異常気象の功罪

2011年2月第4週

今週の野菜セット

左から

このあたりでも、梅が開花。まだ、ちらほらとではありますが、それにつれて陽光も春めいてきたようです。

ところが今年はウグイスよりも早く、山の中からコジュケイの声が響いてきます。ウグイスが三月、コジュケイのほうは四月に入ってから、というのがふつうなのですが、気の早いコジュケイがチョットコイ、チョットコイと、まるで春を引き寄せているかのよう・・・。ほんとうはオスがメスを呼んでいるんでしょうけど、この声を聞くたびに日射しが強くなるような気がします。

キジといい、コジュケイといい、今年は野鳥の繁殖期が早まっている模様。それがなにを意味しているのか、一抹の不安もあるのですが、気象というのはなるようにしかなりませんものね。異常気象にはもう慣れっこ。人も動植物もそれに対応して、逞しくなる必要があるみたいです。

異常気象などという言葉が生まれてくる以前から、四季の巡りはかならずしも順調というわけではなく、農家はしばしば番狂わせに悩まされてきたものです。多雨に旱魃、虫の異常発生などなど、作物は常に試練と隣り合わせ。かならずしもぬくぬくと生育できるとはかぎりませんでした。

それでも植物たちは臨機応変。あの手この手で乗り切ってきたわけですが、それには基礎体力がなくてはなりません。化学肥料で育てられ、薬漬けにされていたのでは、不測の事態に備えることはできないわけで、今後、気象がさらに変動するようなことになれば、現行の農法では太刀打ちできないことになる。昔ながらの農法でしか作物が作れなくなれば、効率はわるいかもしれないけど、人間のほうも基礎体力がつくことになる、というわけで、これはこれでいいことだったのかもしれません。

いくら有機農業がいい、野菜に力があるといったところで、半分の労力で収穫量も多くなるような農法があれば、農家はそっちのほうに行ってしまいますものね。やむを得ない状況を作り出す必要があったのかもしれません。だとすると、人間が生み出した異常気象が、結果的に人を救うことになるわけです。その間におびただしい動植物を絶滅させてしまったわけですから、そのツケは払わなければならないでしょうけどね。

ともあれ、人の欲というのはキリのないものです。それにストップをかけるためにも気象が荒れていると思えば、黙って甘受するしかありませんよね。

この冬枯れの中、山の中のイノシシはどうやって空腹をしのいでいるんだろう、みたいなことをぼんやりと考えながら歩いていたら、目の前に大きな落とし穴。あやうく落ちそうになりました。

篠竹の生い茂るところで、そこに人ひとりがやっと通れるぐらいの道があり、今でも林業を営む人が使っているようです。藪の中にぽっかり開いたトンネルみたいな道ですから、冬あたたかく、夏は涼しい。そのうえ俗界から隔絶されたような風情があるので、わたしもよく利用するのですが、雪が降ると竹が覆いかぶさって通行できなくなってしまいます。

ようやく雪もなくなったので訪れてみたら、巨大な穴ができていたというわけです。イノシシは山芋を掘るにしても、百合根を食べるにしても、必要最小限の穴しか掘りません。こんな大きな穴を残すのは人間ぐらいのものですが、シャベルを使った痕跡がない。塒にしてもちょっと不自然。まわりの篠竹のてっぺんあたりを見たら、枯れた葛があったので、葛の根を掘り出したんだろうということで納得したのですが、こんな冬枯れでもヤツらは相変わらずグルメなんだなあ、と感心したりして・・・。吉野葛といえば高級品ですものね。

こんなことがあるので、山歩きにノコギリは欠かせません。さっそく道の脇の篠竹を切って、穴を迂回する道を作りましたけど、こういう土木作業をするとかならずといっていいぐらい、ご飯の支度をしているときに指を切ってしまうのです。わたしもイノシシに倣って、自然破壊は必要最低限にとどめているつもりなのですが、それでもだれかの恨みを買ってしまうんですね。

もしもわたしがイノシシだったら、篠竹を切らなくても押し倒せば通れたはず。ところが人間なので、ギリギリのところを切っているつもりでも、ちょっと邪魔になる枝なんかも落としてしまう。それがわるいんでしょうが、だとしたらスーパー林道なんかどうなるんでしょう。死傷者が続出しても不思議じゃないのに、そんな話は聞きたことがありません。

当事者の罪悪感の問題なのかもしれませんが、工事の作業員に災難がふりかかるというのも気の毒な話です。ここはやっぱり林野庁のお役人が責任を取るべきでしょう。かれらが包丁で指を切るようなことはないのかもしれないけど、もっと深いところで身体がむしばまれることになるのだとしたら・・・。ああ、指先の怪我ぐらいでよかった、と傷バンを貼りながら自分を慰めているしだいです。

今週の野菜とレシピ

今週は青山さんのかぶが入る予定でしたが、まだ小さすぎるようなので、もう一週、畑に置いておくことになりました。ほうれん草も同様の理由で、来週までお待ちください。

代わりに野沢さんのニラが入りました。3センチ前後に切ってからさっと湯がき、醤油と胡麻油、鰹節で和えてみてください。ニラの甘さがたまりませんよ。

白菜はこれが最終便。雪や霜でかさかさになってしまった外葉を取り除くと、こんなに小さくなってしまいました。が、苦労した分、甘みは増しているはずです。日中はあたたかくなりましたが、まだまだ日が落ちると寒い日が続きます。鍋もので身体をあたためてください。