サギの子別れ

2012年9月第4週

今週の野菜セット

左から

先週、強すぎる夏の高気圧をだれか、どこかにやってくれといったところ、ほんとうにどこかへ行ってしまったみたいです。どなたかは存じませんが、大仕事をありがとうございました。

おかげさまで大地は潤い、息も絶え絶えだった夏野菜が今ごろ元気になったりしています。葉もの類も順調に伸びはじめたみたいです。ほっとひと安心。わたしたちもずいぶん過ごしやすくなりました。

ほっとひと息ついたところで出てくるのが夏の疲れで、泣かずに歯をくいしばっていた迷子の幼児が、母親の腕に抱かれたとたん大泣きするように、わたしたちの身体も安全圏に達すると安心するんでしょうか。堰を切ったように、溜まりに溜まったストレスが発散されるみたいです。そういうときにいろいろ不調が出てくるので、ご用心。

夏の間、浅い眠りが続いていたせいか、それを取りもどすかのように眠りも深くなっています。春眠ならぬ、秋眠暁を覚えず状態がしばらく続きそうです。

みなさんもゆっくり身体を休めておいてくださいね。

涼しくなりはじめたころから、日暮れどきに奇怪な鳥の声が聞こえるようになりました。ときには夜が更けてから聞こえることもあります。

ギャーッという、ただならぬ響きが闇をつんざくのです。一瞬、フクロウかと思いましたが、フクロウはホロスケホーといつも通りに鳴いています。子別れのとき、雌フクロウはすさまじい叫び声で子供たちを遠ざけますが、それはもっと寒くなってからのこと。こんな時期にこんな声を出す鳥って、いったいだれだ?

夕刻の散歩中に謎が解けました。日の暮れるのが早くなって、明るいうちに家を出ても、すぐに暗くなってしまいます。そんな薄暗がりの中、稲刈りの終わった田圃に二羽のサギの姿がありました。白いサギと羽色が保護色のサギ。親子です。その親のほうがつきまとうグレーのサギを追い払っているのです。

そのときにギャーッという声の主がわかったんですね。

稲刈りの前には田圃の水が抜かれます。用水路にも水はもう流れていませんから、かれらの食糧が乏しくなってきているんでしょう。そこで親鳥は子供を残して飛び立つ準備をしているわけです。

親鳥の行く先は紀伊半島や四国といった温暖なところで、ツバメのように海外まで出かけるわけではありません。それでも渡りにはリスクが伴いますから、子供は残して行くのです。幼鳥だけなら河川や用水池で餌を取ることができるようになったからでしょう。このあたりの冬がもっと厳しかったころは、いっしょに飛び立っていたんでしょうけどね。

親子が離ればなれになるのは、比較的最近になってからの慣習みたいです。

だから子供のほうも諦めがわるいのかもしれません。親鳥を追うギャーッと、それを振り切るギャーッがしばらく続きそう・・・。しかし、白鳥にしてもツルやサギにしても、姿形のうつくしい鳥にかぎって声がわるいというのはどういう天の采配なんでしょうね。

稲刈りの時期になると、どういうわけか雨が降りやすくなります。雨の後、二・三日は稲刈りができなくなるのですが、そのころにはまた雨が降る。ま、台風でないのが救いなんですけどね。

そんなわけで青山さんもなかなか本腰を入れられないでいます。新米は来月に入ってからになりそうです。申しわけありません。

お詫びついでに高橋梅子さんの梅干しも、例年ならもう出てくる時期なのですが、今年は梅が不作。不作といってもふつう、どこかの家の梅は成っているものですが、今年はこのあたり一体が全滅でした。そんなわけで毎年、梅干しを楽しみにしていた方にはごめんなさい。

じつはもうひとつ、お詫びしなければならないことがありまして、来月あたりから登場していた馬田さんの椎茸も今年は入らないことになりました。馬田さんの椎茸は菌床にクズ繭の繊維を使った特殊なもので、屋内で栽培されているのですが、それでも去年は風評被害に遭ったそうです。一時は撤退も考えたそうですが、思い切ってお金を借りて再出発してくれることになりました。設備に手を入れて温度管理ができやすいように作り直すそうです。去年の冬は寒すぎて、椎茸がまったく育たちませんでしたからね。

わたしも知りませんでしたが、椎茸は菌床作りから生育まで十一ケ月もかかるんだそうです。そんなわけで今期の椎茸はもう間に合わなくなりました。重ね重ね申しわけありません。

でも、来年は椎茸も復活しますし、梅も実をつけてくれるでしょう。先の長い話ではありますが、今後にご期待ください。

今週の野菜とレシピ

今週末が十五夜なので、先週に引き続き里芋が入ります。大きめのものは煮っころがし。小ぶりの芋は衣かつぎでお供えしてはどうでしょう。

牛蒡も入りました。新牛蒡はサラダがおすすめ。薄くスライスして醤油をまぶしただけの即席漬けもおいしいですよ。

うれしいのは小松菜です。まだ小ぶりですが、味噌汁にご利用ください。秋風が立つと味噌汁が身体中に染みわたるようにおいしく感じられるものです。とくに青菜の味噌汁は夏の疲れを取ってくれそう・・・。来週からはもっと立派な小松菜が入ると思います。

先日、スーパーの野菜売り場に行ってみたら、ネギがびっくりするような高値になっていました。それで青山さんが、まだちょっと早い、というのに無理をいって出してもらいました。やっぱり味噌汁といったらネギですものね。

すだちは旬のサンマに添えてどうぞ。