遅い春

2012年4月第2週

今週の野菜セット

左から

庭の斜面のレンギョウが黄色い炎のように燃えさかっています。サンシュユも炒り卵のような花をつけ、その足元には水仙が咲き乱れています。一面、黄色ばかりの春ですが、もうすぐそこにピンクが加わります。今週末あたり、このあたりでもお花見になりそうです。

山の色も変わってきました。日光連山はまだ頂に雪をのせていますが、近くの山々はうっすらと桃色がかって、あたたかい色合いになってきました。山に入ると、木の芽がふくらみはじめる気配。ちいさな芽から、さあ、動きはじめるぞ、といった気迫のようなエネルギー体が立ち上がり、それが透明な蝋燭の炎のように見えるのです。

木々の枝に無数の火が灯るから、山全体が赤みを帯びてくるのかな。しかし、それもつかの間。すぐ新緑に覆われて、あたりが一気に若返ります。どさくさに紛れてこちらも若返らせてもらおうと、毎週末、お握りをリュックに入れて山登りに参加。今回はカタクリが群生するところへ行ってきましたが、花はまだちらほら・・・。今年のピンクは樹上も足下も、かなり遅れているようです。

おかげで野菜の生育も遅れています。それに加えて、このところの強風でなかなか畑に耕耘機も入れられないので、農作業まで遅れ気味。今年も波乱の多い年になりそうです。

でも、農業というのは毎年なにかしら、想定外の支障がつきまとうものです。農家にいわせると、土作りさえちゃんとやっておけば、あとは野菜が自分でなんとかやってくれるから・・・。農家が作ってるなんていうけど、農家なんかなんにもしていない。ただ、寝床とご飯の用意をしてやってるだけ、ということになるのですが、こういうことがいえる人はプロ中のプロなんでしょうね。

寝床の作りかただって、野菜の種類によってベッドメイクの仕方がちがうし、ご飯はご飯で野菜の顔色を見ながら、おかずを調整しなくちゃならない。あとは天候まかせということになるのですから、想定外はあたりまえなのかもしれません。だから自然を前にしては、いやでも謙虚にならざるを得ない。モラリストにならざるを得ないのでしょう。

近代化とは、そういうモラルを摩滅させ、置き去りにすることだったんだなあ、と実感させてくれたのが去年の大地震です。それに伴う原発事故が、わたしたちの在りかたを足元から揺さぶりました。この痛みが致命傷になるか、陣痛に置き換えることができるか。それがわたしたちの将来を左右するはずでしたが、なかなか進展は見られないみたいですね。

でも、人の意識は確実に変わったはずですから、世の中も徐々に変わってくるでしょう。よきことは蝸牛の歩みで進む、というぐらいですから・・・。ちいさな八百屋も細々と営業を続けながら、長い陣痛に耐えています。波乱含みとはいえ、確実に巡ってくる季節がわたしたちの仕事を後押ししてくれています。自然を見方につけるぐらい心強いことはありませんものね。

今週の野菜とレシピ

今週は小松菜京菜菜の花が入りますが、かぶミニ大根の葉も加えると青菜だらけ。今週は青菜で春を演出してみませんか。

ミニ大根は短冊にスライスしてサラダ。鰹節をかけて酢:1、砂糖:1、水:1、醤油:3の割合で作る和風ドレッシングで…。漬け物とサラダの中間みたいですが、ご飯によく合います。

京菜も3センチ前後に切り、油炒めしてカリッとさせたちりめんじゃこをのせ、おなじドレッシングで食べてみてください。

ミニ大根の葉は菜飯に、かぶの葉は味噌汁でどうぞ。

絹さやにはレシピなど不要でしょう。もう姿から味から香りから春そのものですものね。野口さんのグループは柑橘農家が主流でしたが、すこしずつ若手の野菜農家が参入しているそうです。おかげでわたしたちも、こんなに早く絹さやを手にできるようになりました。このあたりではどんなに早くても、来月中旬以降になります。ひと足早い春の香りをお楽しみください。