あたたかい秋

2011年11月第1週

今週の野菜セット

左から

季節外れのあたたかさが続いています。

せっかくの紅葉も立ち往生を余儀なくされて、中途半端な色合いのまま干からびようとしているみたい。うつくしい紅葉のためには、身の引き締まるような冷え込みが必要ですが、畑の野菜にもこれ以上のあたたかさは不要です。これからの野菜は霜にあたるたびに滋味を増してゆくのですから、いいかげん寒くなってもらわないと困るわけです。

それなのに雨上がりに道を歩いていたらカエルの声が聞こえたり、だれかの庭で紫陽花が咲いたなんて話が聞こえてきたりするんですよ。産卵を終えたカマキリが家の中に入ってきてもいい時期なのに、草むらには大きなお腹をかかえたメスが潜んでいるのです。やっぱりなにかが変。どこかでボタンを掛けちがえているんでしょうね。

犬や猫がやたらと草の実をつけてくるところだけは、季節も順調に進んでいるみたい。うっかりするとわたしの衣服にも、さまざまな形のがへばりついていて、どいつもこいつもそう簡単には取れない仕掛けになっているから、さあ大変。秋の夜長は根気よく草の種、別名:ひっつき虫と向き合うことになるのですが、見れば見るほどみんなよくできているのです。

すばらしい造形力に加えて、巧妙な生き残り戦術。すごい、すごいを連発しながらそれをみんな集めておいて、最後にストーブの火口に放り込む・・・。イヤなヤツでしょう。でも、それぐらいじゃあ、敵はビクともしないのです。厄介な種をつける草には目をつけていて、庭はもちろん、山の中でも花をつける前に刈り取ったりしているのですが、それでもこれだけ犬の猫も人までも草の実だらけになるのです。

駆除しているつもりが、逆に繁殖を助けていたりするんでしょうか。畑の除草をしながら思うことなのですが、不思議なことに人の手が入ったほうが雑草も虫も病気も増えるみたいなんですね。

江東区にお住まいのMさんから以前、観葉植物につく白い粉・コナカイガラムシの防除法を尋ねられたことがあるのですが、この夏、わが家の鉢のひとつがそれにやられてしまいました。木酢や発酵液を薄めて散布してみるのですが、効果がないので向かいの林の草がぼうぼうになっているところへ置いてみました。植物の病気は植物に治してもらったほうがいいと思ったからですが、そのまま忘れていたんですね、三ヶ月ちかくも・・・。それがつい先日「発見」されたときには、粉だらけになっていた茎も葉もきれいになっていたのです。なにせ放ったらかしで水やりも忘れていたぐらいですから、鉢の中はぱさぱさで、葉先もすこし茶色くなっていましたが、たっぷり水を与えると一週間もしないうちに葉っぱがひとまわり大きくなった感じです。そうか、人間はなにもしないほうがよかったんだと思ったしだいです。

有機農法そのものが土中の微生物の生息環境を整えるのが仕事みたいなもので、植物への働きかけはみんな微小な菌類に任せてしまっているんですけどね。思えばいいかげんな農法ですが、そのかわり畑の「ご主人さま」にはなず、作物はもちろん、菌だの虫だのといった「上役」の下で地面に這いつくばって働かねばならないわけです。

没我の境地といったらおおげさかもしれませんが、人の営みの中でもっとも気候に左右されやすく、思い通りにゆかないのが農業です。そんなデリケートな産業をこれ以上犠牲にして、この国はいったいどこへ行こうとしているんだろう・・・。原発の再稼働といい、アメリカ経済の救済策みたいなTTPといい、怒りに火がつくよりため息のほうが先に出て、へなへなと座りこんでしまいそうです。

目先のことも大事でしょうが、十年後・二十年後まで見渡せる曇りのない「眼」を持たないことがこの国、いや、この地球という島の最大の不幸なのかもしれません。今ならまだ間に合うということもいっぱいとあると思うんですけど・・・。

今週の野菜とレシピ

季節は中途半端でも、冬野菜は順調に育っています。今週はかぶ大根ほうれん草とボリュームも満点です。大根も煮物にできる大きさになってきました。ちょっと変わったところでは大根のしゃぶしゃぶ。これはピーラーを使って大根をリボン状にして泳がせるのですが、食感が新鮮なのとさっぱりしている点が、寒いんだかあたたかいんだかよくわからない、こんな時期にぴったりの鍋。豚肉にも牛肉にもよく合いますが、これは胡麻だれよりもポン酢がおすすめです。

急に寒くなったり、風邪をひいたりしたときにはかぶの茶碗蒸し。濃いめの出汁を用意している間にかぶを摺りおろし、泡立てた卵白と塩であっさり調味。具はあってもなくてもいいのですが、銀杏が2~3個入っているとうれしいものです。これを茶碗に三分の一ぐらいずつ入れて蒸し、用意した出汁を醤油と塩少々で濃いめに調味。葛か片栗粉でとろみをつけてたっぷりと茶碗に注ぎます。できれば柚子の皮を一片添えて・・・。スプーンでかき混ぜながら、あつあつをふうふういっていただきます。これは身体が芯からあったまります。

かぶの葉はビタミンが豊富な上、稀少な亜鉛をたっぷり含んでいますので、これとは別におつゆの実や一夜漬けにご利用ください。

ほうれん草はおひたしか胡麻和えで・・・。胡麻油少々を加えてナムル風にしてもおいしいですよ。