ハクビシン

2012年8月第4週

今週の野菜セット

左から

田舎特有の現象だと思いますが、お盆中の慌ただしさ、賑やかさが去って、町全体がほっとひと息ついているかのような静けさと倦怠感。もっともこの倦怠感には来客疲れに加えて、期間中の蒸し暑さも影響しているんでしょうね。

週末にはこのあたりにも雨が降り、気温もいくらかやわらぎましたが、今週はどうなりますか。そろそろ秋風が立ってもよさそうな時期ですが、昨今の気候は前例を無視するかのように勝手放題しています。しばらくは暑い日々が続くのかもしれません。

ちょっと気温が下がって過ごしやすくなったとたん、蚊やブヨが増えてきます。この夏は雨がなかったので、ミョウガ畑に入っても蚊に悩まされることがなかったので、そのつもりで畑に入ったらとんでもない。またたく間に露出部分がぼこぼこにされてしまいました。

家の中にはハエもいる。これも夏中、姿を見かけることがなかったのですが、ちょっと涼しくなると飛びはじめるのです。蚊もハエもブヨも、暑さがもどってくるとどこかに雲隠れ。キリギリスもバッタもカメムシも、農家にとっては迷惑な存在とはいえ、炎天下で活動しているというのにね。その農家だって、暑い盛りに汗を流しているのです。どうしてあいつらだけ、特権階級みたいに避暑ができるのか。庶民の反感を買うこと必至で、蠅叩きで追われるのも身から出た錆なのかもしれません。

キリギリスやバッタの天敵であるカマキリも、そろそろ姿を見せはじめました。カマキリは秋の虫なので、まだ身体は小さいのですが、小ぶりのおんぶバッタを捕獲。青紫蘇やハーブ類のまわりにはおんぶバッタが群れていて、葉っぱを採ろうとすると幼虫たちが無数に飛び出してくるのです。食糧は十分すぎるぐらいにある。かれらが一人前の戦士となってくれる日も近いでしょう。

カマキリだけが頼りなので、草刈りをするときもかれらを傷つけることがないよう、細心の注意を払います。バッタやキリギリスには気を使いませんけどね。あの連中はぴょんぴょん跳ねて逃げて行くからです。それにひきかえカマキリは六本脚歩行。獲物を捕るとき以外はのんびりしているんですよ。

しかし、そのカマキリも夜間に出没するハクビシンには歯が立ちません。うちでは毎晩のようにトマトがやられています。

ハクビシンはじゃこう猫科。猫ぐらいの大きさですが、顔は猫よりも長く、鼻の上に白いラインがあるのですが、タヌキのような愛らしさもなく、なんとなく中途半端な生きものという印象。うちの畑に出入りしているところは見られませんが、夜間、車を走らせているとよく道路を横断していますから、けっこうな数がいるみたいです。

でも、路上で猫やタヌキの屍体を見かけることはあっても、ハクビシンが車に轢かれた話は聞いたことがありませんから、なかなか用心深くて敏捷なんでしょう。枝豆もきれいにサヤだけ残して食べて行きますから、器用でもあります。おまけに木登りが得意。タヌキも木登りは上手ですが、タヌキに柿を取られても腹が立たないどころか、ほほえましいぐらいなのに、おなじことをハクビシンにやられると腹が立つ。許せない。

そこらへんの心理はわれながらよくわからないのですが、きっとハクビシンがタヌキの領域を荒らしているからなんでしょうね。トマトも完熟させると食べられてしまうので、早めに収穫しなくちゃならない。もっと頭に来るのは、おなじトマトでもプチトマトのほうにはまったく手をつけていないことで、こっちはおいしくないといわんばかり。

毎朝、畑に出て五本指の足跡を見つけるたびに腹を立てていたんじゃ、そのうち体調を崩してしまいかねない。わかっているんですけど、バッタやカメムシは許せても、ハクビシンだけはどうもね。ダメだ、ダメだと思いながら腹立たしさを抑えきれない、情けない状況が続いています。

今週の野菜とレシピ

今週もゴーヤが入りますが、苦みに弱い方はゴーヤを輪切りにして中の種を抜き、その空洞に挽肉を詰めてカツレツ風にしてみてください。豚挽肉にカレー粉と醤油を混ぜ、ドーナッツ状になったところに入れ、上にもすこし広げて小麦粉、溶き卵、パン粉の順に衣をつけて揚げると、子供にも抵抗なく食べられます。ソースはケチャップにおろし玉葱と醤油を少量加えたもの。もちろん市販のとんかつソースでもけっこうです。

ゴーヤを半割にして、中の種とワタを取り、食べやすい大きさに切ったものを酒と醤油、砂糖で煮た佃煮風もおすすめ。煮すぎるとべとべとになるので、強めの中火でさっと煮て、汁気がなくなったら鰹節をまぶします。食欲のないときでもご飯がよく進みますよ。

茄子ピーマンオクラ、それに先週のカボチャが残っていたら、それも食べやすい大きさにして全部素揚げ。それを熱いうちに麺つゆに浸し、お好みで唐辛子を振ってください。すこし冷めたころがおいしく、残ったものは冷蔵保存。ギンギンに冷えたところをあたたかいご飯にのせても美味。ぜひお試しください。

食欲のないときには、モロヘイアとろろ蕎麦もおすすめ。ぞぞっと胃袋におさまってしまうので、別名ぞぞぞ蕎麦。軽く湯がいたモロヘイアを包丁で細かく叩き、麺つゆをかけます。わさびを添えてくださいね。そこに納豆やオクラを加えてもよし。ゴーヤの苦みとぬるぬるパワーで残暑を乗り切ってください。