原発に、愛をこめて…

2011年3月第5週

今週の野菜セット

左から

こちらでも余震が続いています。強い揺れがあると、震源地が気になってラジオに耳をかたむける。そんな日々が続いています。

が、揺れているのは地面だけではありません。わたしたちも大揺れに揺れていて、こちらのほうの震源は福島第一原発です。なかなか収束に向かってくれない中で、放出される放射線。野菜や水への影響。雨の心配などなどで、今週は野菜セットに請求書が入ることになっているけど、そんなもの、送ってしまっていいんだろうか?

アラレちゃんとわたし。暗い顔を見合わせて、電話がかかって来るたびにビクビクしていました。予想通り、野菜セットを当分休みますという電話がありましたが、予想外だったのは、それよりも激励のお電話やファックスのほうがはるかに多かったこと。

こんな状況で野菜セットを送っていいんだろうか。これがわたしたちの「揺れ」の震源でしたが、洗っても茹でても落ちない農薬とちがって、放射線は洗えば落ちるもの。気にしないで送っていいのよ、といわれるたびに涙がこみあげて、ありがとうございますが言葉にならないぐらいでした。

そんなわけで、いつも通り来月分の請求書を同封させていただきますが、継続するか否かはみなさんの判断と、福島の状況にかかっています。いろんな意味で余震はまだまだ続きそうです。

わたしの家からすこし離れた山の中に「東向き観音」と呼ばれている、小さな観音さまがいらっしゃいます。二十年ぐらい前に友人に案内されて行ったことがあるのですが、それっきりになっていました。そのころは山歩きにも慣れていなかったので、だんだん細く険しくなっていく道程にうんざりしたからかもしれません。

ところが三月に入ったあたりから、なぜか急にそれが気になりはじめたのです。二十年以上前の記憶を頼りに、迷い迷いたどり着いたのが夕方ちかく。うっかりすると見過ごすような崖の上の岩盤に、石に浮き彫りされた観音さまが祀られていました。小さいけれども存在感のあるお姿です。が、長年の雨風でお顔はのっぺらぼう。目鼻のありかもわからないぐらいです。

でも「東向き観音」というぐらいだから、これは朝お参りするのがほんとうだろうと、翌朝、紅白の梅の花をお供えに行き、ふと目を上げると観音さまが微笑んでいらっしゃる。朝日を受けて、輝くような笑みを浮かべていたのです。それを見たとたん、わたしの中を突き上げるようなものがあって、涙がはらはらとこぼれ落ちました。観音さまにお顔があった。しかもとびきりの美人です。ひと目で恋に落ちてしまって、それから観音さまが頭から離れなくなりました。鈍感なわたしにもわかるぐらい周辺の気がいいからでしょうか、犬も裏山ではなく、そちらのほうに行きたがります。毎朝訪れるようになると、石のお顔にも表情があり、それが日に日に変化しているのがわかりました。地震の翌朝のお顔は、まぶしいぐらいの朝日を受けているにもかかわらず、夕刻のように目鼻が消え、のっぺりとして見えたものです。

今はその観音さまの下に座って、瞑想というのではないのですが、福島のほうに向かって一条の光を送りながら「ありがとう」といっています。

なぜ「ありがとう」なのかというと、これが魔法の言葉だからです。だれに「ありがとう」なのかというと、福島第一原発で危険な作業を続けている人たちもそうですが、歯止めのかからない原発の設備そのものに対して・・・。科学が対処しきれないのなら、魔法の力に頼るしかないからです。

原発って嫌われ者でしょう?電気という便利なものを供給しているにもかかわらず、人からは汚らわしいもののように忌み嫌われている。まるでフランケンシュタイン博士の手になる怪物みたいです。その怪物が今回、地震と津波をきっかけに暴れまわって、手がつけられない。荒ぶる魂を鎮めるのに必要なのは、謝罪と感謝しかないんじゃないか。そんな風に思えたからです。

人の意識のエネルギーというのは、人智がこねくりまわした機械類よりはるかに強大です。不安や怒り、苛立ちといったマイナスのエネルギーは、火に油を注ぐようなもの。怒りは東電幹部のジジイどもに向けられるべきであって、原発そのものに対しては「ごめんなさい」「許してください」「ありがとう」の三点セット。ホ・オポノポノが適切なのではないでしょうか。

観音さまを浮き彫りににした石版は、わたしの小さな光と言葉を増幅してくれる強力な反射板です。何十年も前に一度訪れただけの観音さまが急に気になりだしたのも、もしかしたらこのためだったのかもしれません。どうかみなさんも、心をこめて「ありがとう」をかの地に向けて発してください。

今週の野菜とレシピ

先週から今週にかけて、放射線の影響がすくないと思われるハウスものをお送りしています。先週の小松菜は露地栽培でしたが、先月からヒヨドリが大挙して押し寄せているので、不織布製の霜よけカバーを防鳥ネット代わりに使っていました。

それでも会員の方に迷惑がかかるといけない、といって好子さんは井戸水で洗ってから出荷しています。たいへんな手間でしょうが、みんなが栃木産、茨城産といっただけで敬遠しているときに、うちの野菜を食べてくれている。涙が出るほどありがたいのに、そんな手間を惜しんでいたら罰が当たる、とのことでした。

中には、出荷停止になっているほうれん草を別注したいといってくださる方もいて、ほんとうにありがたいのですが、青山さんは先週の時点で防鳥ネットを撤去。待ってましたとばかりヒヨドリが押し寄せて、大半が消えてしまったそうです。

先週のラデイッシュは大きくなりすぎて、中がスカスカになっているのがあったそうです。申しわけありません。今週は後から蒔いた分の中から、小ぶりのものを選んでもらうことにしています。

椎茸は地震の後の停電で井戸水のポンプがストップ。その後復活しましたが、大きくなってしまった椎茸に水をやると、中が黒くなって食べられなくなってしまいます。加えて先週はガソリン不足で出荷がストップ。そんなわけでもうすこしで干し椎茸になりそうなものが入りますが、事情を酌んでお許しください。

愛媛の野口さんから、新玉葱が届きました。野口さんもこちらの事情を察して、出はじめの玉葱を優先的にこちらにまわしてくれています。来週はキャベツを送るから、といってくれて心強いかぎり。ありがたいことばかりで、会員のみなさんと農家、両方から泣かされてばかりです。


今のところ土壌の汚染はありませんが、今後のことは不透明なので、土壌用の麦飯石を取り寄せていますが、水道水からヨウ素が検出されるようになって、関東では水に対する不安も広がっているようです。そこで飲み水を処理するタイプのものも注文してあります。

麦飯石は放射線を吸収することから、原発の排水などにも使われますが、セシウムなどのデータはあっても、半減期が八日と短いヨウ素に関しては、必要がなかったからか、ちゃんとした実験データないそうです。早急にテストして結果を知らせてくれるよう、お願いしてあります。

結果しだいでは格安でお分けするつもりですが、データが出るまでに一週間ほどかかるそうです。もうすこしお待ちください。また、竹炭もヨウ素の除去には効果があると聞いています。ご心配の向きはお手持ちの炭で間に合わせてください。