冬景色

2012年11月第5週

今週の野菜セット

左から

朝夕の空気がピンと張りつめてきました。木枯らしが吹くたびに紅葉も黄葉も蹴散らされ、裸木になってゆきます。日暮れはどんどん早くなるし、気温もどんどん下がってゆく・・・。この心細さは、生物が生存を脅かされるという、太古の記憶から来ているのかもしれません。

おびただしい生命を犠牲にしながら繁栄している人類に、今なおそういう記憶が残っているのが、この不安の強烈さを物語っているようです。おなじ人類でも、繁栄から取り残された者にとっては、記憶なんて生やさしいものではなく、現実的な脅威となるわけですね。

この季節になると路上生活者のことが気にかかるのは、わたしたちのだれもがほんのちょっとしたきっかけで、かれらとおなじような立場になるのがわかっているから。若者たちがかれらに暴力をふるうのも、もしかしたら理由はおなじで、自分自身の未来の姿を抹殺しようとしているのかもしれません。お先真っ暗。そんな状況が殺伐とした冬景色を生み出しています。

衣食足りて礼節を知る、という言葉がありますが、どうやらわたしたちは衣食が足りただけでは満足できなくなっているみたい。では、なにが足りないのかというと、それもわからない。

家や車がステータスだった時代は終わったみたいだし、次から次と生み出される商品は手に入れたとたん、ガラクタになってしまう。ではお金があればいいかというと、お金というのは持てば持つほどもっと欲しくなるという、不思議な魔力があるみたいです。

明日食べるものがあるというだけで、豊かな気持ちになれたものが、富を手にすると、ひと冬分の食糧が確保できなければ安心できなくなってしまう。そんな調子で、人は富めば富むほど不安にかられ、欲深くなってゆくわけです。物やお金に魔力があるのではなく、こちら側の問題だったんですね。

そういう性向のある者に、いくら物やお金を与えても満足してもらえるわけがない。経済など発展すればするほど、貧しくなってしまうのです。山のような物に囲まれて、あれもない、これも足りないといっているのがわたしたち。むしろ引き算が求められているのではないでしょうか。

そういう観点に立つと、紙袋に身のまわりのものをまとめた、ホームレスといわれる人たちがこの国でもっとも豊かな人々ということになる。現にマイホームを持つ人たちに捨てられた犬・猫に餌を与え、面倒を見ているのはブルーシートのテントに住むおじさんたちです。空き缶やペットボトルを集めたお金で、ペットフードを購入していたりするんですね。

そういう人々に若者が襲いかかるところに、この国の病根がある。子供のいじめ問題とおなじ土壌から生えている、奇形の毒キノコみたいなものといったらいいのかな。にやつきながら老人を殺してしまう若者たちがかわいそうでならないし、同級生を自殺に追いやる卑劣な子供たちもかわいそうで、かわいそうで、だれでもいいから思い切り抱きしめてやれよ、と叫びたくなる。

責めてはいけない犯罪者がいる、というか、わたしが見聞きする犯罪者のほとんどが、個人的に責められていいものかどうか。ましてや死罪に値する極悪人など、ほんとうにいるのでしょうか。逆に、犯罪に匹敵するような政策を掲げたり、実行したりする政治家ならいくらでも思い当たります。自分の手で縛り首にしたいような輩もいるのですから、困ったものだと思います。

今度の選挙。投票に値する人物がいないからといって、棄権なんてしていたら、組織票頼みの連中が有利になるばかり。なにがなんでも参加しなくちゃなりませんよね。

今週の野菜とレシピ

今週はほうれん草が2束、青山さんと好子さん、それぞれの畑から出てきます。どちらもちぢみほうれん草ですが、好子さんのほうが種蒔きが早かった分、ちぢみほうれん草というには大きくなりすぎてしまいました。秋が遅かったせいだと思います。

ほうれん草と牡蠣のグラタン

生牡蠣は濃いめの塩水でよく洗い、水気を切っておきます。ほうれん草は3~4センチに切って、バターで炒め塩、胡椒で調味したら耐熱皿に広げ、その上に生牡蠣を並べます。生クリームをまわしかけ、チーズをふってオーブンに入れます。200度で15分から20分。チーズに焦げ色がついたら完成です。


ほうれん草のサラダもおすすめ。スライスしたりんごを散らして、フレンチドレッシングに醤油をプラスしたソースでお召しあがりください。

京菜は根元の白い部分を細かくきざみ、ネギとろ用のマグロといっしょに皿に並べます。エキストラヴァージン・オリーブオイルをかけたら、塩を添えてテーブルへ・・・。塩をふって、混ぜながらいただきます。薄切りにしたパンやクラッカーにのせ、カナッペのようにすると美味。残った京菜の青い部分はスープの青みにご利用ください。