雪と霜柱

2012年2月第2週

今週の野菜セット

左から

強面の冬将軍は近年、稀に見る寒さをもたらせてくれました。地面は凍りつき、野菜も縮こまっているみたいです。

ほうれん草は地面に張りついたまま大きくなれず、椎茸も豆粒大のまま成長が止まっているそうです。野菜不足が懸念されますが、それでもまだ雪がないだけマシなのかもしれません。豪雪地帯といわれるところ以外でも、この冬は殺人的な積雪量になっていますものね。

一見、ロマンテイックな雪景色も、そこに閉ざされてしまう生活者にとっては白い悪魔。地吹雪の中を、小学生たちが飛ばされないように、上級生が手にするロープにしがみつきながら登校する話を聞くと、雪国の過酷さが伝わってきます。雪下ろしも命がけ。高齢者世帯の困窮ぶりは想像するにあまりあります。こちらは年に一度か二度の雪かき、それもせいぜい二十センチかそこらの雪を除けただけで、腰が痛いの腕が痛いの騒いでいるのですから・・・。

そんな雪も、畑には恵みをもたらします。どっしりと重たい布団をかぶって休眠することのできる農地は、一年中なにかしら生産することを余儀なくされるところより、土壌が豊かになるからです。生産性は落ちるけれども、投入される資材はすくなくて済むのです。秋口に収穫した野菜を雪室に入れておくと、春まで鮮度が保たれるだけでなく、滋味が増すそうです。たいへんだろうな、と思う反面、うらやましくもあるのですね。

そんな二面性のある雪とは対照的に、容赦なく土を持ち上げ、植物の根を傷めるのが霜柱です。畑ではありませんが、私道の脇に植えていたラベンダーがこの冬の寒さで枯れはじめました。慌てて根元にモミガラと炭の粉を敷いたのですが、どうなりますか。

富良野のラベンダーが有名ですが、北海道の冬は雪で閉ざされるので、ラベンダーも布団をかぶっていられるのです。が、こちらではやわらかい布団ではなく、霜柱という凶暴なものが立つので、冬の前にはそれなりの処置をしておくのですが、十二月のはじめまでがあたたかかったものだから、すっかり忘れていたんですね。そんなわけで、人災なのですが・・・。

家の裏手を歩くと、土が盛り上がっているものだから、ズボッズボッと足が埋まる。だからサンダル履きなどではうろうろできません。ひととおり踏みしめても、翌朝にはまた盛り上がり、夕刻になってもそのままなのです。ところが畑の中ではそういうことが起こらない。野菜が凍りついてガラスのようになっていても、土が持ち上げられるようなことはないのです。

不思議でしょ?わたしも前々から疑問に思っていたのですが、農家と雑談しているうちにわかりました。これは土が生きている証拠だったのです。土中には砂粒よりはるかに多くの菌類や微生物が生息しているからで、それが畑全体をひとつの生命体と化していたわけです。だから土もひと粒ひと粒が孤立せず、しっかりと手を握り合っているから持ち上げられることがない。

ラベンダーも石ころだらけの道路脇でなく、畑の片隅にでも植えられていたら、こんなことにはならなかったのでしょう。ですが、犬を散歩させながら近所の畑を観察していると、あるんですよ、霜柱でボコボコになっている農地というのが・・・。農薬と除草剤、それに加えて化学肥料というのが土を殺しているんでしょうね。

霜に持ち上げられた土はパウダー状になっていますから、春先に強い風が吹けば飛ばされてしまいます。表土の流失という由々しき事態を容易にしてしまう・・・。これはすこしずつ、目には見えない細い糸で子々孫々の首を絞めるようなものなんですけどね。

有機物のしっかり入った生命体にも悩みはあります。それはモグラが侵入しやすいことで、霜柱でボコボコになるような畑にはミミズもいないため、畑のあちこちにモグラ饅頭が盛り上げられるといったことがないのです。

おなじようにミミズがいる畑でも、定期的に耕耘機が入るようなところはモグラも落ち着かないんでしょう。地下室が作られにくいのですが、自家用のアスパラガスやハーブを作っているようなところは、施肥がされるだけなのでモグラにとっては好都合。増築はする、トンネルは延長するとやりたい放題で、いたるところに掻き出された土が盛り上がっています。

植物の真下にそんなものができると、根から養分が吸収できなくなって枯れることもしばしば・・・。ラベンダーは畑にあっても、厳しい環境と直面させられていたのかもしれません。霜柱とモグラ。どっちもどっちで、頭の痛いところですが、表土の流失がない分、こちらのほうがいいんでしょうね。

今週の野菜とレシピ

畑の野菜も乏しくなってきました。心配になってのぞきに行くと、ほうれん草は小さいまま黄色くなりかけているし、葱も葉先が枯れ、頼りない姿になっています。春菊だけがハウス内にあるせいか、のびのびと育っているように見えました。

そんな春菊をチヂミにしてみました。お好み焼きの要領で溶き卵を出汁でのばし、小麦粉を入れたところに春菊をざくざく切って加えます。フライパンに薄くのばして、桜エビを散らし、両面をこんがり焼いたらポン酢をかけて・・・。ちょっと小腹がすいたときに作ってみてください。春菊には頭をすっきりさせる働きがあるので、受験生の夜食には最適なんだそうです。

牛蒡は皮に部分に栄養が集中しているので、取り扱いには要注意です。けっしてタワシなどは使わないように・・・。やさしく手洗いして、汚れを落としてください。水にさらしてアクを抜く習慣がありますが、牛蒡の香りやミネラル分を半減させるだけなので、そのまま使ったほうがよさそうです。

牛蒡を笹掻きにして、油揚げといっしょに炊きこみご飯にすると美味。わたしはこの笹掻きというのが苦手なんですけどね。ふだんは斜めにぶつ切りにして、コンニャクや鶏肉といっしょに煮ていますが、炊きこみご飯のときだけは覚悟を決めて挑戦。そのほうが格段においしくなるからです。

しめじはバターで炒めても、オリーブ油を使っても、仕上げにレモン汁をたらすとぐっと香りがよくなります。酸味と相性がいいのでしょうか。醤油味で煮た場合でも、最後に酢をほんのすこし加えたほうがおいしくなります。

すこし寒さがやわらいだようですが、今週半ばからまた寒波が襲来するみたいです。風邪をひかないよう、しっかり青ものを食べておいてくださいね。