キノコと落ち葉

2011年12月第1週

今週の野菜セット

左から

ようやく畑に霜が降りるようになりました。雑草も作物も、大きく育った冬野菜から、芽を出したばかりの空豆や絹さやみたいなかわいいものまで、わけ隔てなく真っ白に冬化粧して・・・。この冷たい白粉の洗礼を受けてはじめて、白菜も青菜も図体ばかり大きくなった青二才から、成熟したオトナの風格になるのです。人間も野菜も、苦労を知ってはじめて一人前といえるのでしょうか。今週の青菜たちは、先週より甘くなっていると思います。

わが家の裏手に、種駒を植えて一年以上になる椎茸の原木があるのですが、この春はパス。秋になってもなかなか顔を出す気配がありませんでした。以前、失敗したことがあるので、今回もダメだったかと諦めかけていたら、霜が降りはじめたとたん、にょきにょきと出てくるようになったのです。寒さが必要だったんですね。

この原木は去年、よけいな庭木を間引いたもので、その中からコナラだけを選んでドリルで穴をあけ、種駒を打ちこんだものですが、もしかしたらコナラのつもりで栗や桃、その他の雑木を使ってしまったのではないかしら・・・。冷や汗ものだったのですが、間違いではなかったようなので、胸をなで下ろしているところです。

山の中に住んでいると、こちらが植樹したものより、勝手に出てきていつのまにか大きくなっている樹のほうが多く、また、そういう樹のほうが勢いがあったりするものです。中にはどんどん増えながら大きくなって、十年も経つと枯れてしまうものもあります。これは前照林といって、空き地にいちばんに生えてくるもので、後から出てくる樹木の養分となるため、さっさと朽ちてしまうようにできているのです。

自然界には必要不可欠な存在ですが、宅地にこれがあると台風はもちろん、春一番や夕立の突風でもあっけなく倒れてしまうので、虫に食われて脆くなった果樹同様、危険きわまりないのです。雪の重みで倒れたものが道路を塞ぎ、往生したこともありました。果樹のほうは虫食があっても薪になりますが、こういう樹はいちはやく腐植するため水分が多く、しかも木質が粗いので薪にもなりません。姿形はうつくしいんですけどね。

しかたがないので太い幹も枝もいっしょくたにして、向かいの林の中に転がしておきました。と、そこにもキノコがいっぱい出てきたのです。キノコ博士の青山さんに見てもらったら、ヒラタケでした。食べられるキノコです。野菜売り場で見かける、ねずみ色の「しめじ」というのはこのヒラタケの幼生なのだそうです。

食べられるといわれても、大きすぎるし、しかも量が半端じゃない。これが一・二個だったらありがたいのかもしれませんが、大きなザルに山盛りとなるとありがた迷惑。それでも鍋に入れ、バター炒めにもしてみましたが、うーん、なんと申しましょうか、山中で遭難。さんざん歩きまわって水も食糧も尽きたところで出会ったら、きっとおいしいんだろうな、と思いながらいただいたしだいです。贅沢だとは思いましたが・・・。

師走を目前にキノコ採りなどしているのですから、この秋は尋常ではありません。こんな調子だから、布団から出るのが少々つらくても、戸外が一面真っ白になっていると、雪の朝の子供みたいにテンションが上がるのかもしれません。そんな朝は、なぜか犬もふだんより元気があります。

曇天のなまあたたかい朝など、わたしが起き出しても犬も猫もベッドから出て来ないのに、今朝のように放射冷却で冷えこむと、どちらも起きて外へ出たがる。寒いときは犬や猫もおしっこが近くなるのか、それともこの程度の寒さがいちばん活動しやすいのでしょうか。猫はよく畑のネズミを捕ってくるし、犬もしょっちゅう走りまわっている・・・。

山歩きをするにも、これぐらいの気温がいちばん楽なのかもしれません。とくに上り坂が楽。汗まみれになることも、呼吸が乱れることもないからです。でも、下り坂は要注意。この秋、紅葉は今ひとつでしたが、今ひとつのまま葉を落としはじめましたからね。いつもの調子で急斜面を下っていたら、勢いよく尻餅をついてしまいました。

もうすぐ山の中が草木染めのカーペットに覆われるでしょう。でも、今年の落ち葉は例年とはちがうはず。毎年落ち葉さらえをしている農家も、今年は二の足を踏んでいるようです。わたしも落ち葉堆肥は諦めましたが、落ち葉焚きもひかえたほうがいいとなると納得できないものがありますよね。

今週の野菜とレシピ

先週は鍋ものセットだったので、今週は豚汁セットといったところでしょうか。にんじん、牛蒡、大根、里芋、豆腐とコンニャクは買い足して、葱はすみません、先週の残りをお役立てください。

ター菜はクッションか座布団のように広がっています。その葉っぱの根元の土をよく洗い落としてからご利用ください。小松菜をやわらかくして、甘みをプラスしたような味。中国野菜なので油と相性がいいようです。

高級中華料理店風

干し椎茸をぬるま湯でもどしておきます。その間にター菜を一枚ずつ根元から切り離し、生姜ひとかけをみじん切りにしておきます。ホタテの貝柱は薄くそぎ切り、エビも背わたを取って食べやすいように広げ、醤油少々で下味をつけ、片栗粉をまぶしておきます。金華ハムなど、われわれ庶民には手に入らないので、豚肉100グラム前後に軽く塩、胡椒して、これにも片栗粉をからめておきます。干し椎茸も食べやすい大きさに包丁を入れ、醤油をまぶしておいてください。こうすると調理したときに水っぽくならないのです。干し椎茸を使うときは茶碗蒸しでも、細かくきざんでシューマイなどの具にするときも、この下処理をしておくだけでひと味ちがいます。

中華鍋に油を熱して生姜を炒め、次いで豚肉、魚介類の順で炒めますが、できるだけ強火で手早く・・・。ター菜をどさっと加えると焦げる心配がなくなるので、あとはゆっくり椎茸を加え、全体に火が通ってきたら干し椎茸のもどし汁も入れ、塩、胡椒、オイスターソースで調味。豚肉や魚介類にまぶしておいた片栗粉でとろみが出ているはずですが、足りないようなら水溶き片栗粉を加え、胡麻油少々で香りをつけて完成です。

わが家風

生姜と干し椎茸以外はそこらにあるもので間に合わせますが、作り方は全くおなじ。それぞれのお宅の「わが家風」に挑戦してみてください。