震災後のクリスマス

2011年12月第4週

今週の野菜セット

左から

寒いですねえ。

毎年、寒波の第一号に遭遇すると、去年もこんなに寒かったかしら、と首をすくめながら思うのですが、夏は夏で、去年はこんなに暑かったかなあ、と思いながら、やがてそれがあたりまえになるのですから、この寒さにもそのうち身体が慣れてくるのでしょう。

朝の寒さも、布団から出るときはつらいのですが、起き出して動きはじめるとそれほどでもなくなって、犬に先導されながら裏山を一周して帰ってくるころには、うっすら汗をかいているぐらい。寒いといっても、北関東あたりではたかが知れているんでしょうね。

気の毒なのは東北の被災地です。壁の薄い仮設住宅に暮らす人々のことを考えたら、これぐらいの寒さで騒ぐなんて不謹慎だとも思いました。

先日、仙台に実家がある友人が震災後、はじめて帰郷してきました。帰ってきたとたん、風邪をひいて寝込んでしまったのですが、ふだん風邪などひいたことのない人です。それが一週間ちかくも高熱で動けませんでした。

ようやく熱が下がったころ、食べられそうなものを持参。話を聞いたら、さいわい実家は津波の被害を免れたそうですが、あたりの風景は一変していたそうです。かろうじて高速道路によじ登ることができた人は助かったけど、間に合わなかった人はみんな流されてしまい、建物も土台のコンクリートを残してきれいになくなっていたそうです。

あんなに海が近くにあると思わなかった、としみじみいうのを聞いて、わたしが想像したのは海岸線からせいぜい四・五キロの風景だったのですが、あとで確認してみたら、益子から宇都宮ぐらいの距離といいますから、二十キロ以上もあったわけです。そりゃあ熱が出るのも無理はない、と思ったのでした。

家の近所に波わけ神社というのがあり、それが津波の被害を免れたものだから注目されるようになり、それまで放ったらかしになっていた社殿が修理され、鳥居も塗りかえられていたそうです。おそらく百年か二百年前におなじような津波の被害を受けた際、後世に警告を遺すために建てられたであろうものが、次の津波が来るころには忘れ去られていたわけです。

たった百年か二百年前の記憶が残らない。世代が交代するうちに、いとも簡単に忘れられてしまうというのがショックでした。この調子だと、太平洋戦争を経験した世代がいなくなる十年後、二十年後がおそろしい。もっとおそろしいのは原発事故の風化であり、捨て場のない放射性廃棄物の管理の問題です。最終処分したそれを、地下深く一万年も保管し続ける計画などというのは狂気の沙汰で、いくらスペシャリストが頭を寄せ合って、一万年後に解読可能な警告を模索したところでナンセンじゃない?

利権と金儲けのためなら、どんな非現実的で無謀なことでもやっちゃえ、やっちゃえ。おれがやらなくても、だれかがやっちゃう。だったらおれが、みたいな無節操。みんな中国のことを上から目線で批判してますけど、この国だっておなじというのは、今回の原発事故収束宣言でも明らかです。もう恥ずかしくて、穴があったら入りたくなりますよね。

クリスマスが近いというのに、暗い話題で申しわけありませんでした。

わたしはクリスチャンではないし、子供たちが巣立ってからはクリスマスの飾りもキャンドルも消え、ただ老母の誕生日というだけでふだんよりすこし華やいだ食卓を囲んでいましたが、今年はべつ。こんな年だからこそ、派手にやりたいものです。

どこの国のどんな神さまでもかまわない。利用できるものは利用させてもらって、年末を明るくしたいものです。そして、こうやって通信を書き続けていられることに感謝。未曾有の不景気の中でも、食事に不自由せず、あたたかくしていられることにも感謝しなければなりません。

この一年も、というか、この一年こそ、ほんとうにありがとうございました。来年もみなさんのお手元に野菜セットが届けられますよう、農家ともども頑張ってゆく所存です。どうかよろしくします。

今週の野菜とレシピ

今年最後の野菜セットです。

クリスマス用にどうしてもレタスを入れたかったのですが、好子さんのレタスがなかなか結球してくれません。こんなボサボサしたレタスは出せない、という好子さんを口説いて出荷してもらいました。レタスではなく、サラダ菜だと思ってご利用くださいね。

イタリアちゃんこ

白菜も入ります。人が集まったら、イタリアちゃんこにしてみませんか。用意するものはトマトの水煮缶(3人以上なら2缶)真鱈、エビ、ホタテ、アサリまたはハマグリといった魚介類のほか、団子用の鶏ミンチ。全部そろえなくてもけっこうですから、真鱈の切り身とアサリかハマグリ、ミンチだけは用意してください。野菜はニンニクひとかけ、白菜半分、椎茸、葱、春菊。それから最後に使うので、ほうとう、またはきしめんの生麺を見つけてください。

大きめの鍋(土鍋が理想的)にオリーブ油をたらし、スライスしたニンニクを炒め、香りが立ってきたところで缶詰のトマトと同量の水を加え、塩、胡椒で調味します。煮立ってきたら鶏団子をスプーンで掬いながら落としてゆきますが、団子はミンチに卵1個、それに小麦粉少々と塩を加えて作ります。スプーンで掬うぐらいですから、ハンバーグよりもかなりやわらかい感じになります。団子が浮いてきたら白菜、椎茸を入れ、魚介類もその上に並べて加熱。煮立ってきたらアクを取りながら葱を入れ、最後に春菊を入れて完成。

みんなであつあつのところを囲んでください。スープがおいしいのですが、飲むのは禁止。なぜなら最後に生麺を入れて煮る必要があるからです。スープが足りないようなら水を加え、弱火でじっくり煮てください。これが絶品。お好みで粉チーズをかけてどうぞ。


ささやかなクリスマスプレゼントも入ります。わが家の月桂樹、昔は毎年お分けしていましたが、樹が大きくなりすぎて枝を落とすのが大変になっていました。とうとう電線にもひっかかって危なくなってきたので、思い切って切りもどすことにしました。そんなわけで今回はたっぷり入ります。キッチンの片隅にでも下げておけば、数年は使えそうです。

プレゼント用にと二十年前、月桂樹を何本か植えましたが、この一本だけ香りが強かったのです。それがこんなに大きくなってしまいました。切りもどしたところで再生してくれるでしょうから、また数年後には大きくなっているでしょう。それまで変わりなく、みなさんに野菜をお届けできるよう祈っています。