあります。「苦海浄土」は水俣病の患者やその家族からの聞いた話で構成されていることになっています。そこでわたしは単純に、よくあんな長い話を一度聞いただけで文章にできるもんですね、といったのでした。すると彼女は子供のようにいたずらっぽい目になって、ふっと笑ったのでした。

いつの間にか話題が変わってそのままになってしまったのですが、今回、読み返しているうちに、突然、そのときの記憶が蘇りました。そして、石牟礼さんの微笑の意味がわかった、と思ったのです。石牟礼さんの創作だったにちがいない。創作というと聞こえがわるいけど、彼女はあれを書いているとき、巫女と化していたんじゃないか。

病の床にある漁師や家族が、数回出会っただけの見舞客、それも赤の他人にそんなに簡単に心を許しただろうか。心を許してくれたとしても、そんなに長々と自分のことを語るができたとは思えない。かれらの心の声を聞き、それをふくらませながら文字にしたのが「苦海浄土」ではなかったか、と思い、確信にちかいものになったのでした。

一読、あるいは再読をおすすめします。

今週の野菜とレシピ

フキの食べ方

今週はブロッコリーキャベツが同時に出てきました。二大スター競演、といった感じで、ボリューム満点です。キャベツは保存できますが、ブロッコリーは気温が高くなるとすぐに開花してしまうので、なるべく早くお召しあがりください。

先週、青山さんが「絹さや」を出してくれましたが、出てきたものを見るとスナップエンドウでした。今週は量もたっぷり200グラムに増量してお送りします。

間引きニンジンは葉っぱが主役。ニンジンのほうはまだ彩り程度にしか育っていません。やわらかい葉っぱはきざんでハンバーグに入れたり、かき揚げにしてお召しあがりください。

ニンジン葉のふりかけ

フライパンに油を敷いてちりめんじゃこをかりっとするまでよく炒め、細かくきざんだニンジン葉を加えてさらに炒め、醤油と一味唐辛子、オイスターソース少々で調味。仕上げにたっぷり煎り胡麻を加えます。保存が効くので、梅雨どきのお弁当にも安心して使えます。


玉葱も今週から好子さんの畑から・・・。小粒ですが、オニオンサラダにすると甘みと辛みのバランスが絶妙です。

来週は好子さんの新じゃがが出てきます。

別注品のお知らせ

実山椒
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お届け予定:6月上旬
らっきょう
価格:1kg 750円(税別)
お届け予定:6月中旬
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価格:1kg 800円(税別)
小粒:1kg 600円(税別)
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