ムカデの真意

2012年7月第3週

今週の野菜セット

左から

梅雨のおわりに大雨が降るのはめずらしいことではありませんが、今回のは桁外れ。こちらは大雨こそ降りませんが、水曜日は一日中、台風並の大風に悩まされました。

台風ならそれなりの情報もあるし、それなりの対処もできるのですが、なんの予告もなく風が吹き荒れるのですから、家のまわりはぐちゃぐちゃ。バケツは林の中まで飛ばされている。植木鉢は倒れている。ようやく大きくなってきたズッキーニも半分ぐらいねじ切られてしまいました。とはいっても、大水の被害にくらべたら、たいしたことはないのですけど‥・。

ニュース映像を見ると、局地的とはいえ、一年前の津波を彷彿させるような光景が広がっています。先週の中沢新一の言葉のように、わたしたちはやっぱり「不安定な鯨や龍の背中のうえ」で暮らしているようです。どんなに堅固な建物も、不動に見える要塞も砂上の楼閣。そんなところで蓄財に励む行為ほど愚かなものはない、と思ったしだいです。

そんな愚かさに背を向けて、私生活をもないがしろにするような多忙な日々を送っている人がいます。わたしの家にストーブ用の薪を運んでくれている人ですが、彼は薪屋以外にもたくさんの顔を持っています。

まず、彼はモニョンゴロ村の村長さんです。モニョンゴロというのはケニアのキクユ語でムカデの意。なぜムカデなのかというと、ムカデ競争ではいちばん弱い者に歩調を合わせないと前進できない。どんなに強い者も倒れてしまう、というところから来ているそうです。

村には村立モニョンゴロ銀行というのがあり、そこでは貧しい子供、病気で弱っている子供、うちひしがれている子供たちに絵を描いてもらい、それを貨幣として村内に流通させます。その絵に価値があるのは、子供たちそのものが未来であり、希望の存在だからです。その人類共通の希望や夢を「信用」としているわけですね。

子供たちの絵一枚に対して百円を、子供たちの所属する施設や寺子屋、病院に寄付。村内でも百円の価値を持っていますが、ふつうの貨幣とちがうところは、一年後には通用しなくなること。だから子供たちにはどんどん絵を描いてもらう必要があるのです。

でも、絵そのものに価値がなくなるわけではありません。逆にそれはほんものの財産として保管され、二十年後、子供たちが大人になるころに学校や病院に展示され、タイムカプセルの役割を果たすわけです。大人になった子供たちは自分の絵に再会すると、かつての自分を思い出すと同時に、身近な子供たちをたいせつにしてくれるはずです。

この発案ってすごいでしょう。いつもせわしなく動きまわっているので、真冬でも汗をかいているような、風采の上がらない(ごめんなさい)男性が急に輝かしく見えたものです。ケニアで数年間、ボランティア活動をしたことがあるにしても、そういう活動を一生涯持続させるというのはなまなかなことではありません。薪屋をはじめたのも、もとはといえば障害児の支援のためで、そのために営林署に勤務したとのこと。今、薪割りに従事しているのは福島から避難してきた人たちだそうです。

去年は陸前高田に通いつめ、はじめのうちは避難所に五右衛門風呂を設置して歩いたり、子供たちにピザを作らせたりしていましたが、その後はなにもかも失った漁師さんたちにコンテナや浮き球を届ける活動。震災から半年後、漁師さんたちに益子焼きの湯飲みとご飯茶碗を届け、これがはじめての支援だといわれたときはショックを受けて帰ってきました。

行政はほんとうにアテにならない。今は福島県の白川でラベンダー畑を作り、エッセンシャルオイル作りで村を復興させるプロジェクトを立ちあげています。オイルは放射性物質の影響を受けないからですね。それと同時に、幼稚園や保育所に砂を届ける活動もはじまりました。幼ない子供たちが砂遊びをさせてもらせない。これは学校へ行けないよりも、はるかに重大な影響を子供の脳に与えるのではないかと危惧したからで、大事をとってオーストラリアから砂を取り寄せたら、莫大な費用が掛かると判明。そこで長野県から買いつけたのですが、幼児が遊ぶ砂のことです。万が一のことがあってはいけません。

そこで定期的に野菜を検査に出しているわたしのところにサンプル用の砂が来ました。事情を説明したら優先的にやってくれて、しかも通常三十分かける検査の後、一時間の追検査までやってくれました。結果はOK。ちなみに益子GEFの野菜もいちいち報告はしていませんが、ちゃんと検査して、不検出と出ていますのでご安心くださいね。

以上、わたしの知り得た活動を並べてきましたが、ほかにも知らないことがたくさんありそうです。でも、これだけでもすごいでしょ。現にわたしのところへ砂を持ってきたときも、二十三時間かけて軽トラを運転してきた直後。疲労困憊していてもおかしくないのに、またあたふたと走り去ってしまいました。

今、モニョンゴロ村では協力者やスタッフの移動用の車を探しています。七人乗り以上のワゴン車が必要だとのこと。毎回、レンタカーを使っていたのでは、活動に支障が出そうだからです。車種・年式は問いません。ちゃんと動きさえすればOK。名義変更、車検は村のほうでするそうです。どなたか心当たりがありましたら、ご一報ください。

今週の野菜とレシピ

好子さんの枝豆が入ります。サヤの両端を鋏で落とし、水洗いしてから塩をふって揉んでおくと茄であがったときの色がきれいです。

ちいさなカボチャも出てきました。扱いやすいサイズなので、煮物、揚げもの、サラダでどうぞ。

来週はトウモロコシが入るかもしれません。オクラもそろそろメニューに加わってほしいもの。ここ数日の暑さで、ゴーヤもようやく蔓が伸びてはじめ、花がついているところもあります。夏本番ももうすぐですね。