凶作の予感

2011年5月第2週

今週の野菜セット

左から

先週半ばから寒さがぶり返し、遅咲きの山桜も北風に吹き払われてしまいました。早苗の植わった田圃に花びらが落ちて、浮島のようになっています。

それはそれで風情があっていいのですが、カエルたちはすっかり元気をなくした様子。耳を聾さんばかりの大合唱がぴたりと止んで、しんと静まりかえった田圃というのは、稲苗の生気も削がれてしまいかねないものがあります。春だというのに、この寂寞感・・・。さいわい週末には気温が上がって、また賑やかになってきましたが、カエルの数自体が昔にくらべて減っているようです。

今年はタケノコも不作でした。これまでも何度か不作の年はありましたが、これほど竹林が殺風景だったことはないといいます。海老原家の広大な竹林には毎年業者が入って、ごっそり盗掘して行くそうです。それでも野菜セットを賄うだけのタケノコが採れたのですが、今年は明け方に犬が吠えたてることもなく、人が入った形跡もない。にもかかわらず地面はどこまでも平らで、タケノコの所在を示すような盛り上がりが見あたらなのです。

あっても浅いところから顔を出したのばかりで、いつものように地中深くから出てくる大物は鳴りを潜めていたのだとか。一メートル近くも掘らなくていい分、作業は楽だったそうですが、竹藪の中をむなしく歩きまわる徒労にくらべたら、目移りするぐらいのタケノコに囲まれているほうがいいに決まっていますよね。

そんなわけで、今年の秋は凶作が予想されます。また、いつかのような米不足になるかもしれません。キジが人里ちかくに出てくる年も凶作になるといわれていますが、これも頻繁に出てきていますしね。山の中にあるわが家の周辺では、春になるとキジの声が聞こえてきますが、姿を見ることは滅多とありません。ところが今年は車の通る道のすぐわきを歩いていたり、草むらから飛び立ったり、やたらと目につくのです。声もしょっちゅう聞こえています。

それに加えて、今年は東北地方で天災による塩害やら、人災による作付けの見合わせやらで、米の供給量がかなり落ちると思われます。にもかかわらず減反政策はそのまま。こんなときに減反って、わけわかんねえよなあ。作れるところはどんどん作って、減反に対する戸別補償金なんか、みんな被災地に回しちまえばいいのに、なに考えてんだか、まったく・・・。と、農家を嘆かせたり困惑させたりしている有様です。

ほんとに、なに考えてんだか。米の心配もさることながら、田圃の生態系のほうも気にかかります。これだけ広範囲の田圃が放置されるとあたり一帯のカエルが繁殖できなくなってしまうし、そうなるとそれを捕食するヘビも生き残れない。一時的な米不足より、生態系が断ち切られるほうが事は重大かもしれません。大地に生きるものが消えるということは、地震同様、わたしたちの依って立つところが揺らぐということなのですから。

青山さんの田植えはこれからですが、今年は収穫量をすこしでも多くするため、田圃の草取りに専念するそうです。去年は除草がおろそかになってしまったため、個人的に凶作だったからですが、除草はいいんだけど、そのために夏野菜は作らないことになってしまいました。モロヘイアは好子さんにお願いしましたが、畑の空きがないとのことで、ゴーヤはわたしが作ることになってしまったから、さあ大変。

ゴーヤの種をポットに植えて、ただいま育成中。ようやく芽が出たところですが、本葉が出てくるまでに畑の準備をしておかねばなりません。これまで草ぼうぼうにしていたところまで、きれいにしなければスペースが確保できないため、こちらも毎日草むしりに追われているしだいです。

キジの話が出てきたついでに、東向き観音の手前で抱卵していたキジのつがいの後日談。

ほとんど人が訪れることもない山の中の石仏ですが、それでも毎月一日にはお参りする人がいるらしく、みかんがぽつんと置いてあったり、生米が供えられたりしています。するとカラスがこれを啄みに来る。啄むだけならいいのですが、わたしがお供えしている花を散らかすわ、毎朝水を取り替えているお猪口は岩場に落として壊してしまうわで、今月に入ってからキジに遠慮はしていたものの、気になってしかたがないのでした。

またオスのキジにまた怒られるかもしれないので、びくびくしながら山道に入って行きましたが、たしかこのあたりの杉の根元・・・と思われるところにさしかかっても、なにも出てきません。

ひさびさに観音さまのお顔を拝んで、予想通り散らかされていた花をかたづけ、新しい花瓶に花を挿し、二代目のお猪口がどこにも見あたらないので、また新しいのを持ってこなくちゃ、などと思いながら引き返してきたのですが、帰り道、杉の根元をひとつずつ覗いてみたら、キジの巣が放置されていたのです。六個あった卵がひとつだけになっていて、手にとってみたら傷があったので、たぶんうちの犬が持ち出した拍子に傷にしてしまったものでしょう。

残りの卵はどうなったのか。全部きれいになくなっていたら、タヌキの仕業と思われるのですが、傷物だけが残っているところを見ると、もっと安全なところに引っ越したのかもしれない。そうあってほしいものだと思いました。ま、これで元通り、毎朝お参りができるようになったわけで、犬もうれしそう。お猪口も九谷焼から、陶器市で見つけたかわいらしいものに代わりました。

今週の野菜とレシピ

先週お休みしていた方には、タケノコが入る予定でしたが、上記にあるような事情で入れることができなくなりました。楽しみにして方にはごめんなさい。

先週末の寒さで、好子さんのきゅうりも、青山さんの絹さやも、花はたくさんついているのですが、生育が止まっています。そこで今回も野口さんに救援を依頼。愛媛からきゅうりを送ってもらうことになりました。

青ウドというのは山ウドの茎の部分で、あまり一般的ではありませんが、このあたりでは直売所や道の駅などでよく売られています。地元の人は湯がいてから酢味噌和えや胡麻味噌和えにするそうですが、どちらかというときんぴらのほうがお奨め。わが家では細く切った蒟蒻といっしょに炒めて、砂糖と醤油、それに一味唐辛子を加えてピリ辛にして食べています。

今年は気温の変動が大きいせいか、例年より端境期が長いみたいです。好子さんの春大根や春キャベツも遅れていますが、もうしばらくご辛抱くださいね。