雪の温度

2012年2月第4週

今週の野菜セット

左から

陽光は春めいてきましたが、まだまだ寒さが続きそうです。三寒四温にもほど遠く、今はまだ六寒一温といった感じでしょうか。

週末には二度目の雪が舞いました。夕刻の散歩中だったのですが、気温が低く、風も強く、顔面が痛いほどだったのが、雪が舞いはじめたとたん、それが温むのには驚きました。ほんの一・二度の変化なのでしょうが、凍りつきそうになっていた顔面が真綿で覆われたようにあたたかくなる・・・。歩いているうちに身体があたたまったからだろう、と思っていたのですが、雪が止むと同時にまた痛いような冷たさがもどってくるのです。

雪は気まぐれに、降ったかとすぐに止み、またしばらくすると舞いはじめるといった具合で、そのたびに気温が上下するのが面白く、けっこうな距離を歩いてきました。雪はあたたかいという大発見(?)で、テンションが上がっていたんでしょうね。雨だってあたたかいのかもしれませんが、雨の場合は衣類が濡れるので体温が奪われてしまいます。雪にはそれがないのです。

もっとも大雪となれば話はべつ。豪雪地帯に住む人たちに、雪はあたたかいなんていったら怒られそうです。あちらの雪はあたたかいのを通り越して、凶器となるほど熱く、重たいものなのかもしれません。早く雪解けの季節になって、ほんもののあたたかさに出会いたいものです。

さいわい、このあたりの積雪は今回も数センチで済みました。出勤途中、青山さんの畑の脇を通ってきましたが、霜に痛めつけられて大きくなれないまま、葉先が黄色くなっていたほうれん草にも、あたたかそうな布団が掛かっていました。肌掛け布団程度ではありますが、それが解けて徐々に気温が上がってくれば、息を吹きかえしてくれそうです。

ビニールハウスでは、春大根とかぶが行儀よく並んでいます。ようやく見通しが明るくなってきた感じですが、ブロッコリーのほうは乾燥野菜と化していて、復活の見込みはなさそうでした。秋口の気温が高かったので、種蒔きが遅れてしまったからです。もったいないですねえ。

地中ではいろんなものがうごめきはじめています。フキノトウが顔を出しはじめたら、地中の動きが加速されて植物は根を伸ばし、冬眠中の生きものたちも眠い目をこすりながら動きはじめます。地球の深部から低周波が出てくるからで、啓蟄のころ、それが最大になる。それが目覚まし時計のベルになるわけです。うるさくて寝ていられないから、虫もカエルも地表ちかくまで移動してきて、わたしたち同様、もうちょっと、あと五分などといいながらとろとろと眠るわけです。

春がちかいからでしょう。わたしたちの寝起きもわるくなってきました。カエルやヘビもこんな気分なんだろうなと思いながら、布団から出るのがためらわれ、なまあたたかい眠りの沼に沈んでゆく・・・。これがまた心地よいから困ったものです。

でも、動物たちとちがって、春眠暁を覚えずというのはミネラル不足にほかなりません。だから春先にはフキノトウをはじめ、山菜や野草の苦みでミネラルを補給するわけです。とくにこの時期、カルシウムが不足しやすいのは、冬の寒さというストレスを緩和するために、大量に消費されてきたからで、それが補充されないと、生体はみずからの骨の中からそれを補おうとします。とくに女性は骨粗鬆症になりやすいので要注意。青菜や海藻類を努めて摂るようにしなければなりません。

最近では若い人たちの間でも、骨粗鬆症が増えていますが、それはおそらく食生活のせい。野菜ばなれ、とくに青菜が敬遠されるようになったのがいちばんの原因でしょう。毎日牛乳を飲んでいるからとか、サプリメントで補っているから大丈夫という声も聞かれますが、カルシウムそのものが生体内で骨になるわけではありません。むしろ強カルシウム食品は体内からリン酸を奪うため、逆にカルシウムが定着しづらくなるといいます。

では、なにが骨を補強してくれるのかというと、青菜に豊富に含まれているカリウムで、これが体内でカルシウムに変換されるのです。これには原子変換、もしくは常温核融合というものものしい名前がついていますが、動物の身体というのはそんなことを易々とやってのける精巧な装置なんですね。だから草食動物である牛がカルシウムをたっぷり含んだミルクを産し、のみならずあんなに立派な角まで所有しているのです。

わたしたちの身体もおなじです。この精巧にして精妙な装置を飼い殺しにしておくのは、あまりにももったいない。せっせと野菜を食べて、骨太にならなくては・・・。もっとも、牛乳も発酵させてヨーグルトにすると、カルシウムが吸収されやすくなるそうです。青菜も味噌のような発酵食品といっしょに摂取することで栄養価が高くなることから、味噌汁が見直されてきています。若い人たちの野菜ばなれというのは、言葉を換えれば味噌汁ばなれのことなんでしょうからね。

今週の野菜とレシピ

今週の青菜は小松菜春菊ニラ。かぶの葉もミネラルの豊富な青菜ですから、スープや味噌汁に入れてくださいね。

小松菜はカリウムもカルシウムも豊富で、野菜の中ではトップクラスですが、ビタミンDと組み合わせることによって、体内で吸収されやすくなります。このビタミンDは魚に含まれていますから、煮干しや鰹節で出汁をとった味噌汁が理想的。やっぱ味噌汁ですよね。

薬味葱は甘みが強いので、青いところは刻んで薬味。白い部分は3センチ前後に切りそろえて湯がき、アスパラガスもどきのサラダにしてはどうでしょう。フレンチドレッシングに醤油を少々加えたソースで和えますが、お好みでマヨネーズをプラスしても・・・。また、カットした葱をベーコンで巻いて爪楊枝で止め、フライパンで焼くとお弁当のおかずにもなります。

牛蒡は皮の部分にミネラルが集中していますので、そっと手洗いして汚れを落とします。アク抜きは、そのミネラル分を捨ててしまうことになるので不要。ピーラーを使ってリボンのようなひらひらをたくさん作り、てんぷらの衣をつけて揚げると香りがよく、甘みも強く感じられます。衣は薄めに作ったほうがカリッとした歯触りに仕上がります。揚げたてにぱらぱらと塩をふってどうぞ。

これを作ると、どうしても芯の部分が平たい形で残ってしまいます。それはどうするかというと、斜めに薄くスライスして小鉢に入れ、醤油をからめておきます。牛蒡の即席漬け。ひらひら揚げができあがるころには、こちらのほうもしんなりして食べごろになっています。

来週あたり、フキノトウが出てくれるといいですね。身体が求めている感じがするのは、ミネラル不足?それとも春を希求しているからでしょうか。早くあたたかくなってほしいですね。