セミの減少、カエルの減少

2011年7月第2週

今週の野菜セット

左から

梅雨が明けました。というか、このあたりでは梅雨そのものがなかった感じで、気象庁が梅雨明け宣言をしないかぎり降らないんじゃないか、なんて声があったぐらい。突発的な雷雨のおかげで、なんとか潤ってはいますけどね。

それよりも七月に入ったというのに、今年はセミの声が聞こえない。農家はそっちのほうが気になるようです。地震があったからかなあ。それとも、もっと大きいのが来るのでひっそりしてるんだろうか・・・。人が集まると、そんな話になっていました。

先週末になって、ようやく林の中からジーッというニイニイゼミの羽音が聞こえるようになり、夕刻にはカナカナカナ・・・。しかしどちらも、とくにカナカナのほうはうら寂しく、数が減っているみたいです。ヒグラシの羽音はただでさえ儚げなのにね。ガタガタッと揺さぶられたせいかどうかわかりませんけど、なんとなく自然界のバランスが崩れているような感じがします。

ただ、カブトムシだけはやたらと元気で、裏庭の落ち葉堆肥にもぐっていた幼虫たちが柿の木やミョウガの茎にしがみついて、早くも羽化をはじめています。にょっきりと角を生やしたサナギの抜け殻が、今年はけっこう目立ちます。例年なら大きなバケツに一杯以上、セミの抜け殻が残る薪小屋。こちらのほうはしんとしていますが、遅れているだけならいいんですけどね。

そういえば十年ぐらい前から、カエルの数も減ってきています。わが家の周辺はとくにそれがわかりやすい。以前は雨が降ると道路いっぱいにカエルが飛び出して、避けることもできないぐらいだったのが、十年ぐらい前から減りだして、今では余裕で避けられるようになったのです。

累々と横たわる潰れたカエルを横目に、自分の車もそれとおなじことをしなければ通行できない。夜道ではそんなカエルの内臓が、まるで反射板のようにライトを受けて光るのです。点々と続く真っ赤な反射板がなにかを訴えるというか、こちらを糾弾しているように思えたものです。

そういう呵責はなくなりましたけど、カエルの減少は生態系にとっては大きな出来事で、カエルを捕食するサギやヘビも生きづらくなっているはず。車に轢かれたカエルだって、翌朝にはカラスがきれいに掃除してくれましたから、けっして無駄死にではなかったわけです。そういう循環が滞りはじめている。かつては太かった循環パイプがどんどん細くなってくると、ちいさなゴミが詰まっただけで流れが断ち切られるようになるわけで、そうなると水も空気も腐りかねない。最終的には人も住めなくなるはずです。便利だとか、快適だとか、わたしたちはいろいろ追求してきたけれど、行き着く先がそれではね。科学がただの浅知恵だったのは、今回の原発事故でも立証済みです。

生態系への影響がそれほどではなくても、わたしたちの情緒に訴える点では大きな存在だったホタルの減少。これもここ十年ほどで加速度を増してきました。原因は益子の山中にも「農地改良」の魔の手が伸びてきたことです。いっしょに用水路がコンクリート製のU字溝になってしまうため、ホタルの餌になるカワニナが生息できなくなるのです。

農地改良というのは、ちいさくて形もまちまちだった田圃を土木工事で広い、真四角なものにするもので、機械化による米の増産を計ったものでした。費用は農家と国が半々で負担するのですが、農家は半ば強制的に長期のローンを抱えることになります。そうやって生産性を高めておきながら、減反政策ですからね。農水省と農協は農家を疲弊させるのが目的なんじゃないか、と勘ぐりたくなるぐらい。

さて、そのホタルですが、農家の中にはわざわざU字溝とは別に水路を造ったり、わき水を引いたりしてカワニナの育成に努めている人がいて、そういう田圃の周辺ではホタルが復活しはじめています。以前はわざわざ出かけなくても、山の中腹のわが家のあたりまでふらりと登ってきたものですが、今はホタル見物にも車が必要になり、そのホタルたちも今週中には消えてしまう運命にある。なぜかというと、農薬の空中散布がはじまるからです。

こんな調子では、食糧の増産というあの手この手も、否応なく食糧の枯渇という方向にカーブを切らされてしまうのではないか。そんないやーな予感がします。

今週の野菜とレシピ

茄子ピーマンが参入して、夏野菜の代表選手がようやく勢揃い。暑さにめげず台所に立って、しっかり食べてくださいね。

ピーマンは半割りにして、種をつけたまま油炒めして、鰹節と醤油で食べてみてください。シシトウの種は食べるのに、ピーマンの種は捨ててしまうというのも妙な話で、皮だけ食べるより、ちゃんと種もついていたほうがおいしいに決まっています。鰹節だけじゃなく、きざんだミョウガもたっぷりのせて醤油をかけるのがわが家流。ミョウガが手には入ったらお試しください。

茄子も油と相性がいいので、こちらは素揚げして、おろし生姜をたっぷりのせて、醤油でどうぞ。先週のズッキーニが残っていたら、輪切りにしていっしょに揚げて、仲良く麺つゆに浸してもおいしいですよ。

トマトも今週はたっぷり1キロ入っています。輪切りにして、スライスしたニンニクといっしょにオリーブ油で炒め、塩、胡椒してどうぞ。冷めてもおいしく、生で食べるより栄養価も高くなるそうです。