フクロウの変死

2012年2月第3週

今週の野菜セット

左から

真冬日が続いていますが、さすがに立春を過ぎると冷えこみかたがちがうようです。雨水受けの表面を覆う氷も薄くなりました。金槌で叩いてもびくともしなかったのが、簡単に割れるようになりましたものね。

物置小屋の中もずいぶん明るくなりました。それはストーブ用の薪の山がちいさくなってきたからですが、日差しも日に日に明るさを増しているようです。春に向けた期待感と、あたたかくなるまで薪がもつだろうかというかすかな不安が交差する・・・。そんな時節になりました。

日もずいぶん長くなったので、夕刻、追われるように帰宅することもなくなりました。そんな時間帯でも山の中に入れるぐらい明るいので、夕飯の支度は後まわし。ついふらふらと散歩に出かけてしまうのですが、先日、林を抜けたばかりの路上でフクロウに遭遇しました。

フクロウの声は冬のはじめ、オスとメスが啼き交わす時期によく耳にするのですが、その姿は滅多と見られません。夜行性ですものね。十年に一度ぐらい、夕闇が迫るころ、音もなく梢から飛び去る姿が見られるぐらいで、そういう場面に遭遇すると、二・三日はしあわせな気分で暮らせるのです。

ところが今回はそうではなく、フクロウは道路脇の枯れ葉の上に落ちていたのです。わたしのほうが犬よりも発見が早かったので、すばやく上着の中に隠したのですが、そうやって抱いていると、セーター越しに体温が伝わってくるようにあたたかいのでした。家に帰るなり、揺さぶったり、心臓マッサージをしたりしてみましたが効果はなかったので、死んで間がなかったようです。

こんな間近でフクロウに接するチャンスはまたとないので、つぶさに全身を調べてみましたが、外傷もなく、羽根はつやがあってきれいなので老齢とも思えない。強いて死因を考えるとしたら、殺鼠剤を食べたネズミでも捕獲してしまったのでしょうか。

うつくしい屍体が硬直して、残された生気を失ってしまう前に埋葬しましたが、その前に鋭利な爪の部分だけ、記念にもらっておきました。ほとんどの鳥は嘴を武器にしていますが、トンビやタカとおなじように、フクロウの最大の武器は爪で、これは商売道具の目を傷つけないため。二本の脚で獲物を捕獲する瞬間でさえ、砂埃などが目に入らないよう、かれらは瞼を閉じるといいます。

真綿のように軽くてやわらかい体とは対照的な鋭い爪。愛嬌のある大きな顔面とも対照的なそれは、ちいさなガラスケースの中に保管してあります。フクロウが大好きで、爪の一本でも・・・という方はご連絡ください。ただし、全部取ってしまうのはかわいそうな気がしたので、先着三名様のみですが・・・。

千載一遇のフクロウとはちがって、ヤマバトの死亡現場にはよく遭遇します。林の中に羽根が散らばっているのです。キツネかタヌキの仕業でしょうが、ごく稀に硬直した死骸が丸ごと落ちていることがあって、そんなものを見つけたらさあ大変。犬は散歩を中断して、それを咥えて回れ右で、帰ってなにをするかというと、ご丁寧に埋葬しはじめます。埋葬といっても、すぐにまた掘り返すのがわかっていますから、こちらはその前に掘り出して処分するのですけどね。

野鳥には寄生虫がいるので、そんなものを囓られたら面倒なことになるからです。おびただしい微生物が土中にいるように、生体にもさまざまな菌や微生物が棲みついています。中でもあたかも支配者のごとく、体内に居座っているのが寄生虫で、この虫たちと生体とのせめぎ合いが凄まじい。一見、平穏に見える動物の体内で、今時のアクション映画よりもスリリングな活劇が繰り広げられているのです。

水面下のドラマは、弱肉強食の殺戮劇や血みどろの縄張り争いよりも、もしかしたら凄惨なのかもしれません。フクロウの死因も殺鼠剤などというより、むしろこうした抗争が原因だったのかもしれません。わたしたち人類の闘争の歴史も長く、今は薬品で一掃されたかに見える寄生虫が、このままおとなしく滅んでゆくとは思えない。きっとどこかで策略を練っているはずで、そのうち薬品では太刀打ちできないような強力な種が出現するのではないか。

薄暗い庭の片隅で野鳥やらタヌキやらを埋葬するたびに、ウイルスや寄生虫といった化学兵器に思いを巡らせるのですが、これも自然淘汰の一環なのかもしれません。自然界から好印象を持たれていないにちがいない人類など、これからどうなってしまうのか、不安になってきますよね。

今週の野菜とレシピ

今週は白菜が入る予定でしたが、あまりに長く凍結していたため、寒さが緩んだとたん、傷みが出て出荷できなくなってしまいました。申しわけありません。急遽、玉葱に変更させていただきました。

青ものは小松菜春菊ニラのみになります。ニラは食べやすい長さにそろえて湯がき、鰹節と醤油で調味。胡麻油を少量たらすとナムル風のおひたしになります。ニラってこんなに甘いものだったのかと思うはずです。

ニンジンの甘みも、寒さでかじかんだ身体をいたわってくれるかのよう・・・。したがってニンジンのきんぴらに砂糖は不要で、醤油を少量からめるだけでOK。料理法がシンプルなのに、複雑な味がするから不思議です。

来週は好子さんの里芋が入る予定ですが、これも地中で凍結し、傷みが出ているんじゃないかと気が気ではありません。早くあたたかくなってほしいものです。