里山のこと

2012年12月第1週

今週の野菜セット

左から

なんだかんだいってるうちに、もう師走。ただでさえ足早に過ぎてゆく時間が、ここへ来て急に駆け足になったようです。年内にこれをやらなくちゃ、あれもやっておかなくちゃ、と思うと気ぜわしくなる一方・・・。

今年は秋の訪れが遅かったので、紅葉がまだ残っていたりします。そんなわけで師走に入ってから落ち葉攫い。草木染めの敷物みたいで風情はあるのですが、そのままにしておくと人間も車もスリップするし、春先、庭中が毛虫だらけにもなってしまうかも・・・。葉っぱに卵が産みつけられていることがあるんですね。だから面倒でもひとまとめにするのですが、それを焚くか、米ぬかなどといっしょに発酵させるか、いずれにせよ熱処理をしておくわけです。

人の手が入らない山の中で蛾も毛虫も大量発生しないのは、もともと地面に敷きつめられ、腐葉土と化した古い落ち葉が、新しいものを分解しているから。要するに、わたしなんぞがここにいなければ、こんなことをしなくても自然と循環するんだろうな、と思いながら毎年汗にまみれているしだい。この汗でよく風邪をひくのですが、これもまた身中の虫を熱処理しているのかもしれませんね。

今、戸外では横殴りの風に初雪が舞っています。朝、起き出したときよりも気温がぐんぐん下がっている感じ。ま、これで青物も白菜も滋味を増すんでしょうが、あれだけ冬の訪れを待っていたにもかかわらず、人間のほうは心の準備が足りなかったのでしょうか。あたふたしています。

でもね、こんな日でも山の中というのは意外とあたたかいんですよ。葉を落とした裸木でも風をってくれる上、日が出ていれば足元まで陽光が届くからです。おなじように林立していても、コンクリートジャングルがビル風を生み出すのとは大ちがい。暑さも寒さもやわらげてくれるのが里山です。

そんなところに、高濃度の放射性物質を含む廃棄物が捨てられようとしています。矢板市の話ですが、他人事ではありません。国有林といっても2ヘクタールかそこらの面積。住民にとっては里山みたいなものでしょう。ゴミの不法投棄も許せないようなところへ、お国が厄介ものを押しつけようとしているわけです。危険はないといわれたところで、アテにならないどころか、なにも考えずに安全など保証してしまう無神経さがおそろしい。

わが家の裏手にあるのも国有林で、問題になっているところよりはるかに広大です。国有林といったって、国が管理をしているわけではありません。林野庁から委託を受けた森林組合が、年に一度、人を雇って境界線を見てまわるだけ。管理するのは民有林と国有林を区別する標識だけなんです。

そこに不法投棄されたゴミや、倒木をかたづけたりするのは住民の側。頼まれもしないのに無報酬でそんなことをしているのは、国有林というよりも、自分たちの里山という意識のほうが強いからだと思います。そんな裏庭みたいなところへ8000ベクレル以上の廃棄物が埋められたら・・・。担当する官庁に常識と冷静な判断力があれば、東電の敷地内で処分させるはずだと思うんですけどね。

樹木が葉を落とし、下草が枯れてなくなるこの時期から、山に入る人が多くなります。ゴミを拾う人、登山道を整備する人、スギやヒノキの間伐をする人に、ただ単にトレッキングを楽しむ人まで・・・。そんなところに立ち入り禁止区域ができるというのは、やっぱり不自然だし、国の決定でそんなことが可能になるなら、それは徴兵制度と同質の暴挙だとは思いませんか?

暮れには尾根に上がって若松を採り、谷間に降りて鏡餅の下に敷くウラジロを探します。こんなささやかな仕合わせは、ささやかだからこそ守りたいものです。

今週の野菜とレシピ

白菜

今週は白菜が入って鍋ものセット。鍋ものだけで消化しきれなかった白菜は、中華風の煮物がおすすめ。白菜のほかに用意するものは、ニンジンと干し椎茸、春雨に生姜です。ほんとうなら肉団子を用意したいところですが、面倒ならロースハムかベーコンでも可。

干し椎茸と春雨はぬるま湯でもどしておきます。肉団子はハンバーグの要領で、それにみじん切りの生姜を加えるだけ。スプーンを使って団子にしながら揚げておきます。

中華鍋に油を敷いてを強火にかけ、細切りにした生姜を炒め、香りが立ってきたら短冊に切ったニンジンを入れ、ざく切りにした白菜を芯のほうから炒めてゆきます。足りなければ途中で油を足してくださいね。ある程度炒めて、全体に油がからまったらひたひたになるまで水を加え、煮立ってきたら肉団子と干し椎茸を入れ、塩、胡椒、オイスターソースで調味。最後に食べやすいように包丁を入れた春雨を加え、水どき片栗粉でとろみをつけ、香り用の胡麻油少々をたらしたら完成。

味のつけかたひとつで中華丼にもなれば、スープにもなるし、おかずにもなる。中途半端に残ったら、これに小松菜を加えて目先を変えることもできます。とにかく野菜が食べきれないと思ったら、これ。身体があたたまります。


青山さんのニンジンがうれしいですね。この夏の旱魃の影響で、三度目に種を蒔いてようやく発芽したものです。遅くなって申しわけありませんでした。

遅いといえば、今年はじゃが芋と玉葱の入荷も異常に遅れています。異常に遅いのは異常事態が発生したからで、じゃが芋を作っていた横畠さんが収穫を目前にして脳梗塞で倒れていたのでした。なかなか連絡がつかなかったのですが、玉葱だけは送ってもらえることになり、来週にはみなさんにお届けできます。が、じゃが芋は収穫できないまま、雪に埋もれることになりそうです。ご近所とか仲間内の力でなんとかならないものかと思うんですけどね。

横畠さんとおなじ微生物の力を借りてじゃが芋を作っている人もいるのですが、今年の分はもう完売。そんなわけでこの冬はじゃが芋が入らないことになります。芋がないのも困ったものですが、こうやって農家が一人ずつ消えてゆくのはもっと深刻。農業が滅んでしまったら、わたしたちの子孫はどうなってしまうんでしょうね。