夏のトマト

2012年8月第1週

今週の野菜セット

左から

梅雨明け十日、という言葉があります。梅雨が明けて急に気温が高くなる。そのうえ身体が慣れていないので、よけい暑く感じられるという意味合いですが、この暑さ、身体が慣れるとか慣れないというレベルじゃないかも・・・。だいたいこのあたりでは、梅雨そのものがありませんでした。梅雨明けを告げる雷雨もなく、もう一ヶ月ちかく雨らしい雨がない。畑は乾ききって、灼けた砂浜のようになっています。

そんなわけでモロヘイアやオクラといったアフリカ原産の野菜だけが元気。低温でいじけていたゴーヤも、遅れを取りもどそうとするかのように、どんどんネットに蔓を張り巡らせています。それとは対照的に、茄子やきゅうりは農家が毎日潅水していても、なかなか大きくなれないみたいです。

この暑さで、トマトがメニューから姿を消しました。トマトが暑さでダメになるなんて、ウソみたいな話ですが、下段から次々と実をつけてきて、上段になるにつれ、太陽がまともに照りつけるので火傷しやすくなるのです。表面が火ぶくれしたトマトは果肉も傷みやすく、商品にはなりません。

なぜそんなことになるかというと、食味をよくするために品種改良が進められたから。そういうトマトは雨に当たっても病気になりやすいので、ビニールハウスが必要になるのですが、ハウス内には熱気がこもります。どんなに通風をよくしても、日中は農作業もできない環境になるのです。人が耐えられないような環境には、当然、トマトだって耐えられません。しかも、年々夏は過酷になってきています。

そんなわけで、真夏にトマトを作る農家がすくなくなりました。経費は変わらないのに、収穫時期が一ヶ月にも満たないないからです。暖房費がかかったとしても、トマトは寒い時期に作ったほうが採算がとれる。何ヶ月も収穫できる上、価格は高値で安定。廃棄されるものもないのですからね。

そんなわけで夏野菜の代表選手みたいなトマトの旬が、昨今では夏ではなくなりつつあります。こんなご時世に、性懲りもなく夏トマトを作ってくれている福田さんに感謝。それにしてもおかしな話です。

でも、夏はやっぱりトマトの季節です。益子町に入ると、自動車道路に面して広大なトマト畑が見えてきます。わが家のまわりにも露地トマトの畑がいっぱい。これはさる大手メーカーと提携した加工用トマトで、ケチャップや野菜ジュースの原料になるそうです。顔見知りの農家にどんなもんだか一度食べてみたいといったら、うまくないよ、といいながら大きな袋一杯持たせてくれました。犬の散歩の途中だったので、ちょっと後悔しながら重たい袋を下げて帰ってきましたが、たしかにうまくない、というか味がない。果肉の色が濃く、そのままトマトケチャップとして通用するぐらいなのですが、甘みも酸味もないのです。しかも皮は厚くてかたい。だから露地栽培ができるわけです。

やっぱりおいしいトマトを作ろうと思ったら、露地栽培は無理なのでしょうか。家のまわりの家庭菜園でも、トマトにはビニールの覆いをかけています。一本一本、ビニール傘を立てかけているおしゃれなところもあります。覆いが必要ないのは、加工用トマト同様、皮の厚いプチトマトぐらいだというのが大方の意見でした。

去年まで、わたしもみなさんの忠告通り、自家用の畑にはプチトマトしか作りませんでした。が真夏に皮が厚く、食味も劣るようなトマトしか作れないというのはおかしいというのと、多少のチャレンジ精神もあって、何種類か中玉トマトも作ってみました。それが福田さんのハウストマトが終わるのと入れ替わりに、次々と色づきはじめています。

中玉トマトにもいろいろあって、苗を定植するときにはちゃんと区別していたのが、大きくなった今ではどれがどれだかわからない。いいかげんで、なんの参考にもならないのですが、どれを持ち帰っても家人はおいしいといってくれます。身びいきもあるのでしょうが、昔のトマトの味がするんだそうです。わたしが食べたところでは、やっぱり福田さんのトマトに負けてる気がするのは、トマト特有の青臭さのせいでしょうか。

でも、ひとつはっきりしているのは、フルーツのようなトマトを求めさえしなければ、雨に当たっても、真夏の直射日光にさらされても、ほどほどにおいしいものは作れるということです。やっぱりトマトの旬は夏。盛夏に作れないトマトのほうに問題があったのかもしれません。

今週の野菜とレシピ

そんなわけでトマトが姿を消しました。これからというときにスター級の夏野菜が消えるのですから寂しいかぎりですが、かといって来年からわたしが夏のトマトを作るという決心もなかなかつかない。昔ながらのトマトがはたして受け入れられるか、という問題もありますしね。

でも、今週はべつの人気者・とうもろこしが入ります。とうもろこしは収穫後、日を追うごとに甘みが落ちるので、なるべく早めにお召しあがりください。

ご家族の多いところでは、とうもろこしご飯がおすすめ。とうもろこしの実を包丁でこそげ落とし、豆ご飯の要領で塩少々を加え、ふつうに炊きます。とうもろし1本に対して米一合が目安ですが、多少のご飯が多くなっても大丈夫。老若男女を問わず、人気のあるご飯ですが、唯一の欠点は脚が早いこと。傷みやすいので、残りご飯はお握りにして冷蔵してください。翌日、テフロン加工のフライパンに並べて両面こんがり焼き、醤油を刷毛で塗ると焼きとうもろこしの香ばしさが楽しめます。

オクラはさっと湯通ししてから輪切りにして、鰹節をかけ、酢少々を加えた醤油で和えます。これはその昔、南九州を旅していたとき、どこでも朝食に出されたもので、以来、病みつきになっています。

ネギは麺類の薬味に・・・。もしかしたらミョウガも入るかもしれませんが、そのためにもここらでひと雨ほしいところです。

週末、ひさびさに暗雲が立ちこめて雷鳴が轟き、いよいよ来たか、と思ったのですが、雨は短時間ぱらついただけ。あちこちで夕立があるのですが、県内でもこのあたりだけが取り残されているみたいです。こうなったら台風にでも期待するしかないのかもしれませんね。