雑草と虫の話

2011年6月第4週

今週の野菜セット

左から

栗の花が満開です。雨の中、あの独特の匂いがどこからともなく漂ってくると、深呼吸がしたくなります。除菌剤の臭いに似ているので、昔は悪臭としか思えなかったのですが・・・。ドクダミの花同様、状況しだいで芳香にも悪臭にもなる微妙な香りです。

どちらも梅雨どきの花。春先なら悪臭だったでしょうが、こういうじめじめした空気の中では、一種の清涼剤のよう。まるで空気中の除菌をしてくれているようで、これも自然の計らいなんでしょうか。そうだとしたらありがたいことだと思います。

自然は一見、厳しそうな顔をしているけれど、さりげない配慮は怠らない。なんだかんだいって、人間は守られているのだと思います。山の中に毒草や毒キノコがあっても、かならずその近くに解毒剤が生えているといったように・・・。どんな破壊行為にも再生がプログラミングされている。それがないのは人災だけなんじゃないでしょうか。

人間の破壊工作に対しても、自然は再生の種を蒔いてくれます。卑近な例を挙げると、抜いても抜いても畑を覆いつくそうとする雑草がそれ。これからの農家は、今までみたいに雑草を目の敵にしていたら、健全な作物が作れなくなるかもしれませんよ。

雑草は余分な窒素などを吸収するだけでなく、野菜の根が届かない地中深くにあるミネラルを地表近くまで持ち上げる働きをしています。そして不要なミネラル分、セシウムやストロンチウムといった邪魔者は、自分の体内にしっかり取り込んでくれるのです。これほど心強いボランテイアはいないでしょう。そんなありがたいものを除草剤などで駆逐していたら、人も畑も荒廃する一方。

福島の農家からは、こんなときに無農薬なんかやってても・・・という声が聞こえてきますが、こんなときだからこそ無農薬。水俣の農家が有機農法でみごとに立ち直ったことを思い出してほしいものです。すでに心ある農家は畑を草ぼうぼうにして、それを刈っては用意した穴に捨て、また伸びたら刈ってというのをこの夏の仕事にしています。不毛な仕事ではあるのですが、こんなことでもしてないと滅入ってしまう。すこしでも将来に繋げることをしておかないと、心が折れてしまうとのことで、こちらは言葉もありませんでした。

この夏は虫も多くなると思います。なぜなら害虫と呼ばれる虫たちも、じつはボランテイアの隊員で、人間が口にすべきではないものを処分する役目を負っているのです。だから農薬で殺されると耐性をつけ、今度はその農薬で汚染されたものを処分しようとする。

おいしいから虫に食べられるのではありません。ちょっとでも不自然なものがあったり、バランスが崩れていたりすると虫がつく。人の血が汚れていたり、どろどろしていると蚊に食われやすいのとおなじことです。子供が蚊に食われやすいのも、肌がやわらかいからではなく、成長期は酸性体質だからなんですね。インフルエンザや大腸菌が進化するのも、おなじ摂理の元で働いているからです。

そんなわけで、この夏の野菜がどれだけ虫にやられるか。ガイガーカウンターよりはるかに的確なかれらの判断を仰ぎたいものですが、この春のキャベツもブロッコリーも例年より虫がすくないぐらいでしたから、合格サインをもらえるんじゃないかと期待しながら、慎重に見守っているしだいです。

そういえば友人のひとりが数年前、犬の散歩中に草むらからちいさなシャボン玉のようなものがいくつも、空中に浮かび上がっては消えてゆくのを見たそうです。ほんとにちいさい、一ミリぐらいのシャボン玉といいますから、サイダーの泡みたいなものでしょうか。それが無数に、コップの中の泡のように立ちのぼっては消えていったそうです。夕暮れが迫っている時間帯だったからわかったけど、日中だったら見えなかったかもしれない。

その話をそういうものが見える人に話したところ、ああ、それは虫の魂だ、といわれたそうです。夏の終わりか、秋の終わりか聞き損ねましたけど、そういう時期だったんでしょうね。霊感などある人ではないのですが、本人にいわせると更年期にはそういうものが見えたりするものなんだそうです。わたしは更年期もその前後も、なにも見えませんでしたけどね。

ただ犬の散歩中、草むらからなんともいえないイヤーなものが立ちのぼっているのを感じたことはあります。翌日もそこへ行くと、草の葉先が赤く変色しかかっている。それでイヤーなものの正体がわかったのですが、はじめて除草剤というものに遭遇したときのこと。今でもそういうところを通ると、強い酸で身体を灼かれ、身もだえる草たちの苦悶がぴりぴりと伝わってきます。やっとそれが収まったと思うと、そこはもう枯れ野原。

友人の話を聞きながら、虫の魂がシャボン玉なら、植物の魂はどんな姿をしているんだろう、と思いましたが、見えないほうがしあわせなのかもしれません。ろくでもない除草剤の仕業に出くわすたびに、そんなものが見えていたら、おちおち散歩もできなくなるでしょうからね。

今週の野菜とレシピ

トマトが出てきました。ただ、トマトだけは完全無農薬ではないので、はじめにおことわりしておかねばなりません。苗を定植するときに一度だけ、消毒散布しています。

トマトは雨のすくないアンデスの山岳部が原産なので、雨にあたると病気が出てしまいます。そのため、ハウス内で栽培されるのですが、連作障害を避けるために接ぎ木という方法が取られ、その継ぎ目から病気が入りやすいとのこと。そのため、苗の時期のみ薬剤のお世話になっていますが、薬剤は通常の倍以上に希釈されています。

好子さんの玉葱は生食すると、ぴりっとした辛みの中からじんわりと甘みが出てきます。スライスしたトマトにさらし玉葱をたっぷりのせて、お好みのドレッシングでお召しあがりください。

カリフラワーは残りすくなくなってきたので、ブロッコリーのわき芽と抱き合わせ。どちらか一方が入る形になりました。

モロッコいんげんは煮もの、揚げもの、湯がいてサラダとオールマイテイー。ほとんどスジ取りの必要がありませんが、大きくなったものにはスジがあるので要注意です。

おかひじきは炒めものか、湯がいておひたし。日持ちがするので、すこしずつ玉葱やじゃが芋といっしょに味噌汁に入れてもおいしいですよ。