冬支度

2012年10月第4週

今週の野菜セット

左から

すこしずつ冬の気配が感じられるようになりました。

夏の間、外してあった間仕切りをセット。炬燵布団を出してきて、薪を運び入れ、衣類を入れ替えて・・・。本格的に寒くなる前に、障子も張り替えておかなければなりません。手ぐすね引いて待っていたはずの冬支度も、いざそれがはじまると例年通り、あたふたさせらるんですね。

畑のほうは、今月末に空豆や絹さやといった豆類の種を蒔いてしまえば、あとはニンニクを残すのみ。枯れて軽くさせておいたトマトやゴーヤの蔓を、すこしずつ運び出してしまえば、これまた待望の農閑期がやって来るわけです。

今が盛りのコスモスが一掃されると、庭も畑も広がって、倍ちかくなったように感じられます。コスモスの根は土をしっかり抱えこんでいて、しかも背丈がありますから重量が半端じゃない。後かたづけをするたびに、来年こそ小さいうちに処分してしまおうと思うのですが、夏のはじめに涼しげな葉をつけているのを見ると、ついつい油断して、畑の周辺ぐらいは残してやろうと思うんですね。それが巨大化して、秋の終わりには後悔する。そんなことをかれこれ二十年あまり、性懲りもなく繰り返しているしだいです。

反対に、家の中は狭くなります。座卓に布団がプラスされただけで、部屋がひとまわり小さくなったように感じられますものね。

感じだけならいいんですけど、物理的に狭くなってしまうのが寝床でありまして、夏の間、寄りつきもしなかった犬と猫がぴったりと身を寄せてくるようになります。寒くなると腰や背中が凝るのは、睡眠時の不自然な姿勢のせいじゃないか、とアラレちゃんと話し合っています。彼女も三匹の猫といっしょで、そのうちの一匹は股ぐらを占拠するので、寝返りも打てないといいますからね。

犬と猫、いっしょに寝ていてどちらが邪魔になるかというと、じつをいうと猫のほうなのです。犬は猫の何倍も体積があるにもかかわらず、こちらが寝返りを打とうとすると、すっと身を引いてくれますが、猫のほうは頑として動かない。それどころかもたれかかってくるので、こちらのほうが身を引くことになり、いつの間にか中央部を乗っ取られる形になるんですね。いっしょに寝ていると、体重が数分の一しかない猫のほうが犬よりも重たく感じられることになるのです。それに犬は滅多と布団の中には入って来ませんしね。

じゃあ、かれらがいないと安眠できるのかというと、そうでもないところが困ったもので、そういう状況に慣れてしまうと、逆に広々した寝床が寒々しく感じられるようになってしまいます。邪魔だ、邪魔だと思いながら、いつの間にか依存しているわけ。おそろしい生きものたちだと思います。

この事務所に居候している猫たちも、いまのところ、まだ好き勝手な場所を選んで寝ているようですが、寒くなってくるとアラレちゃんの机下の保温マットの上に集まってきます。ここの猫たちのすごいところは、身よりのない寄せ集めのオスたちが喧嘩もせず、まるで家族のように暮らしている点です。しかも全員タマつき。去勢されているわけではありません。

長老格のダイちゃんはもうヨボヨボで、かつてはくっきりしていたアメリカンショートヘアの縞模様もあいまいになって、身体も臭い。こうなると、いやこうなる前に追い出されてしまうのがふつうですが、ここではそんなオジンも若者も身を寄せ合って冬の夜を過ごしているのです。

なぜそんなことが可能なのかというと、ここにいるオスたちはみんな子猫時代、ダイちゃんの世話になっていて、ダイちゃんが台所に案内し、子猫たちにご飯を食べさせていたのです。子猫たちのお腹をいっぱいにしてから、自分が食べる。足りなければアラレちゃんにおかわりを催促するわけですから、正確には彼が養っているわけではないのですが、そんなことをする猫はなかなかいるものではありません。しかも彼の場合、子猫が若者に成長しても、自分のテリトリーから追い出さないのです。

だからこれだけオス猫がうろうろしていても、ここでは猫の喧嘩に特有のあの耳障りな声を耳にすることはありません。ダイちゃんに育てられたオスたちも、後から来る猫におなじようにするからです。ただ、不思議なことにメス猫が居着かない。どういうわけか、車に轢かれたりして行方不明になってしまうんですね。ここは猫の修道院のようなところなのかもしれません。

ヨボヨボの修道士・ダイちゃんは毎年、夏を超えられるかなあ、と案じられているのですが、今年の長い夏もついにクリア。たまに数週間ほど姿を消し、そのたびにダイちゃん、いよいよ死に場を探して旅立ったのかな、などといっていると、まるでそれが聞こえたかのようにふらりと舞いもどってくる。不死身です。ダイちゃんを見ていると、行いがいいと長生きするとか、情けは他人のためならず、などというのが実感されますから、さすがは修道士です。

夏を超えたら、今度は冬の試練。でも、長老ならそれも難なくクリアするのかもしれませんね。

今週の野菜とレシピ

今週もかぶが入ります。先週よりいくらか大きくなっているでしょうか。味噌汁はもちろん、あっさり仕立てのスープにも、濃厚なクリームスープにも合います。いずれの場合も、葉っぱのきれいなところを刻んで、最後に彩りとしてお使いください。

待望のほうれん草も出てきました。おひたしや胡麻和えでどうぞ。

里芋は煮っころがしや実だくさんの汁ものなどに使われますが、新米のおいしい時期には炊きこみご飯もお試しください。皮を剥いて煮っころがしよりも小さく、ひと口大に切ったらボウルに入れ、塩ひとつまみで揉んでおきます。米を炊くときに水ではなく出汁を入れますが、醤油が入る分、差し引くいておくのがコツ。里芋を加えたら、後はふつうに炊いてください。

茶碗に盛りわけたら、お好みで柚子の皮をすり下ろしたものを散らしてください。ほんとうなら柚子もいっしょにお送りするところですが、今年はこのあたり一帯、柚子が不作です。うちの柚子の木も見渡したところ、高いところに一個か二個。隣近所を見回しても似たり寄ったりで、柿といい、柚子といい、どうなってるんでしょう。そういえば今年は梅も不作でしたしね。

あちこちでクマの目撃情報が増えていますが、危険を冒して人里に出てきても、こんな状況です。クマ一匹、イノシシ一匹も養えないなんて、わたしたちも貧しくなったものですね。