ツバメ・第二話

2012年5月第2週

今週の野菜セット

左から

ゴールデンウィークは大雨に祟られました。しかも、この時期にはめずらしい集中豪雨。日曜日にはあちこちで竜巻も発生しました。年々、気候が荒く、猛々しくなっていくようです。

こんな調子じゃ、この先いったいどうなるんだろう、などと案じていてもしかたがないので、そんなことには気づかぬふりで、雨の合間の山菜採りにうつつを抜かし、ワラビだ、コゴミだ、ゼンマイだ・・・。見つけるたびに高揚してきて、カゴの重さと反比例するように、身も心も軽くなって帰ってきます。

これも植物の力といったらいいんでしょうか。食べる前から身体にエネルギーが注ぎこまれてくる感じ。そのうえ手入れもされず、荒れ放題になった山の中でも空き地でも、めげずに毎年顔を出し「わたしはここよ」といわんばかりのサインを送ってくれるのです。その健気さ、ありがたさに心も満たされるんでしょう。同行している犬のほうは、またはじまった、という顔をしているんですけどね。

ツバメの話の続きです。わが家のガレージの梁に営巣中だったツバメが、巣の完成途中でいなくなってしまい、どうしたんだろうと思っていたら、またつがいが来て巣作りをはじめました。ところがそれも中断していなくなったのです。なんか、いやーな予感がします。

ツバメが巣を作った家は火事にならないとか、地震が来ても大丈夫だとかっていいますものね。だから人はツバメの営巣を歓迎するし、ツバメのほうもほかの野鳥に妨害されないため、人の出入りの多いところや人家の軒先を選んでいるわけ。おたがいに利点があるのですが、とくにこちらは人には持ち合わせのない、野生の予知能力をアテにしているので、いってみれば保険のような意味合いがあるのでした。

二十年以上、毎年ツバメが飛来して、ガレージの中と南側の軒先に営巣していたのです。それが今年にかぎって、南側には現れない。ガレージのほうは二度にわたって中断されたのですから、突然保険を絶たれたみたいな心許なさがあるんですね。なにもなければいいんですけど・・・。

ところで人がツバメの営巣を歓迎するようになったのは、近年になってからで、日本なら江戸時代。それ以前は、アジアといわずヨーロッパといわず、不吉なものとして、むしろ忌みきらわれていたんだそうです。

それは渡りの習性が判明されてなかったからで、夏の終わりに姿を消してしまうツバメはどこへ行ってしまうのか。ここが不思議なところなんですが、洋の東西を問わず、ツバメは冬の間、海に潜っていると考えられていたそうです。

夏は空中を舞いながら虫を捕り、冬はペンギンさながら、海中で魚を捕っていたことになるのですが、かつて水辺は死の領域というか、冥界に通じるものと捉えられていたので、この世とあの世を行き来する不思議な鳥。あの世をひきずった不気味な鳥という見方をされていたのです。

かのピタゴラスも弟子たちに、ツバメの巣を軒先に作らせるな、といっていたぐらい。迷惑な誤解でしょ。でも、もっと迷惑なのは、ツバメは海の底から霊力のある小石を運んでくるという伝承で、その石には病気を治す力がある。とくに眼病に効果があるというので、巣の中を探って小石が見つからないと、それを持って来させるためにヒナの目を潰すといった残酷なことが行われていたのでした。

日本でも、かぐや姫が求婚してきた右大臣だか左大臣に、つばくろ(ツバメのこと)の石を取って来させようとしてるでしょ。無理難題の代名詞みたいなつばくろの石の意味がこれでわかったのですが、発想も不思議なら、日本人もヨーロッパ人もおなじことを考えていたというのも不思議。人は大河のような無意識という暗渠でつながっているのかもしれません。

それはともかく、近年になって渡り鳥であることがわかったとたん、手のひらを返したように、今度は世界中で幸福のシンボルみたいになってしまった。おなじように害虫を駆除してくれるコウモリが、今なおダークな地位に置かれたままであるにもかかわらずです。長い間、誤解したり迫害したりした罪滅ぼしみたいなところがあるのかもしれませんね。

それにしてもわが家はこのまま、ツバメの巣のない丸裸状態でこの夏を越さねばならないのでしょうか。やっぱりちょっと不安です。

今週の野菜とレシピ

タケノコに続いて、今週はフキが入ります。これもできればその日のうちに下ごしらえを済ませてください。

まず葉っぱと茎を切り離し、先に茎のほうを湯がきます。残ったお湯に葉っぱを入れて、こちらはすぐに引き上げてください。茎のほうは皮を剥いて食べやすい大きさに切り、煮ものか、油炒めしてきんぴらに・・・。

葉っぱは縦横に包丁を入れてから絞って水気を取り、同量の酒と醤油で煮てください。汁気がなくなってきたら、炒りつけるようにしてさらに水分を飛ばし、鰹節をたっぷりまぶして即席の佃煮に・・・。

牛蒡は収穫してから土中に埋めておいたものなので、いくらか固くなっているかもしれません。したがって生食はせず、煮ものがおすすめ。薄味で煮ふくめておいた牛蒡に、小麦粉・溶き卵・パン粉の順で衣をつけ、フライにしてもおいしいですよ。種を取った梅干しを細かく叩き、醤油と水と蜂蜜を小匙に一杯ずつ加えたソースがおすすめ。

オカヒジキはさっと湯がいて、そのまま醤油とマヨネーズでどうぞ。しゃりしゃりした食感がさわやかです。

あぶら菜は花が咲きはじめました。花が開くと茎がかたくなってしまうため、途中から京菜に代えさせていただくかもしれません。その際はご容赦ください。


真岡と益子の一部にも竜巻の被害がありました。ニュース報道を見た方々からお電話をいただいていますが、農家にもわたしたちにも被害はなく、事務所も無事。ご心配をおかけしました。

ただ大粒の雹が降ったため、好子さんのほうれん草に穴が開いてしまいました。困ったことではありますが、この程度の被害で済んでよかったと一同、胸をなで下ろしているところです。