雪の便り

2011年2月第3週

今週の野菜セット

左から

先週のあたたかさで、山の中に残った根雪も姿を消してしまいましたが、週末にまた積雪。しかし、それほどの大雪にもならず、雪質もこれまでとはちがうようです。水分をたっぷり含んだ春の雪。はかなさの代名詞みたいな雪のことですから、すぐに消えてしまいそうです。

が、このずっしりと重い雪は迷惑なものでもあります。ひらひらと大片が舞い落ちても、アスファルトの上ならすぐに解けてしまいますが、電線や木の枝にはべっとりと貼りつきます。そこで電線がきれたり、枝が折れたり、常緑樹などは樹木全体が押し倒される形になって、若い木は折れてしまいます。それも自然淘汰のうちに入るんでしょうけど、なんだかかわいそう・・・。

そこで棒を片手に、雪を払いながら歩いているのですが、ポンと叩くと樹木の背筋がピーンと伸びる。それが快感になりつつあります。頭上から落ちてくる雪には注意が必要ですけどね。

先日、朝日新聞の読者の声欄を見ていたら、こんな投書が載っていました。雪の中を歩くと足跡が残る。当然なんですが、その人はある朝、家の前で整然と残された足跡に遭遇。急に自分の残したものが気になって振り返ってみると、恥ずかしいぐらい乱雑なものだった。以来、自分が残す足跡に気を遣うようになったのですが、なかなかそれがきれいにならず、降りしきる雪が足跡を消してくれるとほっとする、といったことが書かれていました。

それを読んだわたしも、急に足跡が気になり出して、振り返ってみたらそれはもう無惨なもの。人格を疑いたくなるほど気まぐれで、ところどころがに股で、ところどころ千鳥足。がっかりしながら、そういえば今まで自分の足跡のことなど考えたことなどなかったけど、足跡に配慮しないということは自分が遺したものに無頓着ということで、ゴミのポイ捨てとおなじレベルだったのかもしれません。

反省することしきりでしたが、反省したからといって急に節操のある歩き方ができるわけもなく、投書の女性同様、降りしきる雪に輪郭が消されてゆくとほっとするのですが、雪が止んだときが最悪。輪郭がしだいに広がってくるものですから、まるで大男が遺したものみたいになるのです。大きな足跡が他者への配慮などみじんもなく、ずかずかと残されているのですから、こちらが消えてしまいたいぐらい。

そこへ行くと、動物たちの足跡というのはきれいですね。イノシシの遺したものはチューリップの花びらのようだし、カラスが歩いた跡は笹の葉でも散らしたよう・・・。犬・猫の足跡というのも不思議で、前足が遺したものを後ろ足が微妙にズレながらなぞるので、まるで二足歩行をしているように見えるのです。ところが年を取って脚力が落ちてくると、このズレが大きくなるので四足歩行にしか見えないようになる。

そんなわけで、肉球の大きさと足跡のズレ具合を見ると、だいたいどういう連中が徘徊しているのか、その大まかな年恰好までわかるようになるというわけ。これも雪という記録装置のおかげです。野ウサギの足跡は畑のあぶら菜のところでストップ。それも昨日は単独だったのが、複数になっているけど、今ごろ親子というのはありえないから、兄弟、もしくは恋人同士?なんて想像を逞しくしたり、このタヌキ、毎年うちに来てるのだとしたら、この一年でどっと老けこんだみたいだけど、大丈夫なんだろうか、とか・・・。

雪というのはただ記録を残すだけではありません。自然界から送られてくるメッセージの翻訳機でもあるのです。だから雪のあるときだけ、わたしは秘密の手紙を読むことができる。これがほんとうの寒中見舞い、なーんちゃって。わたしもささやかな返事を木の枝に挿したり、雪の中に隠したりしています。それを小鳥が啄んだり、タヌキが掘り返したり・・・。

手紙に書いてあることは、人も動植物もだいたい共通しているんですけどね。春よ、来い。早く、来い。みんな、それを待ち望んでいます。

今週の野菜とレシピ

今週は好子さんのハウス大根が入ります。露地の大根は凍結と解凍を繰り返しているものですから、首の部分が傷んで使いものにならなくなってしまいました。

ハウス大根は煮物よりもサラダなど、生食向き。短冊に切って、鰹節をたっぷりのせ、酢:1、醤油:3、出し:3であっさりいただくか、千六本に切って納豆で和えたりしてどうぞ。

今回も道路の雪はすぐに消えてしまいましたが、畑の雪はしばらく残りそうなので、青山さんのほうれん草はお休みさせていただきます。代わりにかんぴょうが入りますが、これはひな祭りの五目寿司用に・・・。漂白していないので、時間が経つと黄ばんできますから、長期保存の場合は冷凍庫に入れてくださいね。

ニンニクも、野菜が乏しくなる時期に備えて保存してあったもの。毎年、保存中に半分ちかく、中身が虫に食われてしまいます。お手元に届いたものも、すぐにお使いにならない分はスライスして乾燥させたほうが無駄になりませんし、扱いも楽になります。