カラスのアイススケート

2011年12月第3週

今週の野菜セット

左から

とうとう冬将軍が上陸したとみえ、都内では初雪が舞ったそうです。こちらはまだ雪の便りは届いていませんが、雨水受けには分厚い氷が張るようになりました。戸外は真っ白。野菜も草も凍りついてガラス細工と化しています。

屋根に下りた夜露も朝には白くなっていて、そこへ代わる代わるカラスが降り立ってはアイススケートに興じています。瓦屋根ではスムーズに滑れない。屋根の傾斜にもこだわりがあるようで、物置小屋のトタン屋根が滑り台にもっとも適しているようです。たぶん秋口に巣立ちをした若者集団なんでしょう。かれらがやって来ては遊ぶようになりました。

みんなが思い思いにスケートを楽しんでいるのかと思ったら、一種の競技大会みたいなんです。カラスたちは小屋のまわりの木の枝に集まっていて、屋根に降り立つのは一羽ずつ。つうーっと滑り下りて、落ちそうになったところで羽ばたくのがふつうですが、日が経つにつれて地面すれすれまで落下してから羽ばたいてみたり、中にはそれに回転を加えるものも・・・。どうやら難易度を競い合っているようなのです。一羽がそういう技を披露すると、ほかのカラスも真似をして、演技中に着地してしまうものも出てきます。そういうのはたぶん失格。

テレビのない生活をしていると、華麗なフィギュアスケートの演技は楽しめませんが、その埋め合わせをしてくれるのがカラスたちの競技大会。おかげで寒くなってから、朝が早くなりました。

カラスの遊びにも流行り廃りがあるようで、十年ぐらい前までは道路の真ん中にカラスが降り立ち、車が近づいても動かない。ぎりぎりのところで飛び立つので危ないなあ、と思っていましたが、電線に留まった仲間がそれを見ているので、これも一種の肝試しみたいなものだったんでしょう。

当然、車との距離が短いほどいいわけですから、中には命を落とすものもあったようです。それで流行らなくなったのかどうかはわかりませんが、ここしばらくはそういう無謀なことをするカラスには出会いません。電線に逆さまにぶら下がり、そのまま垂直に落下して、地面すれすれのところで羽ばたくという遊びも一時、流行ったようですが、これも最近見かけることがなくなりました。

テレビのアンテナに片足だけでつかまって、風に吹かれてゆらゆら揺れるとか・・・。それを見たときは、カラスがなにかにからまって、大変なことになっていると思ったんですけどね。遊びにかけては、人間の子供たちよりもかれらのほうが上みたいですが、今年はそれにアイススケートが加わったわけです。

カラスが群れて、遊びというか競技に興じているのは冬の間だけ。春になると、かれら若者も配偶者を見つけて営巣するようになります。もしかしたらそんな遊びも配偶者選びの真剣勝負だったのかもしれない。おれはこんなことができるんだぜ、みたいなね。朝のスケートショーからそんなピリピリした感じが伝わってくるのは、寒さのせいばかりではなかったようです。

ところで、週末の天体ショーはご覧になりましたか?

夕刻は雲があったので、空気が冷たいわりには春のようなおぼろ月夜。この調子だと、せっかくの皆既月食も期待できそうもないと思っていたのですが、月が欠けはじめるころには晴れわたり、きれいな寒月になっていました。

その月がオリオン座と動きをともにしながら影を増し、やがて赤黒い干し柿のように姿を変えてゆく・・・。ずっとそれを観察していたわけではなく、身体が冷えると室内に入ってストーブにへばりつき、あたたまってきたところでまた出てという繰り返しだったのですが、生まれてはじめて肉眼で見る皆既月食。月そのものよりも地球の影という、ふだん見たくても見られない、意識することすらなかったものを仰ぎ見るという、その不思議さが感動的でした。

今週の野菜とレシピ

今週も大根が入りますが、すぐにお使いにならないときは葉を落とし、新聞紙にくるんで暖房の届かないところに立てかけておくと日持ちがします。

寒いときは鍋ものがいちばん。それも大根おろしを入れたみぞれ鍋にすると身体があたたまります。また、大根の皮も漬け物に利用できるのでお試しください。わが家ではピーラーで剥いた皮を食べやすい長さに切り、塩をしてしんなりさせたらそれを洗って水気をよく切り、キムチの素をからめています。キムチの素は専門店で分けてもらうのが理想的ですが、市販のものでも大丈夫だと思います。ぱりぱりと歯ごたえがよく、カクテキよりもおいしいぐらい。

葉っぱのほうは菜飯にしますが、大根葉のやわらかいところというのは意外とすくないので、足りない分は京菜あぶら菜で補います。青ものが入っているほうが、若い人たちには人気があるみたいです。

中心部のやわらかい大根葉と青菜を熱湯にくぐらせてから、細かくきざんで塩をします。しんなりしたらかたく絞って水気を切り、ちりめんじゃこ、煎り胡麻といっしょにあたたかいご飯に混ぜるだけ。おでんのおいしい季節ですが、おでんを囲んでいるとどうしても青ものが不足しがち。そんなとき菜飯があると助かります。

ついこの間まであたたかかったせいで、玉葱も芽が出はじめています。今週の玉葱は早めに使いきってください。次回からは北海道産のものが入ります。


隔週でお送りしている方には、これが今年最後の野菜セットになります。

この一年もありがとうございました。今年ほど、会員の方々のありがたさを身にしみて感じた年はありません。

新年は9日~14日の週からはじまります。来年もどうかよろしくお願いします。