雑草の効用・2

2011年6月第5週

今週の野菜セット

左から

朝から晩まで、ホトトギスの声が聞こえます。昼間はそれにウグイスが加わってステレオ放送。ウグイスたちが寝静まった後も、トッキョキョカキョクは続くのです。昼間ほど頻繁ではないものの、闇の中から不意にそれが聞こえてくるとドキッとさせられます。

真夜中の不如帰の声血の滴

なんて句があるぐらい。悲壮感のようなものが漂うから、まるでこちらが糾弾されているような気がするんですね。お風呂に入っているときだったら、そんなぬるま湯に浸かってていいのか、みたいな・・・。こっちはこんなに真剣に生きているのに、おまえら、それでいいと思っているのか。もしかしたらウグイスもカラスもスズメもトンビもみな、そういうメッセージを発していたのかもしれない。そう思うと、風呂あがりに冷たいものを飲むのも、なんだか気がひけるようなのです。

自然に囲まれているというのも、いろいろと恩恵を被っている分、肩身の狭いものなのかもしれません。でも、それぐらいがちょうどいいんでしょう。こちらが遠慮も会釈もなしにやりたい放題やっていたら、抗議の声はもっと大きくなって、やがてそれが土石流や山津波となって押し寄せてくるのかもしれませんからね。

町中に住んでいて、自然とは疎遠になっていても、けっして無関係なのではないと思います。町の中の自然といったら、公園の樹木などを思いうかべる向きもあるでしょうが、あれは自然を模した人工物。ほんものの自然はそういうところで駆除の対象にされている雑草のほう。

雑草は自然界の最前線に配備された兵士のようなものですから、人海作戦ならぬ雑草作戦でいたるところ、アスファルトの割れ目のようなところにまで出てきます。放っておけば割れ目を広げ、アスファルトをバラバラにしてしまう。するとススキのようなさらに強靱な兵士が現れ、そこに野鳥が潜むようになるとかれらの糞から雑木が芽を出し、二十年もすればそこは雑木林に姿を変えてしまうのです。

コンクリートジャングルといえども、元はといえばほんもののジャングルだったわけですから、自然はそれを元にもどそう、もどそうとするわけです。田畑も同様、人工物なのでやたらと草が生えてくるわけ。除草剤など撒き散らしても、もっと手強い兵士を出動させるだけで、なんの役にも立ちません。まるで自然が人間を拒んでいるかのよう・・・。でも、ほんとうにそうなのか。自然保護などという言葉を耳にするたびに、居心地のわるいものを感じるのは本末が転倒しているからで、わたしたちのほうが自然に保護される側じゃないかと思うのです。人が死ぬようなコンクリートジャングルの過酷な夏も、どこかにちょっと自然が割り込んだだけでクールダウン。人と動植物が生息するにふさわしい環境になるのですから、要はバランスの問題なのでしょう。

庭先の雑草も最前線の兵士と思うと、そうそう邪険にはできなくなります。畑の草もそう。邪魔になるところだけ刈り取って、皆無にする必要はないのです。とくに果樹などは下草があったほうが実つきがよくなりますし、野菜も根が干渉されない程度に草があったほうが元気がいい。闘うだけの兵士たちではなかったんです。

雑草の効用については先週もお話ししましたが、今週はもっと利用範囲を広げてみましょう。

室内の観葉植物はしばしば病気に見舞われます。不自然な環境に置かれているわけですから、コナカイガラムシに寄生されることもあります。茎のあたりに小麦粉のようなものがついているのがそれ。そういうとき、薬剤などを散布するより手っ取り早いのは、草むらの中に置いてやることです。芝生の上なんかじゃダメですよ。鉢がすっぽり草に埋まってしまうようなところが理想的。コナカイガラムシがついていたら、それを水で洗い流してから、数日間野宿させてやってください。

子供をキャンプに出すようなもの。地元の子供たちと情報交換したりして、一週間もすると見違えるように元気になって帰ってきます。わたしも疲れたときは草むらの中に横たわります。うとうとして目覚めたら、ベッドでひと晩寝るよりもすっきりするんです。頭が痛いときにも効果的。偏頭痛持ちの友人にその話をしたら、さっそく実践したらしく、三十分で痛みがなくなった。でも、蚊に食われたので、今度からは蚊取り線香を持参するとのことでした。

雑草って不思議なところがあって、住人が入れ替わると、庭先の草の種類も変わったりするんです。土壌を中性に保つのも雑草と呼ばれる草たちの仕事ですから、畑の作物によっても草の種類が変わってくる。作物に必要なものを与え、不要なものを吸収するためです。それとおなじことが、そこに出入りする人間によっても起こるんですね。

生活習慣病のある人の場合など、とくにそれが顕著になるみたいです。身体に問題が生じたら、病院の薬よりも、遠方から取り寄せられた薬草よりも、庭先の草をお茶にしたほうがいいんじゃないでしょうか。わたしはこの時期になると草を何種類も陰干ししておきます。これといって身体に問題があるわけではないのですが、頭のほうがちょっとね。これで物忘れが軽減されるといいのですが・・・。

草を育てたくても庭がないとい向きは、プランターに土だけを用意してベランダに置いてみてはどうでしょう。種など蒔かなくても、面白いほど草が生えてくると思いますよ。

今週の野菜とレシピ

ひさびさのニンジンです。葉っぱが大きくなっていますが、細かくきざんで佃煮風にすると食べられます。ちりめんじゃこを油炒めして、葉っぱも加えて炒め、醤油と一味唐辛子少々で調味。仕上げに煎り胡麻をたっぷり加えてください。茎のかたいところはスープ用に冷凍保存しておくといいですよ。

トマトもたまには焼いてみましょう。ニンニクひとかけをスライス。フライパンにオリーブ油を広げてニンニクを入れ、その上に1センチ前後の輪切りにしたトマトを並べます。強火にして、トマトから水分が出てきたら裏返し、塩、胡椒してさらにもうすこし加熱してできあがり。これはカリカリに焼いたパンによく合います。

ズッキーニもスライスしてニンニクといっしょに炒めるとおいしいですよ。

ネギは麺類の薬味にご利用ください。