白鳥の飛来

2011年1月第3週

今週の野菜セット

左から

寒い日々が続いています。週末には、このあたりでも雪が積もりました。

連日の寒波のおかげで、馬田さんの椎茸は生育が止まってしまいました。好子さんのレタスもなかなか結球できず、凍りついたところから傷みはじめているそうです。露地の野菜は強いけど、室内やハウスで栽培される、いわゆる「温室育ち」は脆弱なのかもしれません。

だからといって、かれらを侮るわけにはゆきません。わたしたちだって「温室育ち」みたいなものですからね。せいぜい風邪をひかないよう、罹ったところで鼻風邪程度で済むように、体調管理に努めたいもの。空気の乾燥はインフルエンザを増長させるので、せめて室内ぐらい、十分に加湿しておきたいものです。

外出時はマスクでしょうか。ガーゼの穴は細かいようでも、菌をシャットアウトすることはできません。でも、加湿効果があるので、一概に無駄とはいえないようです。防寒にもなりますしね。鼻が痛くなるような寒い朝など、マスクがあれば、と思うこともあるのですが、買い物をするころにはあたたまっているので、なかなか買えない。でも、人混みを歩くときは、不格好でもマスクをつけるようになるのかもしれません。

こんな寒さでも、カラスもトンビも悠々と自前のダウンジャケット一枚で飛びまわっています。こちらは地上で風を避けながらちぢこまっているのですから、いやになってしまいますよね。

益子でも、あちらこちら点在する池や沼に渡り鳥が集まっています。益子駅近くを流れる川には、数年前から大白鳥が来るようになり、それが年々数を増やして、今年は十数羽。それが人気者になっています。

かれらは禁猟区をよく知っていて、人が餌づけの衝動に逆らえないことも見抜いているみたい。だから大きな白鳥も小さなカモも、みんな人を懼れない。人なつこいので、ますます人が食べものをばらまくという面白い循環ができあがっているようです。

ま、これも食糧が十分に行き渡っているからできることで、人が飢えていたらかれらを見る目も変わってくるはず。また、渡り鳥が不審死するようなことがあっても、待遇はがらりと変わるにちがいありません。近所の人が餌を撒いたり、親子連れがパンをちぎって与えていたり、そんな光景は人間の側の幸福度や満足度を測るバロメーターでもあったわけですね。

この冬はとっても寒いけど、人も渡り鳥もしあわせそうです。次の冬も、またその次の冬もそうあってほしいと願いながら見ていたら、白鳥の急接近に怯えて泣く子、お菓子を取られて泣く子が続出。白鳥は体が大きいでしょう。子供と見るとなめてかかるみたいだし、大人が制止にかかると攻撃的になる。遠目には優雅ですが、かなり厚かましいお客さまのようで、昔、井頭公園にいた一羽の白鳥を思い出してしまいました。

東京都内に井の頭公園というのがありますが、こちらにあるのは井頭公園。井の頭公園の数倍の面積を持つ自然公園です。中央に大きな池があって、そこも渡り鳥のたまり場になっているのですが、一羽だけ、渡りをやめて住み着いている白鳥がいました。

これが池の主みたいな存在で、渡り鳥だけでなく、そこに飼われているガチョウたちもその白鳥には場所を譲ります。体の大きさが物をいってたんでしょうね。遠目にも目立つので、スター的存在でもありました。

この池には貸しボートがあって、あたたかい季節になると、池を一周するボートでいっぱいになります。が、寒い時期にも渡り鳥を間近で見たいのか、ぽつんと池の真ん中にボートが出ていたりします。一艘でもボートが出ていると、水面に薄氷が張るような季節でも、子供たちはボートに乗りたくなるみたいで、しつこくせがまれることになるんですね。

そこでボートをこぎ出すと、めざとくあの白鳥がやって来る。水面を滑るように優雅な姿が近づいてきたと思うと、貴公子が追いはぎに豹変するのです。長い首を伸ばしてボートの中を物色する。子供がお菓子など持っていたらひったくる。抵抗しようものなら、あの大きな嘴で突きにかかる。うちの娘など、何度それで泣かされたか・・・。それでもボートに乗りたがるのですから、子供心と女心はわからないものです。

ひと騒動あって、やれやれと芝生で弁当など広げていると、それも泥棒貴公子はめざとく見つけて来るんですね。白鳥は水陸両用だったのです。歩く姿はちょっと無様だけど、よっちよっちとやって来て、どれどれと弁当を物色し、卵焼きからウインナまで平らげてしまう。えっ、白鳥って草食じゃなかったの?なんて思う間もないぐらいの早業です。

この公園に出かけるときは、ガチョウや鯉のためにパンの耳などを大量に持参しているのですが、この貴公子はそんなものには見向きもしません。スナック菓子みたいなジャンクなものが好きだったんですね。そのせいかどうか、子供たちが大きくなって、ひさびさに公園を訪れたとき、もう白鳥の姿はありませんでした。評判のわるい白鳥でしたが、いなくなってしまうと寂しいもので、餌づけのよしあしについても考えさせられました。あの貴公子が追いはぎもどきになったのも、元はといえば人が与えるお菓子のせいだったんでしょうからね。

今週の野菜とレシピ

寒さのせいで、大根は土からはみ出した首の部分が凍っています。ラデイッシュも半分に切ってみると、中が半透明になっていたりするのですが、その分甘みがつよくなっています。

この時期の甘い大根を千六本に切り、納豆で和えると美味。納豆には醤油を多めにからめておきます。そして大根と混ぜ合わせたら、細く切った焼き海苔をたっぷりのせて・・・。醤油の量によって、サラダにもご飯のおかずにも変えられます。

椎茸がストップしてしまったので、代わりに山形のしめじが入ります。おすすめはしめじとじゃが芋の炒めもの。じゃが芋は薄くスライスしてから、さらにそれを細く切って植物油で炒めます。じゃが芋が半透明になってきたら、石づきを取ってほぐしたしめじを加え、バターも加えてよく炒め、塩、胡椒で調味。最後に醤油少々で香りをつけます。

あぶら菜としめじの炒めものもおすすめ。こちらは塩、胡椒のほかにオイスターソースを加え、コクをプラスしてください。

来週は評判のよかった赤かぶと、霜にあたって甘みを増したター菜が入ります。寒さでなかなか大きくなれないちぢみほうれん草も、復活してほしいものですね。